第19話 やっぱりバレた
朝起きるとカエデとシェミィが既に起きていた、シェミィは陽の当たる場所でゴロゴロしていた。
「おはようご主人様!」
「おはよう」
お互い挨拶を済まし、着替えて朝食を取ってから部屋の片付けをしていた。
今日から旅に出る、これからは野宿やダンジョン内で一時仮眠とかで中々眠れない日もあるだろう……
「なぁカエデ」
「ん?どうしたの?」
カエデが首を傾げながら耳をピコンとさせてこちらを見た。耳ピコ可愛い……!
「今日から旅に出るけど、怖かったりしない?」
「んん?別に怖くないかな、この世界では魔物なんて当たり前に居るし、街を結ぶ街道なら弱い魔物しか居ないから、馬車で遠出したり出来るからね。ご主人様は元の世界で旅に出たりは無かったの?」
俺の居てた世界の旅とこっちの世界の旅のスケールが違うからなぁ……旅ってか元の世界だと旅行か、旅行は仕事が忙しくて全然行ってなかったな。
「仕事が忙しくて行った事はないんだよ、それに俺の居た世界には魔物なんていなかったからな。不安もあるが……それでも、折角この世界に来たんだ、元の世界で出来なかった事を色々やってみたい。旅だったり、戦いだったり、もふもふを求めてみたり、もちろんカエデと一緒に、な」
「ご主人様……ずっと、何処までもお供致します」
カエデが敬語になり、片膝をついて忠誠を見せてくれる。
俺はカエデの手を取り抱き寄せた。
「ごっご主人様!?」
「カエデ、ありがとう」
カエデを抱き締めながら頭を撫でる、カエデは俺の肩に頭を乗せて抱き締め返してくれた。
心地良い時間が流れる。
抱き締めながら狼耳を撫でると、気持ちがいいのか俺の腰に回してる腕の力が少しだけ強くなった。
「ご主人様、名残惜しいけど……そろそろ片付け終わらせて行きましょ」
「そうだな、早くしないとグダグダして旅に出れなくなってしまうな」
ゆっくりと身体を話して顔を見合わせる、カエデの顔が赤くなっていた、恐らく俺もだろう。
「……」
隣でシェミィがジト目?な目をして、じっとこちらを見ていた事に気付かなかった俺達は、お互いの赤くなった顔を堪能してから片付けを再開したのだった。
そして部屋の鍵を宿主に返し、5日間のお礼を述べて宿を出た。
「まずは旅の道具を買いに行くか」
「そうね、旅道具専門店がギルドの隣にあるから行きましょ」
俺達は旅道具専門店に向かう。
ギルドの傍を歩くと、俺達2人と1匹は良く周りから注目を浴びる、やはりシェミィの存在が目立つからだろう、周りの声に耳をすませてみると。
「おい、あれストームキャットだぞ」
「前にスカルがボコボコにされたっていうあれか!?」
「あんな魔物をテイムしたってのか……」
「可愛い……」
「あの2人、ギルマスのお気に入りらしいぞ?」
「あの男、人族の姿してるが本当は狼人族らしいぞ」
「は?そんな訳ないだろ」
「いや、アイツに狼人耳が生えたって聞いたぞ!」
「撫でたいなぁ……」
「本当かよ!?見た目普通の人族なのに?」
「本当だって!!」
言いたい放題だな、変な噂が流れない事を祈る……あと可愛いと撫でたいって言った2人、分かってるじゃないか!シェミィの良さが伝わったようだな!俺と同類として認めよう!!
「ご主人様、ニヤニヤしてるの気持ち悪いよ?」
「はっ!?」
俺は我に返った。
「まぁ、そんなご主人様も私はご主人様らしくて良いと思うけどね」
カエデが呆れつつも俺を認めてくれる、なんていい子だ!誰も見てない所でもふもふしてあげよう!
