第70話魔物の襲撃




それは早い出発であった。正門をあわただしく駆け抜けてゆく一行。

2台のトカゲ馬車と3台の荷馬車で編成され、60騎のトカゲに乗った兵が囲む様にして走っている。

1台の馬車にダークレイ公爵が乗っており、移動速度も少し速い程度である。

昼食の為に、停まっている時に突然、魔物の襲撃が始まった。

そのせいで防御体制が上手くできずに、乱戦に突入する羽目になる。


俺はその知らせをフロルから念話で聞き、気配探知で探しゲートを開きやって来た。

魔物は魔王の配下でなく、ギルドの討伐対象の魔物で異世界で見かける魔物であった。

ブラックウルフ・ブラックベアー・ホーネット・レッドアントの魔物が居る。

何故か統率が取れている。種族が違う魔物では有り得ない行動。


フロルは、馬車に近づく魔物のみ[影拘束]で飲み込んでいる。

ダークレイ公爵を守る任務をしっかりと行なっている。


これ程、乱戦していると俺の広範囲攻撃が使えない。

俺も姿を晒さない様に戦いたい。結界で消滅させて徐々に数を減らしてゆく。

結界で消滅させた数は80体にも成っていて、フロルから聞かされた数は200体以上である。


そんな乱戦もようやく終わり、負傷者の手当が始まっている。

使われていたのは、俺の所で作った薬Ⅳで、無くなった手がニョキニョキと再生している。

見ていて、なんだか気持ち悪く思えるが、負傷者は泣きながら喜び合っている。

そのせいで、死者は無く安堵する。


「ライアン班は周りを警戒、それ以外は食事をしろ」


隊長の号令に気合が入っている。

ライアン班も後で食事を取って、急ぎながら出発の号令が響いた。


俺は上空で結界の中から、その様子を見守り続ける。

どうも、魔物の襲撃は普通でない。

レッドアントとホーネットが他の魔物と一緒に行動することが、絶対に有り得ないのだ。

他の魔物は、レッドアントとホーネットにとって獲物でしかなく、だから可怪しいのだ。

魔物を操れるのか、出来るとしたら旧魔王だけの筈。


仕方ない、ダークレイ公爵をしばらく監視を続けるしかない。



今度は夜営に入って深夜に、遠くから魔物の集団がやって来ている。

急ぎ向かうと、500体以上の魔物が前回同様に、種族が違う混合集団。

中に3体が、冒険者の金クラスでないと討伐できないレッドオークである。

身長が3メートルもあり、体はガッシリと筋肉か付いて手強そうに見えた。


俺はオリハルコンの砲弾を出すと、高速回転させると力一杯に撃ち出した。

レッドオークの頭を粉砕して、次のレッドオークの頭も粉砕する。

そのままカーブして、次のレッドオークに向かうが巨大な岩石を投げてきた。

しかし岩石も粉砕して、腹に大きな穴を開け他の魔物を襲い続ける。


1時間後にようやく終わり、魔石を回収してゆく。

なにやら微妙に気配が感じられ振向いた。するとその微妙な気配が一瞬に消えてしまう。

どうも俺の気配探知に掛かり難く、隠蔽いんぺいみたいなスキル持ちが居るのか、他の方法なのか考えてしまう。



それが4日間で5回の魔物による襲撃が起きた。

ダークレイ公爵の一行に向かう前に、俺が全滅させているが気が気でない。

フロルと交代して、ダークレイ城塞都市へ戻り店の商品を置いて、またフロルと交代する。

そんな中でたまに微妙な気配かしている。

原因は分からず仕舞いであった。


そして王都の正門を、ダークレイ公爵の一行が入って行くのを確認。

俺が監視続ける間、フロルに王城へ行かせ探らせてみた。

半日掛けて調べた結果は、宰相が裏でダークレイ公爵の暗殺を企んだことがようやく分かる。

元々が2人とも仲が悪かった、婚礼の件を王都へ知らせずに進めてたことが、気に入らなく犯行に及んだらしい。


なにやらキナ臭い事件に発展しそうで、今後の監視体制を考えないといけないだろう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る