第29話
第29話
「卿様、本当に大丈夫ですか?かなり顔色が悪いようにお見受けしますが」
「いや、気にしないでくれ。これが普段通りの扱いだ」
私はなんとかして自分一人で立ち上がった。
サーティーはクスッと笑った。
「仲がよろしいんですね」
その笑顔を前に私はいい年をして照れてしまう。
私はふと思い出したくないことを思い出した。
顔に手を当てる。
「どうかなさったのですか?」
「アムリタのことだよ。さっき出ていった彼女」
「アムリタ様のことならご心配なさらず。当院の安全設備は完璧です」
「いや、そういうことじゃなくてだな、、、さっき言ったろ?あいつは何しでかすか分からないから止めてくれって。それにあいつに聞きたいこともあるんだ」
「ああ、そのことでしたか」
彼女は腕を組んで考えだした。数秒経って答えは帰ってきた。
「多分、、、、大丈夫だと思います」
(どこか抜けているな。)
私はアムリタを追いかける気にもなれなかった。
(まあ、そのうち帰ってくるだろう。質問もどうせ答えてくれるかわからないんだ。気長に待とう。)
私は彼女を待つ間にでもサーティーと雑談でもして時間を潰そうと考えた。
「サーティーさん、今時間はあるのか?」
「サーティーさんだなんて、、、私のことはサーティーと呼び捨てにしていただいて結構ですよ」
「ああ、わかった、サーティー。で、質問に答えてほしいんだが?」
「まあ、あたしったら。ほんとすいません。私はシャーキ様にお申し付けを受けて来たところです。俗人達を
(おいおいおい、それは口外したら駄目な感じの院内会話なんじゃないか?シャーキ、ちゃんと怖いな。)
「へ、へえ。じゃあ、アムリタのこともお前に任されてるんじゃないのか?」
「!!?!?やっぱりそうなんですか?」
「え?」
「やっぱり、シャーキ様の命令はアムリタ様のことも監視しろという意味だったんですか?!」
急接近するサーティー。
私は驚いて身を後ろに引いていく。
「それは、その、、あれか、俺達は監視されてるってことか?」
またも驚くサーティー。口に手を当て必死に誤魔化す。
「!!?!?今のは、その、違います!私生まれも育ちもずっとこの村なので中央の言葉は苦手というか、、、」
(滅茶苦茶スラスラ話せてるじゃん。)
「その、これは言葉のやあです!」
サーティーはわざとらしく間違えてみせた。
その時、私は彼女に秘密を白状させてやろうという気概もなかった。
一つ溜息をついた。
「まあいい。さっきの多分、大丈夫という言葉を信じよう」
「大丈夫じゃないです!付いてきて下さい!」
がっと腕を捕まれた。
私はサーティーに連れられて部屋の外へ出ていった。
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