オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号

1部【旅立ち編】 第1章:勇者ができあがるまで

1話:「プロローグ:その男のいつもの趣味」

 この話を始める前に一つだけ言わなければならないことがある。

 これは、よくあるどこにでもある物語である……。


 と言いたいところだが、一つだけ他と違う点がある。



 それは……。



1【プロローグ:その男のいつもの趣味】



 時刻は、夕闇が空を覆いつくす寸前の夕方とも取れるし夜とも取れるそんな境目の時刻。



 空には、二つの影があった。



 一つの影は、誰が見ても凶悪な印象を与えるであろうモンスター。そのモンスターは、獅子の体にドラゴンの翼を持ち、尻尾は大蛇を思わせるほど太く長い。

ただ断っておくが、それは合成獣キマイラではない。



 そして、もう一つの影はそのモンスターと戦う人間の男。歳は30歳を過ぎた頃合いだろうか。


 短髪にどこにでもいるような平凡な面構え。格好良くもなく、また不細工でもないそんな顔。



 その二者が、壮絶な戦闘を繰り広げていた。



 そして、しばらくの攻防があったのちにモンスターが口を開いた。


「ふっ、人間の分際でこの我に戦いを挑むなど愚かの極み! 身の程を弁えていれば死なずに済んだものを」



 嘲笑交じりに、そのモンスターは男に罵声を浴びせる。



だが、男はそんなモンスターの言葉が耳に入っていないとばかりに、ただただその場にふさわしくない言葉を呟いた。



「……はあ~、この限定イベント今日までなんだよなー。もっと狩りたかったなぁ……」



 そんなどこか戦闘の緊張感もないまま、男はいつもこなしている日課のような気分でモンスターと対峙していた。



「まあ、このイベ人気だからまた来てくれると思うし、これくらいしておき……ますかっ!」



 と言いながら、男が手に気を集中すると、その男の数倍の大きさの玉が現れた。そして……。


ギガントマジック超級魔法! フレアボムブラスター!!」



 男が呪文を発動させると、玉がモンスターに対し一直線に向かっていく。



 そして、その玉は野球選手がストレートを投げたが如く真っすぐ進み、躊躇うことなくモンスターに直撃した。


「ばっ、ばかな!! ぐおおおおおおおおぉおおおおお!!!!」



 モンスターの断末魔の叫びと共に、モンスターが消滅していく。



 その後、すぐに学校にある黒板ほどの大きさのモニターが出現し――。



【リザルト 幻獣ヴァルボロスの討伐 クリア】という文字が表示された。



 その結果をさも当然という態度で見届けた男は、メニュー画面のようなものを開き時間を確認する。



「今何時だ? えっと……PM11時59分30秒か……」



 男はさらに続ける。



「あと30秒でこのイベント終了だな……もっとやりたかったな」



 そうぼやきつつ、メニュー画面の時間が進んでいくのをぼんやりと眺めていた。



 11時59分38秒


 39秒……


 40秒……










 58秒……



 59秒……



 そして、時計の表示が23時59分から0時ジャストに切り替わっていく瞬間を目の当たりにし小さくため息を付く。



 時間が過ぎたのを確認した男は、メニュー画面の右端にある【ログアウト】という画面を押してログアウトした。



 目の前が真っ白い靄のようなものに包まれていった。



 その靄が次第に薄くなり、目の前にはいつもの自分の部屋の光景が広がっていた……




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