余章 君の始まりの日へ
エピローグ
─西暦2219年、地球。
科学技術の発展により、 人型機動兵器 『MetalMachineSoldier』…通称MMSが世界各国の主力武装となると、地球の国家間には武力による緊張が走る。そんな中、『その日』は訪れた。
─新宿区市ヶ谷・防衛省
「大臣!大変です!!」
「どうした!?何事だ!!」
日本国防衛大臣・
「こ、皇居上空の空に穴が……」
「なに?」
─千代田区・千鳥ヶ淵
皇居の周辺を走るランナーも、皇居を警備する警察官も、内堀通りを走るドライバーも、皆が皆、変わらぬ平和を謳歌していた。しかし、それは突然現れた。
空間が激震し、空に大きく穴が穿たれる。官民問わず人々は皆、その超常な光景に目を疑う。そして、次元の穴から巨大な鯨を思わせる浮遊戦艦が現れたのだ。
『地球の諸君!我々はエゲツナー共和国。 此処とは 「別の世界」から来た者だ……』
戦艦から発せられた、獣の唸り声の如く低い声が響く。
『我々は、諸君らと……友好を結びに来た!!』
おどろおどろしい声とはミスマッチな内容に、人々は困惑する。
『大総統閣下!』
『何だ?ホア・ホーマ大臣!』
『この下におられる御仁は、現在ではニッポンの実権を握っておられないそうですぞ』
『うそーん!?じゃあ、余は誰にこの申し入れをすればよいのだ!?』
『ここより少し先の、シュショウカンテイというところにソウリダイジンなる役職の者がおるそうです』
『じゃあ、先にそこへ行くぞ!ベーター、進路をシュショウカンテイへ!』
『御意!…ご通行中の皆様、お騒がせしました~』
まるでコントの様なやり取りをした後、首相官邸へ飛んでゆく戦艦を、人々は見送った。
エゲツナー共和国には、エゲツニウムと呼ばれるエネルギー物質が大量に存在しており、それは次元をも超越する力を持ってい た。国家元首であるウンババ=ゴッツェカン大総統はこの力を利用し、平行宇宙の平和の為に行く先々の世界で文明レベルと平和さを併せ持った国と、友好条約を結んでいた。地球では、その対象に選ばれたのが日本である。異世界間を股にかけた条約によれば、友好国である日本の平和を脅かすものがあれば、エゲツナー共和国は全力をもってそれの排除に協力するとある。
_______________________
─静岡県
富士山の麓を2機のMMS『メタルディフェンサー乙型』がパトロールしていた。
「エゲツナー共和国ウンババ大総統の長女、キャシィ氏結婚!お相手は共和国の
ライフルを担いだ方の乙型パイロットが僚機のパイロットに言う。
「任務中に新聞を読むなよ
英雄は縁に言う。
「固ぇ事言うなよ。なぁ、お前は結婚の予定とか無いの?」
「結婚?相手すらいねえよ。お前はどうなんだ?あの遠野って子と付き合ってるんだろ?」
「う〜ん…母さんからは身を固めろとか孫の顔が見たいとか煩く言われてんだけどよ、オレはまだ1人でいたいっつーか……」
縁の言う事を贅沢な悩みだと辟易しながら聞く英雄。その時だった。
「!!?」
「この揺れ……次元転移の振動だ!エゲツナー側から来訪者の予定は無いはずだぞ!?」
英雄と縁は頭上の空を見た。そこには小さくではあるが次元穴が開いていた。
「英雄!大変だ!生身の人が落ちてくるぞ!」
「うおおおおー!」
英雄は乙型を跳躍させ、スラスターを全開にして飛ぶ。そして、空中でコクピットハッチを開いた。
「今、助けるぞ!!」
空から落下するその人物を、英雄は“お姫様抱っこ”で受け止めた。そして、コクピット内に転がり込むとハッチを閉じ、パラシュートを展開させ降下してゆく。
英雄に抱き留められたのは、紫色のロングヘアに金色の瞳をした若く美しい女性。髪と目の色からエゲツナー人である事が解った。
「……大丈夫?」
「は、はい……」
富士山を背に乙型が降下してゆく間、二人は言葉をその二言のみ発し、見つめ合う。そして乙型が着地した後、英雄は助けた女性に再び声をかける。
「俺は来満英雄。この国の自衛官……要は国を守る兵隊だ」
「私はナナ。ナナ=ピーセブン。エゲツナー共和国でエゲツニウムの研究をしてるの。タイムマシンを作る実験の最中にアクシデントでここに飛ばされちゃったみたい」
アクシデントで死にそうになってちゃたまったもんじゃないだろう…そう思いつつも、英雄はナナの話を聞く事にした。
「初めて来たけど、地球って綺麗な所ね。アレが噂のフジヤマ?」
「そうだよ。迎えが来るまで、ゆっくりしていくといい」
「じゃあ、それまで地球を案内してよヒデオさん。私、もっと知りたいわ。地球のことも、あなたの事も!」
「お、おう……任せろ!」
『おーい英雄ー!何イチャコラしてんだ?お前もマジメに仕事しろよな!!』
縁からの無線が入ると、英雄は乙型の歩みを駐屯地の方へと進める。
後に史上初の異世界間結婚を果たす男女を、遠くの空から見守る人影があった。その人影は全高18メートル前後の鋼鉄の黒い巨人。
「あれが、若い頃のパパとママ。そんで、あの深緑のロボットが改造前のアナタよ、幻舞」
コクピット内で少女は自らの機体に語りかける。
『おーいセリカ殿ー!』
刃物だらけの赤い戦闘機が幻舞の隣へ飛んできた。
『もう、よろしいんですの?』
青い飛行船型の機体は白い獣の様なロボットと、それをぶら下げる様に合体した状態で幻舞の隣をホバリングする。
『せっかくタイムトラベル出来るってのに、両親の馴れ初めなんて見に来たのかよ?』
白い獣型ロボのパイロットがセリカと呼ばれた少女に問う。
「シアちゃんは気にならんの?自分のパパとママが、どがぁして出
その時だった。各機体に備えられた超次元通信機が着信した。
『セリカっち〜、シアぽん、ユリリン、えっちゃ〜ん!!今、“ノーザンバラムンディ”って宇宙にいるんだけど、宇宙蛮族メソソポノレンが大量発生して激ヤバなんだよ〜!お願い、手伝いに来てぇ〜〜』
「OK、ヒナちゃん。すぐ行くけぇ待っとりんさい!……ユリーナちゃん、シアちゃん、えつ子ちゃん、行こう!!」
セリカは深呼吸する。すると彼女の髪は紫に、瞳は黄金色に変わった。
「機械仕掛けの鋼鉄を駆り!」
「星々の危機を救う!」
「わたくし達は!」
「メサイアの娘!」
『機鋼救星~~っ』
『「「「「ムスメサイア!!」」」』
新たに穿たれた次元穴に、四機の機体は飛び込んでゆく。穴が閉じると、少女達は次元の彼方へと消えた。危機に瀕した宇宙を救うために。
──機鋼救星ムスメサイア 完
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