もふもふ好きトリマーの異世界旅～奴隷との絆で変身だ！～

第2話 初めての獣人

　異空間から新しい世界へ飛び出した俺、今何処にいると思う？多分想像通りだと思う、嘘だと思いたい……まるでスカイダイビングのようだ……

　といっても風圧はほとんどない、レアさんの計らいか魔法の膜？的な物に包まれているのが微かに見える、そして落下スピードも遅い感じがした。

　恐る恐る下を見てみると、どうやら森の中のちょっとした広場に落ちようとしていた。

魔法で包まれていて、この落下スピードなら死ぬことはないかもしれないが大怪我はするかもしれない。

　下を見てしまったことにより恐怖が襲ってきて叫んだ。

「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

　恐怖で目を閉じながら大きく叫んだ俺の声が遠くまで木霊する、地面までもう少し……

　ガシッッ。

　何かに抱きかかえられるような感覚、地面に着地したのか強めの衝撃を受けるが痛みはない、体に何か柔らかい感触を感じる……

「いっったった……だ、大丈夫ですか！？　意識ありますか！？」

　着地した際に踏ん張ったが衝撃が強くて倒れてしまったらしい、魔法と助けてくれた人のおかげで大怪我は免れたみたいだ。

　その声を聞いてゆっくり目を開けると目の前に女の子の顔が映る。

「よかった……意識は失ってなかったみたいです」

　安心したのか胸に手を置いてはーっ息を吐きだす女の子、よく見ると頭の上にピコピコと動く三角のお山が二つある……

　これは……獣人の耳！？

「あ、あの……ずっと見つめてどうしましたか……？」

「あぁ、すみません！獣人の耳初めて見たんで釘付けになっちゃいました！！」

「えっ？この耳見るの初めてですか？」

　きょとんとした顔でこちらを見つめてくる、しまった……転生したんだから獣人なんて珍しくないはず。だ。奇想天外な事ばかり起きてすぐだった為に素直に答えてしまった。

「いやその、えっと…あっ、すみません！重いですよねすぐ退きます！！！」

　ガバっと飛び起き立ち上がり、少し体を動かしてみる、体は大丈夫そうだ。

「助けていただいてありがとうございます」

「いえ、お気にしないでください。あの、獣人の耳の件も気になりますが、それよりもどうして空から降ってきたんです？魔法ですか？」

「いや、それはその……」

　どうしよう、これどうやって誤魔化そうか……転生しました！って堂々と言っていいんだろうか？この世界の転生者の扱いが分からないから答えられない。

　どうする……？と考えていると彼女の後ろの方から男性の声が聞こえてきた。

「カエデさん、無事ですか？」

「ガルムさん！はい、大丈夫です！落ちてきた方も怪我無く無事です！」

　カエデと呼ばれる女の子が男性の方に振り向き元気に答える、尻尾が見える位置に来てゆらゆらと揺れる、もふもふだぁ……触りたい……

　よく見ると声を掛けてきた男性の後ろに冒険者らしき男性も居た、護衛かな？

「それは良かった、そこのお方、お名前をお聞きしても？」

「俺は氷室高雅です、あなたはさっきの会話で聞こえましたがガルムさん…でいいんですよね？」

「はいそうです、わたくしトライデント王国インカース奴隷商館で奴隷商人をやっております」

「あっ、私は狼人族のカエデです！よろしくお願いします！！」

　ガルムさんは、背の小さい貴族っぽい高級そうな服装していて少し怖い顔に見える。

　そして隣で元気に自己紹介してくれるカエデさんは、狼の耳と尻尾が可愛く、奴隷服が薄い生地をしているからか割とスリム体型なのが見て取れる、胸もそこそこでかい。

　奴隷商人…奴隷と聞くと日本のイメージだといい印象ではないんだよな、小説でも悪い奴が多く感じる、良い奴に書かれる小説もあったけどここではどうだろう？

　よく見るとカエデの首に首輪が付いているのが見えた、この子も奴隷なのか…その割にはガルムさんに恐怖心抱いてる様子もなく元気に受け答えしている。

　洗脳されている可能性も否めないがそういう雰囲気はないように感じる、もしかしたらこの奴隷商人はそれほど悪い人ではないのかもしれないな。

「おや、奴隷商人と聞いて身構えましたかな？」

　ちょっと見ただけで俺が何か考えてることに気が付いたか、商人の目はやはり侮れないな。

「いえ、すみません。奴隷商人と聞くとやはりイメージが」

「そうでしょうね、構いませんよ。この辺はあまり魔物が多くはないですが、長々と立ち話するのは危ないので、わたくしの馬車まで付いて来てください、話はそこでしましょう」

「分かりました、これからどうするか迷っていたので助かります」

「カエデさん、万が一の為にコウガさんをお守りしてあげなさい」

「分かりました！」

　馬車の所まで移動は特に何も起こらなかったので、そのまま馬車に乗せてもらい移動する。中にはカエデさんの他にも奴隷が４名と使用人らしき人が１人乗っており、外には護衛に３名冒険者が居た。

