95話 みんなでお風呂

 カエデとメイランが泣き止み、これからどうするのかをメイラン聞くと。


「私は、お母さんや一族を助けたい!みんな、力を貸して!」

「もちろんだ、だろ?みんな!」

「当たり前じゃないっすか!」

「うむ、私も力を貸すと誓ったからな」

「ん!私も頑張る」

「一緒に頑張ろうね!メイランちゃん!」

「みんな……ありがとう!」


 メイランの顔に少しだけ笑みが浮かぶ。

 落ち着いた頃を見計らって、ドア近くで待機していたミツキがようやく口を開いた。


「落ち着きましたかね?」

「すまん、待たせたな」

「いえいえ、良いですよ。食べてない組はご飯食べましょう!」


 ミツキの合図で移動し、遅くなった夕飯を頂いた。

 食べている途中に魔法鳥がドアを叩く音が聞こえた、サリーナさんから返事が来たようだ。

 会場から出る際に騎士団と行動していたのを見られていたらしく、何かあったんだと思って声を掛けなかったんだとの事、サリーナさん達は怒っていないようだ。


「助かったね……」

「だな、向こうから手紙来ていなくても、ちょくちょくこっちから手紙送ろうか」

「そうしよっか」


 きちんと連絡を取ろうと決めたコウガとカエデだった。



 夕飯後少しばかりゆっくりして、ミツキ家のお風呂を頂く事になったのだが……


「ご主人様!お風呂一緒に入ろ!」


 カエデがそう言いながら俺に抱きつきにくる。


「いやいや、セシルが居るんだから女性陣だけで入る方が……!」

「嫌、パパも一緒がいい……ダメ?」


 シェミィが足に尻尾を絡めてくる。

 あぁ……にゃんこ尻尾が脚に……


「し、仕方ないなぁ……」


 パパはイチコロでした。


「お、お風呂も一緒に入っているのか!?」

「たまにっすけどね、自分も前に一緒に入ったっす……恥ずかしかったっすうぅ……」


 ソルトは粗相したアレの事を思い出してしまい、顔を赤くする。


「そ、そうか……しかし、私はもうマスターの奴隷なんだ、皆が一緒に入るなら覚悟を決めるか……」


 両頬をペチンと叩き気合を入れるセシルだが、少しばかり顔が赤い。


「大丈夫よ、湯浴み用の肌着を来てお風呂に入るから、直接見えたりしないわよ」

「そ、そうか!それなら……」

「ただし、ボディラインはくっきりよ?」

「……」


 セシルの顔が更に赤くなっていくのを見たメイランが、くすりと笑った。

 早くこの件を解決させて、メイランの笑顔を取り戻したいね。


 こうして俺達はお風呂へGO!

