59_閑話-教師佐伯
担任の佐伯(さえき)は日本史の教科担任でもある。
あからさまに男子と女子を区別している。
圧倒的に女子に贔屓しているのだ。
だから、男子には人気がなく、女子には人気があった。
男子とは話すのも嫌みたいで、口も悪い。
先日の家庭訪問で、栞さんと面談中に酒を飲んで、ぐでんぐでんになって帰って行ったことをかなり気にしているらしい。
『学年主任には内密に!鳥屋部(とやべ)さん!』とか言ってめちゃめちゃ媚びてくる。
それだけだと思ったら、その後、栞(しおり)さんとも会っているらしい。
栞さん情報だから間違いない。
それが関係しているのか分からないが、佐伯(さえき)に少しだけ変化があった。
ほんの少しだけね。
■授業中
「あー、じゃあ。勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)の『二十一代集』ソラで言えるヤツいるか?」
「「「・・・」」」
「そりゃあ、居ねえよな。俺も言えん」
「「「(じゃあ、なんで聞いた!?)」」」
クラス中が心の中でツッコんだ。
「じゃあ、YOASOBIの曲名全部言えるやるいるか!?」
急に雑談!?
教室がざわざわしだした。
ちらほらと手が上がる。
『ふっ』と佐伯(さえき)が鼻で笑ってから続けた。
「お前らは、最新曲には興味あるが、勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)には興味がない。まあ、そんなもんだ。」
佐伯(さえき)が教科書をひらひらさせながら言った。
「勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)は、当時の天皇とかが集めた、いわばヒット曲集だ。ファンがいるのは当たり前だ。分かるな?」
「「「(勅撰和歌集の価値だだ下がりだよ・・・)」」」
「勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)は、『二十一代集』あるわけだが、編纂時期により、『八代集』と『十三代集』に分けられる。まあ、YOASOBIの紅白出場前と後みたいなもんだ。特に意味はない」
「「「(言い方!)」」」
「テストに出るのは、俺の経験から言えば『八代集』の方だ。名前くらいは覚えとけ。」
そう言って、佐伯が黒板に『八代集』と読み方を書いていった。
古今和歌集(こきんわかしゅう)
後撰和歌集(ごせんわかしゅう)
拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)
後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
金葉和歌集(きんようわかしゅう)
詞花和歌集(しいかわかしゅう)
千載和歌集(せんざいわかしゅう)
新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)
ざわざわざわ・・・
黒板に文字を書く間の時間って、教室はどうしても騒がしくなる。
写そうと思っても、佐伯(さえき)の背中で黒板は見えないし・・・
「おーし!てめえら!覚え方を教えるから!これ今度のテストに出すぞ!」
急に『カシャカチャ』と筆箱を開ける音が教室に響く。
みんな、『じゃあノートに取ろうか』と思うのだろう。
「ちょっとだけ順番を変えて、だな・・・」
佐伯(さえき)が黒板の一覧の読み仮名の頭文字に赤いチョークで丸をしていく。
「まずは、頭文字だけを覚えろ!『しこしこときんをせんずる新古今和歌集』だ!」
「「「(最悪だ!最悪の覚え方だよ!!!)」」」
「ネットとかでも公開されてない、俺オリジナルだからちゃんとそこもノートに書けよ!」
あと、ついでみたいに言った。
「余力のあるやつは『下命者』と『撰者』も覚えとけ。受験の時役に立つかもしれん」
佐伯(さえき)は、そう言うと前にある教師用の椅子に腰かけ、目をつぶった。
「これからは、ノートタイムだ。俺は精神統一するからな。寝てるんじゃねーぞ!!あと、騒ぐなよ!教頭が巡回してるかもしれんからな!」
そう言うと佐伯(さえき)はおとなしくなった。
多分寝た。
「「「(自由過ぎる・・・)」」」
■後日小テストの日
「お前ら!小テストの結果だ!全員100点。やるじゃねーか!字間違えたやつが何人かいたから、中間では間違えるなよ!今度は減点するぞ!」
「「「(全員100点とか結果に納得いかねぇ!!!)」」」
一度聞いたら絶対忘れない覚え方・・・
意外と良い教師なのかもしれなかった。
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ダメな人だけど、憎めない感じの人っているよね(・∀・)にぱ
嫌いじゃない。
すぐ近くにいなければ・・・
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