Exー③

 5機のMMSはパラシュートで着陸すると、それをかなぐり捨て、散開する。


「次元穴、開きました!エゲツナーロボ、出てきます!!」


 リックがレーダーで確認した数秒後、直径20メートル程に広がった異界への門、次元穴からエゲツナー帝国の無人ロボット、通称エゲツナーロボが一秒間に一機ほどのペースで現れる。


「まるでハエみたいネ!」


「ああ。害虫の出るクソ壺には蓋をしてやらねえとな……リック、やれ!」


 クリスが合図をすると、先ほどまでFFのメンバーを運んでいた輸送機『ドナルド・トリンプ』が次元穴めがけて急加速する。輸送機はMMSの他にも大量の爆薬を積んでいたらしく、出現していたエゲツナーロボ達を全て爆発させた。


「無人機がお前達の専売特許だと思っていたら大間違いです!まさかカミカゼしてくるなんて思わなかったでしょう」


 ドナルド・トリンプにはパイロットが搭乗しておらず、AI制御とリックのネオケラトダスからの遠隔制御で操縦していたのだ。


「高い殺虫剤になっちまったぜ!まだまだ出てくるぞ!撃て!奴らに攻撃を許すな!!」


 遠距離射撃に特化した縁の乙型と、あらゆる火器を積んだクリスのレンジャーで穴から出現した敵機をすかさず撃ち、撃ち漏らした機体をタマと英雄が撃ち、リックがサポートに回る。持久戦ではあるが、精鋭部隊の連携でミサイル着弾まで持ち堪えるしかない。


「英雄!一匹そっち行ったぞ!」


「まかせろ!」


 縁の合図で英雄は照準すら合わせず対MMS装甲弾ライフルを命中させる。腐れ縁の二人ならではのコンビネーションだ。


「リック、戦況はどうヨ!?」


「ミサイル到着まで15分です!」


 5機のMMSは休む間も無く攻撃を続ける。


「いいか!絶対にビームは撃たせるな!!」


 クリスの言う“ビーム”とは、エゲツナー帝国の兵器が使用する武装で、エゲツニウム粒子を光線として発射する砲撃だ。地球では未だ実用化されず、漫画や映画の世界だけの兵器だと思われていた技術だ。エゲツニウムのビームはあらゆる物質を高熱で溶かし、蒸発させる。そんなものを撃たせる前に撃破する…それは世界中のMMS乗りにとってエゲツナーロボと戦う際の基本戦法となっている。


「敵機反応、消えました!」


 ネオケラトダスのレーダーから反応が消えた。


「よし!ミサイル着弾まで気を抜くなよ!」


 勝利を確信する隊員たち。


「やったな縁!」


 戦いの流れで接近していた縁機と英雄機。英雄は乙型の右手で縁機の肩を叩こうとした……


「!!?英雄、危ねえーッ!!!」


 突如、縁は叫びながら英雄機に自機を体当たりさせて押し飛ばした。


「!!?」


 刹那、紫色の特大エネルギー体…エゲツニウムのビームが縁の機体を襲った。縁の乙型はコクピットから上を中の縁ごと消し飛ばし、下半身だけになった縁機の残骸が英雄の目前で転がる。


「ゆ……縁ぃいいいいいいいいッッ!!!!」


 英雄の絶叫は乙型のコクピット内に響いた。

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