 全員湯浴み用肌着に着替えて浴室へ……


「ご主人様!背中洗うね」

「あぁ、頼む」


 前に2人で入った時のようにカエデが背中を洗ってくれる。

 だが、流石に前のようなパイ洗いはしない、あれは2人だけの秘密だ。


「パパ、洗って」


 シェミィが尻尾をフリフリさせながら手を広げて洗ってアピールする。


「分かった分かった後ろだけな?椅子に座って後ろ向けー」

「んー……ん!」


 多少しぶった気がするが、シェミィは言われた通り椅子に座り背中を向ける、ふわふわではないが、撫で心地がいい尻尾がゆらゆらと揺れている。

 あぁ……尻尾がゆらゆらしてて超可愛い……猫って尻尾の付け根付近をどんどんすると、気持ちいいのかねだる子が多いんだよな、シェミィはどうなんだろう?気になるな……

 と考えつつもシェミィの背中を洗っていく。

 横から見たら電車ごっこ風に並んで洗っている感じだ。


「いやー、こうして見ると親子っすねぇ……」

「う……うむ、そうだな……」


 ソルトはコウガ達3人を見て感想を漏らすが、セシルはそれどころじゃないみたいだ。

 ソルトは2回目なのでもう慣れたようだが、セシルは初めてなので、湯浴み用肌着があったとしても恥ずかしさが拭えない。


「ソルト、前みたいに翼洗って貰えないかしら?」

「了解っす!」


 メイランがバサッと翼を広げると、ソルトが石鹸を泡立てて撫でるように洗っていく。

 メイランの翼は根元が洗いにくく、苦労するのだそうだ。

 故郷では翼を洗う専用具があったらしいのだが、ここには無いので誰かしらに洗って貰っているのだ。


「……」


 セシルはその2人の様子を眺めた後にコウガ達3人を見る、向こうの3人も楽しそうに洗いっこしていた。


「……いつまでも恥ずかしがっていてはダメだな、よし」


 セシルは立ち上がり、ソルトの横に移動する。


「私も手伝おう、いいか?」

「ええ、お願いするわ」

「翼って結構デリケートなんで優しく、丁寧にお願いするっす」

「承知した」


 ソルトとセシルで協力してメイランの翼を洗っていく。

 初めは恥ずかしがっていたセシルだが、こうしてみんなで洗いっこしている内に、恥ずかしさが和らいできたみたいだ。

 最後には、みんなでお湯に浸かりながらも楽しく団欒して、お風呂タイムは終了だ。


 お風呂から上がり、みんなは部屋でのんびりしている中、俺は錬金室に居たミツキに声を掛けた。


「ミツキ」

「ん?どうしました?」

「あのフードの男の件でちょっとな……話良いか?」

「はい、どうぞ中へ」


 錬金室の中に入らせてもらう、錬金室の中は見た事がなかったのだが、かなり綺麗に整頓されていた。

 イメージは物でごちゃごちゃしているイメージだったが……まぁ、流石はミツキ、かな。


「すまんな、仕事中だったのに」

「いえ、大丈夫ですよ。それで……フードの男の件とは?」

「……ミツキ達って暫く家を空けることは出来るか?」

「……というと?」

「正直、俺達や騎士団だけでアレを対処するのは、難しいかもしれない……もし、協力してくれるなら嬉しいと思っているんだが……」

「なるほど……」


 ミツキは難しい顔をして答える。


「手伝いたいのは山々なのですが……期間が分かるのならともかく、いつまで仕事から離れられるか分からない以上、ついていくのは無理かもしれません……

 仕事を後回しにして俺達は良くても、俺と契約してくれてる皆さんに迷惑が掛かってしまいます……

 近場や転移で行ける先なのであれば喜んで行くのですが……すみません」

「……そうか、やっぱりな」


 まぁ、そうだろうな……それでもミツキの顔が悔しい顔をしているのは……きっと、内心は断りたくなくて協力したいのだろう……


「すまんな、無理言って……」

「いえ、こちらこそすみません……手伝いたい気持ちで一杯なのですが……」

「いや、気にしないでくれ」


 それでも、協力したい気持ちは沢山伝わってくる……どうにか出来ないものか……

 暫く考えていると、とある事を思い出した、魔法剣だ。


「なぁミツキ、武器や防具は作れるのか?」

「えっ?あ、はい。作れますよ」

「なら、俺達の武器や防具を作ってくれないか!?」

「武器と防具、ですか!なるほど」


 ミツキはストレージの中身を確認する、錬金に必要な素材を確認しているのだろう。


「コウガさん達にピッタリな武器や防具を作るのなら……そうだな……んーっ……少し集めたい素材はありますが、作れそうです!」

「なら、頼んでいいか?」

「はい!この頼みならいつでも作りますよ!!早速皆さんの身体や手等を計らせて貰っていいですか!?」

「あぁ、良いぞ」


 俺は全員を呼び、どういう武器や防具が良いかメモを取る。

 それを参考に必要な測定場所を特定、そしてヴィーネにも手伝って貰って測定を行っていく。

 ヴィーネが測定している中、俺はミツキに更なる問いかけをした。


「ミツキ、魔法剣って分かるか?」

「はい分かりますよ、それがどうしました?」

「実はな……」


 俺はソルトの魔法が使えないという話の中で思い付いていた、魔法剣のような属性武器と言う物を作れないのか?という思い付きをミツキに話してみた。


「なるほど、属性を持っていて魔力があるのにも関わらず、魔法適正が無くて魔法が使えない人用の属性武器……ですか」

「あぁ、これって何とかならない物なのか?」


 暫く考えながら黙り込んたミツキ、こういう何かを考案する際のミツキの真剣な表情……男の俺からしてもカッコイイと思う。


「そうですね……やろうと思えば、多分ですけど出来る可能性はある……かと。でも……知識がまだ足りないですし、やった事がないので試行錯誤する事になると思います、なので今すぐにはちょっと……」

「そうか……分かった、無理言ってすまん」

「いえいえ、でも興味深いので俺も研究してみますね!出来たら真っ先に渡します!」

「良いのか?」

「はい、発案者はコウガさんですから!」

「ありがとう、それなら頼む」

「任せてください!武器や防具作りは数日で行けると思います」

「了解!」


 あの戦力と戦うんだ、これくらいの準備をしておかないとな。

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