第26話

私達はシャーキと代わった、小さな巫女に奥の部屋へと案内された。

大理石造りの堅牢な建物。

私とアムリタはシャーキの到着を待った。


シャーキは時期にかなり小さな侍女の巫女を一人、引き連れてやってきた。

赤髪の小さな巫女は水瓶みずがめを器用に頭に乗せて部屋に入ってくる。


シャーキが床に座ると、少女はゆっくりと水瓶を頭から下ろす。水瓶から3つのグラスを取り出し、私を含む三人の前に置いた。

水瓶を傾けて、ゆっくりとグラスに水を注ぐ。


水瓶にしてみても、グラスにしてみてもどれも最高級の品だった。


水を注ぎ終わると少女は一礼して、そこに立ち尽くした。


「クルミス、下がりなさい」


少女は表情を一切変えることなく部屋から出て行った。


私は何か言おうと、話題を探す。

「ここの官巫院サンガラマでは、あそこまで小さい子まで引き受けているのか」

「はい。ここ、アールバーティ官巫院は由緒正しき官巫院です。建立は数百年以上も前と伝わっております。クルミスは今年で入って三年目になりますが、私の専属の侍女として真面目に働いてくれています」

(入って三年目!?彼女の見た目はまだ7歳ぐらいにしか見えないぞ。ということは4歳の頃からすでにここに入っていたのか、、、)

「この官巫院の敷地は2つの部分に分かれています。まず下部と呼ばれる巫女達の修道院。そして上部と呼ばれる神官ブラハマンの神殿です」

(やはりここは修道院だったのか。ってことは男の俺がいても大丈夫なのか。)

「卿様。安心して下さい、この修道院は男子禁制ではありませんよ」

「なんてこと考えているのよ、煩悩僧!」

(少し心配しただけじゃないか!!にしてもこの二人は怖い。俺の考えていることを全部見透かされる、、、)


「卿様、あなたもこちらでお長いのでしょう。修道院についてどれほど知っておられるのですか?」

意外な質問に戸惑った。私は早くカラッダについて尋ねたかったが礼儀をわきまえて、質問に答える。

「修道院、と一口に言っても色々あると思うが、俺が想像するのはやっぱりこんな感じの婦女が集まって集団生活を送るっていうイメージだな。俺も僧院にいたから、朝出かけて托鉢したり、衆前で説教をしたりしたことはある。、、、仕事は色々あるだろうな。それに弱者救済の色も強いと思う。親のない子を匿ってあげたり、世俗から追放された人間を受け容れたり、そういうのが修道院の役割だろう?」

「大部分は正しいです。私達は巫女なので托鉢や説法はしませんが、神儀を行います。神儀を行うのには日々の修練が不可欠です。そのために皆で寄り添い合いながら技術を高めていく場所であるというのが修道院の意義なのです」

シャーキの教えてくれた答えを聞いて疑問が浮かんだ。

「托鉢をしないって言ったよな。じゃあ、食べ物とか、、、それにこれだよ、このグラスや水瓶をどうやって集めているんだ?」


シャーキはその凛々しい眉毛を一つ動かさず微笑んだ。


「それについては後ほど説明します。ではここからは貴方達が目指している所の話に移りましょう」

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