「またニヤニヤしてるわ……」
再度呆れるカエデであった。
なんだかんだで旅道具専門店に到着。
店に入り、テントや照明魔道具、サバイバル用ナイフ?的な物や調理道具の様な旅の必須道具を買い揃えていく。
「最低限揃えるならこんなもんか?カエデ、確認頼む」
「はーい!んーと……多分大丈夫かな」
「ありがとう、じゃ買って挨拶周り行くか」
「了解!」
ギルドは昨日挨拶したけど一応顔出しておこう、もしかしたらジルさんミラさんがいるかもしれないし。
ギルドに顔出すとレイアさんが気付いたようでこちらに駆け寄ってくる。
「コウガさん、ミラさん、今日から旅に出るんですよね?」
「はい、一言挨拶をと思いまして」
「わざわざありがとうございます、ギルマスは今少し席を外していますが……待ちますか?」
「いえ、ギルマスには昨日挨拶してありますから大丈夫です、ジルさんとミラさんは今日来てますか?」
「あぁ、今ギルマスと話をしている所ですね、ギルマスが席を外してるのは、この件があっての事だったので」
「なるほど、スカルさんの件ですか」
「お察しのようで、その通りです、もうそろそろ話し終わると思いますが……」
やっぱり、思った通りだ。
最近の出来事であの2人がギルマスと話す事と言えばアイツの件だろうからな、俺はそう思っていた。
もう少しで終わるなら少しだけ待つとしよう。
ーーーミラさんsideーーー
「ねぇギルマス!ちょっと話があるんだけど、今良いかしら?」
「あぁ?また面倒事か?」
「いえ、コウガくんの件で」
「あいつか、やっぱり面倒事だな!?」
コウガくんトラブル気質に思われてるわね、私もそう思うけど。
「いやいや、ちょっと気になる事があって話しておきたいだけだって、良い?」
「仕方ねぇな、執務室に行くぞ」
私とジルで先に執務室へ向かい、少し遅れてギルマスが入ってきた。
「さて、聞かせてもらおうか?」
「コウガくんってギルマスから見てどう思う?」
まずは何も聞いていない状態で印象を聞いてみる。
「んん?まぁ1番印象深いのが、あの時見た変身だ、かなり異質に感じたな」
あれも確かに私たちの常識から外れてるわね……姿を変えたり、姿を少し消すくらいの魔法なら確かに存在してる。
「あれは確かに異質ね、私って魔法使いの中では割と知識ある方だと自負はしてるけど……見た事ないわ、しかもカエデちゃんのスキルまで使っていた、私からすれば有り得ない」
そう、カエデちゃんのスキルまで使えてるってのが私にとって訳が分からない、魔法に対象のスキルを奪ったり真似したりするスキルなんて無かったはず……一体あれは何なのだろう?
「他人のスキルを使えるなんて、こんなの世間に知られたらまずい事になりそうだよな。多分スキルは変身する事で使えるようになってるんだろうとは予想してるがな」
「そうね、武力主義な国とか研究者は黙ってはないでしょうね……あの変身って誰にでも使えるのかな?」
「さぁな、アイツは今日から旅に出るんだろう?もしかしたらもう出発してるかもしれねぇが、まだ出発してないなら聞いた方が良いかもしれねぇな」
私も興味あるし、ギルマスとの話が終わればコウガくんを探した方がいいかもしれないわね。
「あと、私が気になるのは他にもあって……コウガくんの魔法の使える属性が有り得ないのよ」
「有り得ない?……まさか」
「えぇ、全属性使えるわよ、ただ土が不得意なのかスキルは覚えなかったけど属性自体はありそうね、まぁ氷以外の属性は全て初級魔法止まりなのが幸いかしら?」
「マジかよ……アイツ何者なんだ?まぁ、多少推測は出来てるがな」
「私も。多分だけど、コウガくんは流れ者ね、特殊な能力を持ってこちらに来た……これしか考えられない」
コウガくんは黒髪で目も黒い、こちらにも居ない訳ではないが、少し珍しい分類に入る。
「やっぱりか、まぁ流れ者は昔からちょこちょこ居るからな、流れ者だからと珍しがられて捕まえられるとかはねぇだろうが……」
「この話終わったら会いに行きましょう、泊まってる宿は前に聞いたから分かるわよ」
「そうだな」
ジルは黙って私達の話を聞いて頷いたりしていた、口を挟むつもりはないみたいね。
「後は魔法の発動スピード、あれも尋常じゃないくらい早いわね、まぁあれより早い奴もいるから大丈夫だとは思うけど」
「アイツ……本当に何者だ?」
ギルマスが頭抱えちゃった、気持ちは分かるわ……私も驚いたもの、ギルマスには話してないけど、あの魔力コントロールも1日で習得するものじゃないのに、すぐにマスターしちゃったし。
「考えても答えは出ないわね、取り敢えずは保留にしてコウガくんを探しましょう、もう出発してたらめんどくさいかもしれないわ」
「そうだな、行くか」
と思ってドアを開くとギルド内にコウガくんの姿が見えた。
探す手間が省けた、良い所に居るじゃない、さぁ色々吐いてもらおうじゃないの。
私とギルマスが悪い顔をしながらニヤリと笑う、ジルは呆れてるわね。
「コウガ!丁度良かった、こっちに来てくれ」
「え、あっはい!今行きます」
ーーーーーーー
ギルド内でギルマスやミラさん達を待っていると声を掛けられた、ギルマスからだ。
執務室に通されてソファーに座ると、ギルマスを中心に左右にミラさんとジルさんが座りこちらを見た、凄い真剣な顔だ……何かしてしまったのだろうか……?
「あっあの……何かありました?」
「コウガ、お前……流れ者で特殊なスキルや能力を貰ったりしてねぇか?」
「……えっ?」
やはり昨日のミラさんの反応から予測はしていたが……俺はどうやらこの世界の常識から外れてる人間らしい……もう隠せないだろう。
「……やっぱり分かりますよね」
「まぁ、あんな力を見てしまったら気付くだろうよ」
ですよねー!!
まぁ流れ者の扱いはそれ程悪くは無いらしいから、普通にギルマスには伝えるとするか。
俺は前に伝えた転生以外の部分を割愛し、転生の流れを全て素直に話した、カエデの夢で都合よく伏せた俺に対する内容も全て。
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