僕のことを好きすぎるかわいいあの娘は生き返ったおばあちゃん。
白鷺雨月
第1話 孤独の中生きている
彼は常に孤独を感じていた。
クラスという集団にいても自分は一人だと思っている。
むしろ集団の中にいるほうが、孤独というのを強く感じるのだ。
彼、
まず、顔に浮かぶ、ぶつぶつのような肌荒れ。
いろんな洗顔料を試してみたが、よくはならなかった。
おかげで、人前でなにかするのがとてつもなく苦手になった。
それでも人前でなにかしなければいけないときにかぎって、声がうわずり、何度も言い間違えをしてしまう。
こいうのが続き、明人は人としゃべるのが苦手な少年に育ってしまった。
彼がまともにしゃべれるのは家族ぐらいなものだ。
しかし、家族、とくに母親の顔を見るのが彼は嫌だった。
明人と違い、母親は社交的で美人だったからだ。
母親はあんなに美人なのに自分はでこぼこの頬をした暗い少年だとおもうと生きているのが嫌になるほどだ。
彼はいつものように通学のため、電車に乗っていた。
あまり周囲と関わりたくない明人はイヤホンを耳に深くさし、スマホから流れる音楽を聞いていた。
こうしていると彼はまわりから壁をつくることができ、自分だけの世界に閉じ籠ることができたのだ。
どうせ、学校にいっても話す人なんていないのだ。
僕はだまって音楽を聞いているのが一番なのだ。
学生鞄を膝におき、ぼんやりと車外の風景をみていると明人は前方に人の気配を感じた。
不良だったら嫌だな。
人嫌いの明人は思った。
気づかないふりでやりすごせないかな。
彼は知らんふりを決め込み、視線を車外の景色に集中させる。
「こっちを見なよ、明人」
それは少女の声だった。
予想とは違う、可愛らしい少女の声に明人は驚き、その声の方向を見てしまった。
そこには長身の美少女が立っていた。
髪型はおだんご頭。大きなアーモンド型の瞳が特徴的でまつ毛が長い。
それに驚愕すべきはそのスタイルだ。
長い手足をブレザーの学生服で包み、胸はシャツのボタンが弾け飛ぶのではないかと思われるほど大きく、ボリュームたっぷりだった。
その美少女は何故か、明人の名前を知っていた。
見る限り、制服は彼が通っている高校と同じものだ。
でも学校では目の前の美少女を見たことはない。
これほどの美少女だ、こんな目立つ存在はさすがのひとりぼっちの明人でさえ、どこかで見たことはあろうはずなのに。
彼は目の前の超絶美少女のことをなにひとつ知らない。
その美少女はあろうことか隣に座りだした。
ぷいっと明人の耳にささるイヤホンをはずす。
ぴったりと密着し、じっと明人の目をみる。
彼はとっさに目をそらしてしまった。
母親以外の女性とほぼ接点のない明人にとって女子に顔を見られるほど恥ずかしいものはなかった。とくにこのでこぼこの頬を。
あろうことかその美少女は指で明人の頬をつかむと強制的に自分の方向にむかせた。
ぐっと手を握る。
あまりに密着するため右腕に少女の巨乳があたる。
その柔らかさはとんでもないものだった。
明人の顔に瞬時にして血がのぼる。
「あ、あんた誰?」
消え行くような細い声でなんとか明人は訊いた。
「やっと話してくれたね。私は里美絵津子。あんたのことが大好きな女の子よ」
宣言するようにその美少女はよく通る声で言った。
まるで舞台女優のような声量だった。
周囲にいる明人と同じ学校の生徒たちが一斉に彼らの方をみる。
予想だにしない大量の視線を感じ、明人は気絶寸前だった。
明人を見る周囲の人間たちはなにかひそひそと話していた。
こんなめだつことは明人がもっとも苦手とすることなのに。
「これからよろしくね」
にこやかにそう言い、里美絵津子と名乗った美少女は胸のふくらみを明人の腕におしつけた。
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