3話:「君……誰?」
3「君……誰?」
メニュー画面に表示されている。【☆?〇\\--mGz◇ydz】という謎の文字列。
ふとその文字を見つめる大和。
「よっ、よし……やってみるか……」
覚悟を決めたような、はたまた自分を鼓舞するかのような声を出す大和。
人差し指を突き出し、ゆっくりとメニュー画面の文字列にタッチしようと、指を近づけてゆく。
そして、その指が画面に触れようとしたその刹那。
【パンパカパーン! パンパンパンパン!! パンパカパーーーン!!!】
「うぇあ!?」
その瞬間心臓が口から飛び出そうになり、間抜けな声を上げてしまう。
幸いにも周りに人はいなかったため、その奇妙な声は聞かれなかった。
どうやら、定時になると時刻をお知らせするシステムが発動したらしい。モニターが出現し、その画面内でとあるキャラクターが喋り出した。
「タワー・ファイナルをプレイしてるみんなー。元気にやってるかぁぁい? このゲームのマスコット的存在、ミューキーちゃんがぁ~。夜の9時をお知らせするよぉ~」
という甘ったるい声と共に、このゲームのパッケージにも登場するキャラクター
【ミューキー】が声を上げた。
その姿形は、ちょうど小型犬と大型犬の間くらいの大きさで、耳はピンっと立っていてまるでウサギを思わせるようなそれは、とても可愛らしいものであった。
「ふうー」と先ほどの緊張を取り繕うかのようにため息にも似た一呼吸の息を吐きだし、改めて、人差し指を画面に持っていく。そして、今度はためらうことなく強い意志を持って。
「……ポチッ」
押した。
「…………うん?」
10秒くらい経っただろうか? 奇妙な文字列を選択したが、これと言って変化がない。
「選択はできるけど、なにも起こらないパターンってやつか? なんだよーここまで焦らしておいてそういうオチですか?」
と落胆と安堵の表情を浮かべる大和だったが、次の瞬間。
【ピーー】
今までこのゲームをプレイしてきて聞いたことのない効果音が大和の耳に入ってきた。
「なっ、なんだこの音?」
そう思い、改めてメニュー画面を見てみると。
【クエストを開始しますか? YES / NO】
という選択肢が出ていた。
「クエストだって?」
突然のことに戸惑いを見せた大和であったが、もうここまで来たら引き返すという選択は彼の中ではなかった。
「鬼が出るか蛇が出るか……試してみるか!」
という意気込みと共に、YESを選択する大和。そして次の刹那――。
「うわああああ!!」
突然周りが見えないほどの強烈な光が大和の周りを包み込み、その光に吸い込まれて行ってしまった。
「うっ、うーーーーん」
意識が再び戻った時に気づいた。
「……気を失っていたのか?」
そう、大和は光の中に包まれ意識を失っていたのだ。
「ここは……どこだ?」
体は何ともないかと自分の体を確認しながら、周りの状況を右手で探っていた時。
“ぷにゅ~”
突然、なにか右手にとてつもなく柔らかい何かが滑り込んできた。いや、掴んだと言ったほうが正しい表現だろう。
「この柔らかい感触は一体?」
その感触がある方向に視線を向けたと同時に大和はすべてを理解した。
「あっ、ああ、ああああ!?」
そこにいたのは、この世のものとは思えないほどの美しさとまだ幼さが残る面影を持った絶世の美少女だった。
見た目から十代後半だろうか、幼さの中に少し大人びた雰囲気が垣間見れた。
髪の長さは短めで髪型で言えば【ショートボブ】に近い髪型をしている。その髪は、まるでサファイアが淡い光を放つが如く光輝いていた。
その美しさにも驚いたが何よりも驚いたのが、彼女が服はおろか下着一つ身に着けていないこと。そして、自分が今鷲掴みしている物体Xが、その彼女が持つたわわに実った2つの果実の1つであるということ。
「どどどういうことだ!?どういう状況なんだこれええええええ!!」
そんな絶叫とも悲鳴とも取れる声を発した時。
「うっ、うーん。騒がしいわねぇ~ もう目が覚めたのぉ?」
彼女の瞼が開き、つぶらな瞳がゆっくりと動き出す。そして、二人の視線が重なった瞬間に大和が第一声を放った。
「君……誰?」
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