私はユリ

 普段は私服警官がこっそり私たちを見守ってくれるけど、今日は仲間なのよね。


 これは練習じゃないんだ。自信はあるけど、本業を相手にするのは初めてだから、気を抜けない。


 探偵さんを相手に尾行したのが一回目だから、これは二回目ってことになるかしら。とにかく、実戦は初めて。


 今までとは全然違う。なんでだろう、緊張感がない。味方がたくさんいるからなんだろうな、心強い。


 こんなときは料理の作り方を思い出すといいのよね。観光地を思い出すのもいいわ。


 携帯電話に着信が――


「なんやろう、タンちゃんからや」


――気付かれている。離脱しろ。


 ぞっとした、けど、態度には出なかったわ。良かった。


 探偵さんはどこにいるんだろう。エリは大丈夫かな。


 もうすぐ日が暮れる。


 ここからは、私はバスに乗って離れて、休んで、タクシーで合流すればいいんだったよね。


 あの外国人が元締め《マスター》だなんて、見た目じゃ全く分からないわ。


 あの人が誰かを操ってお父さんを殺したのなら、私、どうしよう。会ったこともないし思い出もないんだけど、なんだか悔しい。

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