第59話店を構える




約束の日になったので、帝都の商業ギルドにやってきた。

特別電動自転車でリヤカーを引いて来たが、裏に回ってくれとドアを守る私兵に言われてしまう。

荷馬車専用の裏通りがあって、何でも一方通行なのでぐるりと大回りする破目になった。

やっと着くと荷馬車がずらりと並び、いつ俺の番になるだろう。

そんな風に考えて商業ギルド証を持て遊んでいると、うしろから声を掛けられた。


「ハジメさんではありませんか」


「あ、・・・ボーアさんでしたか」


「するとこの荷物が例の物ですか」


「まったく同じ物ではありません。前回の品は品切れでして、一応それ以上の品を持ってきた積もりです」


「仕方ありませんね、しかし結構大量に持って来ましたね。それにその乗り物と荷台は変わっていますね。荷台トカゲは何処ですか」


「コイツが運んでくれますよ」


「本当ですか、見せて下さい」


リアカーを電動自転車から外し、電動自転車でその辺を走り回った。

それに釣られ野次馬が集まりだした。

ボーアさんが大きな声で、


「お前ら、仕事をしろー、さもないと給料減らすぞー」


蜘蛛の子を散らすように人が減った。

ボーアさんに案内され、特別な倉庫へやって来た。


「如何します。ここで立会いの検品に付き合いますか?」


「いえ、表に行きます」


「でしたら、あそこのドアを入って突き当たりの右側のドアから受付に出れます。この荷台にクズ金属を置きますね」


「誰か盗みませんか」


「誰も盗みませんよ、クズですから。それに盗みを働いたら生きていけませんよ」


なんと恐い事を平気で言ってのける。



受付はミライさんが居る前に座り、商業ギルド証を差し出した。


「どうもハジメです。約束通り荷物を裏に持って行き、ボーアさんが検品してます」


「どうもありがとう御座います。ミライが担当します」


うしろを向き何か合図を送り、再度向き合った。


「クズ金属は、1キロ10000ドルカになり42キロ集まりました。合計420000ドルカです。運搬費やその他の経費でこの様になりました」


「はい、それでお願いします」


「そうですか、納得して頂けるのでしたら胡椒の検品までしばらくお待ち下さい」



しばらくして検品が終わったようで、係りの人が紙をミライさんに手渡した。


「検品が終わりました。1箱に100グラムが10瓶、それが20箱ありましたので1箱400000ドルカ、合計8000000ドルカ」


「はい、それでいいです」


「クズ金属の値段を引きますと7580000ドルカになります。どうでしょうここにお預けになりませんか?」


「そうだな、5000000ドルカを預けて、後は現金でお願いします」


「かしこまりました」


金貨258枚を貰い、裏の倉庫にゆくとリヤカーに積まれた木箱があった。

箱を開くと淡く光るオリハルコンの歪な形状が入っていた。

傍らにはそれの2倍が積み重ねられている。

成る程、オリハルコンは軽い事で有名であった。

42キロでこれ程の量になるのか、電動自転車で出発。

人の居ない所で回収。また戻り積み込んで出発をする破目になる。


帝国の図書館は、返事が長いのでもしかしたらダメかと思っていたが、やはりダメであった。

なのでここに留まる必要は無くなった。




ダークレイ城塞都市の商業ギルドで、マーレさんに店を持ちたいと相談をしたら、良い物件があると言われた。

大通りから外れるが、周りにも同じような店が並び繁盛している。

この店の老夫婦は、去年の風邪で2人とも死んでしまい跡継ぎもいなかった。

その為、商業ギルドが管理することになり、信用できそうな俺に斡旋したらしい。

税金込みで3000000ドルカで、即決で金を払って決めた。


住み込みの従業員も商業ギルドに頼むと、1人の若者を紹介され面接もしてOKをだす。

若者はラルト・ペチカの孤児院で育ち、先月から仕事を探していた身であった。

今日から住み込む為2人して、2階に上がり4部屋ある部屋を選ぶ、残った部屋は広間と倉庫になる予定。


1階は服店で、今は何も無いガランとした店でシーンとしている。

奥にキッチンスペースと裁縫部屋と倉庫の部屋があったが、やはり今では何も無い。


早速ラルトにリヤカーを引かせて、生活用品の買出しを始める。

基本ラルトが住むので、必要とする物をドシドシと買ってゆく。

そして、1人で買出しに行かせたスキに、ラルトと俺の部屋にベットと寝具を出す。

広間にはソファベット置いて、テーブルも置いた。

屋根に上り魔法でコーティングして[強化]で補強をすませる。

その後、ソーラーパネルと八木アンテナを設置して、1階へ下りて来て無線機を設置する。


ドアを開けながらラルトが入るなり、無線機に釘付けになったようで近づき見ている。

一応使い方を説明したが、理解が付いて来ないみたいであった。

再度、紙に絵を書きながら説明するとようやく理解できたようだ。

試しにダークレイ城に連絡をしてみる。


「こちらはハジメ、ダークレイ城、応答を願います」


「こちらはハジメ、ダークレイ城、応答を願います」


「こちらは、ダークレイの無線担当ユーズです。御用件は何でしょう」


「ダークレイに店を構えました。今後、無線担当のラルトに変わります」


マイクを渡すと、


「ラルトです。よろしくお願いします」


「こちらは、ダークレイの無線担当ユーズです。よろしく」


何とか緊張がとれて安堵するラルト。


「これからは、無線機の担当だ。失敗を恐れずどしどし頑張れ」


ラルトは買って来た荷物を運び込んでいる。

俺は天井にLEDの照明を付けて、2階にも付ける為駆け上がった。

作業が終わると店の準備の為、1階に下りて酒を2ケース置いておく。

次に板と電動丸のこを取り出し、寸法を測って切断して棚を作ってゆく。

出来上がった棚に薬Ⅳを見栄えよく並べる。

次にテーブルを作り、その上に生胡椒瓶を10瓶を置き、蜂蜜の瓶とリ○トンティーバッグも一緒に置いていく。


キッチンに行き、ついでに冷蔵庫を設置して、電気コードを繋げる。


まだまだ、日本政府はアメリカと国連を説得出来ないでいるようで、じっくりと拠点を作って構える必要を感じた。


その為の店の出店であり、情報収集の拠点になれるだろう。


徐々に店らしくなって、売れそうな物を今度は日本で仕入れよう・・・



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る