第73話 村の総力を挙げて剣を打ち直す③
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「では、いよいよ剣の打ち直しを始めるデス!」
「頑張るデス!」
「お役に立って見せるデス!」
ドワーフさん達が、身体より大きなハンマーを持ち上げて気合を入れる。
ドワーフというのは力持ちな種族である。
それに加えて、今のドワーフさん達は”刻印魔法”によって身体能力がブーストされている。
当然、”刻印魔法”のデメリットも説明したのだが……
「身体能力が上がるなんて、凄い魔法デス! 腕力が強くなれば、もっと良い剣が打てるようになるのデス!」
「お役に立てるのなら、そんなデメリットは些細なものなのデス!」
「それにワタシ達は領主様のことを信じているのデス!」
というわけで、あっさりと”刻印魔法”を受け入れてくれた。
パワーが10倍以上に上がったドワーフさん達が、どんな剣を打ってくれるのか楽しみだ。
「行きますよ~!」
ナスターシャが炎を吐き、蒼色の炎が炉に入ってくる。
「何度見てもいい炎デス」
「さぁ、いくデスよ。ドワーフ式の剣作りの始まりデス!」
ナスターシャの炎にくべると、剣が白熱する。防護服で身を守るドワーフさん達が、交代で剣を持つ。
同時に、”るつぼ”に入れたミスリルとアダマンタイトの塊も加熱する。
「ドワーフの一族に代々伝わるるつぼデス。どんな熱を加えられても、絶対に溶けないのデス」
「ミスリルやアダマンタイトを加工するには、このるつぼが必要なのデス」
炎によって、剣は溶け始めている。だが、ミスリルとアダマンタイトはまだまだだ。流石伝説級金属、凄い耐熱性能だ
。
「ナスターシャさん、もっとパワーを上げてほしいデス!」
「わかりましたぁ~」
炎の勢いが更に強くなる。ここでようやくミスリルとアダマンタイトが溶け始める。
「熱い、熱いデス!」
「ミノタウロスの防護服があってもこれは、耐えられないデス!」
ドワーフさん達が熱がっている。これでは、作業を続けられない。
「我に任せよ。氷属性魔法、”サモン・アイスフェアリ―”」
見物に来ていた大賢者エンピナ様が、魔法で氷の妖精を呼び出す。
氷の妖精が、ドワーフにだけ当たるように、氷の息を吐く
「凄いデス! 涼しいデス」
「これなら作業を続けられるデス!」
ドワーフさん達は元気を取り戻す。
そうしているうちに、ついにミスリルとアダマンタイトがるつぼの中で完全に溶ける。
溶けた剣とミスリルとアダマンタイトを、剣の型に流し込む。型の中で金属たちが融け合っていく。
「さぁ、ここからが忙しいデス!」
「ミスリルとアダマンタイトが混ざった鉄は、性質が大きく変わるのデス!」
「熱い状態から急に冷まされると、温度差が大きいほど強度が増すのデス!」
「これを繰り返すことで、とてもとても強い剣になるのデス!」
ドワーフさんが、剣を冷ますために水槽につける。
だが――
”ジュワアァ!!”
水槽にたっぷり張っていた水が、一瞬で蒸発してしまう。
「しまったデス! 普段よりも高い温度で加熱していたので、水が一瞬で蒸発してしまったデス!」
「計算違いデス!」
「これでは剣を冷やせないデス!」
「任せてください。今度は僕が手伝います。氷属性魔法”ブリザード”と氷属性魔法”アイスニードル”を融合。”氷柱と吹雪の永久凍土”」
範囲が極狭い代わりに冷却力を高めた融合魔法で、剣を一気に氷点下まで冷やす。
「流石領主様、凄い冷却デス」
「これなら水で冷やすよりも強度がアップするのデス!」
ドワーフさん達が、今度は冷えた剣をハンマーで叩いていく。
「冷えた状態の剣を叩くと、金属の結晶構造が整って強い剣になるのデス」
「しかもワタシは、『ハンマーで叩いた回数が多いほど金属の強度が上がる』というギフトを持っているのデス」
「ワタシは『強い力で叩くほど金属の強度が上がる』ギフトなのデス! そしてワタシの腕力は領主様の”刻印魔法”のおかげで10倍以上に上がっているのデス!」
「ワタシは『強度が高いほど剣の切れ味が上がる』ギフトデス!」
「『剣の切れ味が良いほど持ち主のパラメータを上げる』ギフトもあるのデス!」
様々なギフトを持つドワーフさん達が代わる代わる剣をハンマーで叩いていく。ハンマーが剣と衝突するたび、振死後な光が発生する。あの瞬間にきっとギフトが発動しているのだろう。
剣を一通り叩くと、またナスターシャの炎で白熱するまで熱し、僕が氷点下まで冷やし、またドワーフさん達がハンマーで叩く。
これを繰り返す。
熱し、冷やし、叩く。
熱し、冷やし、叩く。
熱し、冷やし、叩く。
熱し、冷やし、叩く。
――――――――
――――――
――――
――
この作業は、なんと丸一日続いた。そしてようやく剣の素体が完成する。
僕を含め、全員へとへとだった。
「研磨して刃をつけるデス。そして、最後にレインボードラゴンの逆鱗を使って表面にコーティングするデス」
仕上げ専門のドワーフさんが、慎重に作業する。
――こうして、遂に剣が完成した。
「さぁ、早速試してみて欲しいデス!」
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