　トライデント王国という街までそれほど遠くなく１時間くらいで着くらしい、行く宛てが無いならそこまで連れて行ってくれるというのでお言葉に甘えるとしよう。

「さてコウガさん、もしやと思いますが、その黒い目にここじゃ見られない服をみるに転生者……流れ者ではありませんか？」

「！？」

「そうですね、私も獣人の耳を見るのは初めてと聞いた瞬間に流れ者ではないか？と思いました」

　やはりバレてしまっていた、口を滑らせたのもあるがガルムさんにはそれが無かったとしても見抜いていただろう、さすが人を扱う商人って所か……

「これだと隠せそうにないですね、そうです、ニホンって所から転生して来たんですが何故か空から落とされまして……改めて本当に助かりました！ありがとうございます！」

「いえいえ、間に合って良かったです」

「流れ者ってこの世界では珍しいんですか？」

　これの返答次第では今後の立ち回りが変わってくる、この世界について今のうちにしっかり聞いておかなければ。

「珍しいのは珍しいですが、ちらほらとお見かけはしますしお客様にも流れ者がいらっしゃいますので、警戒するほどではありませんよ」

「そうですか、安心しました」

　この後も色々この世界について教えてもらっていた。

　この世界にも魔王は存在するらしいが、数か月前に勇者が魔王を倒し平穏が訪れたとのこと、なのでもう数十年～百年くらいは安泰なんだそうだ。

　話してる間に自分のステータス等が見れるかどうか試してみると見ることが出来た、普段は他人には見えないが、見せたいときは見せられるようになる機能もあるらしい。

　現状はこんな感じになっている。

　レベル１　人族 　称号(動物愛好家)

　スキル

　氷魔法初級　アイスショット

　同上　　　アイスウォール

　空間魔術　　ストレージ

　その他スキル

　危険察知

　鑑定

　索敵

　特殊能力

　動物愛好家の加護（動物等に少し懐かれやすくなる）

　STR G

　VIT G

　INT E

　DEX A+

　AGI F

　物理系スキルがない、そして攻撃力のSTRがG、知力であるINTが高い所を見るに俺は完全に魔術師系だな、VITが防御力、DEXって確か器用さだっけ？？なんかDEXがやばいくらい高い、AGIが素早さか。

　空間魔術のストレージは便利そうだな、荷物に困ることは無さそうだ。

ストレージの中身を見てみると有難いことにこの世界のお金が入っていた、金硬貨2枚と銀硬貨55枚が入っている。

　ガルムさんから聞いたところ、流れ者との話によると地球の物価や通貨と似ているそうだ、ただ紙幣はなく全て硬貨だとの事、銅1枚10ノルン、銀1枚1000ノルン、金1枚10万ノルン、白1枚1000万ノルンだとの事。という事は25万5千ノルンだな。

　動物愛好家の加護は俺にとって最高の物だ、これはレアさんに感謝だな。

危険察知に鑑定、索敵も有難い。後は氷魔法か、多分名前が氷室だから氷魔法だろうか？なんか適当だな…まぁ取り合えす時間作って誰も居ない所で試してみるとしよう。

「ところでコウガさん、獣人の耳初めて見たんですよね？狼人族の耳で良ければ触ってみます？」

「えっ、いいんですか！？！？」

　いいのか！？ほんとにいいのか！？触っちゃうよ！？初獣耳触っちゃうよ！？

「す、凄い食いつきですね……チラチラ見てくるようだったので気になりまして……好きなんですか？？」

「大好きです！！！！！！！」

「っ！？」

　こんなに食いついてくるとは思わなかったんだろう、少し顔を赤らめている、照れてるカエデさん可愛い、早く触りたい。

「少しだけなら……いいですよ……？」

「じ、じゃあ少しだけ！」

　さわさわ……

　さわさわ……

「んっ……はふぅ……」

　何だかいけない気分になってきた、今の心境を語るとしよう。

　ケモミミやっふううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう！

　もふもふやっふううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう！

「も、もうおしまい！！恥ずかしい……」

　あまりに恥ずかしかったのか敬語じゃなくなってた、可愛すぎるお持ち帰りしたい、あー尻尾も触りたかったなぁ……

「……///(耳とか誰にも触らせたいとは思わないはずなのに、この人になら良いって思っちゃった……何だか懐かしい気分になる……なんでだろう……？)」

「ほう……カエデさんがこんなご執心になるとは、もしかしたらこのお方……とんでもない人になるかもしれない、わたくしの感がそう告げている、今から唾付けておくべきでしょうな……」

「ん？ガルムさん何か言いましたか？」

「いえ何でもありません、さぁコウガさんそろそろ着きますよ！」

　外を見ると大きな城壁と城がみえてきた、あれがトライデント王国らしい。

　どんな所だろう？獣人いっぱい居るだろうか？美味しい食べ物いっぱいあるだろうか？冒険者にも興味あるんだよな。

　憧れの異世界、初めて会った狼人族、この世界を色々教えてくれた商人、これからもきっといい出会いが待っているだろう！ワクワクが止まらない！