ペロロンチーノの転生録【オバロ二次】
taisa
プロローグ
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小高い丘に生えたひと際大きな木の上。
長い黒髪をたなびかせた少年は、遠くに広がる風景を眺めていた。
周りには生命力を感じさせる美しい自然が広がり、空気も澄んでいる。ほのかな緑の香りにつつまれながらも、遠くには帝都の美しい街並み……人の営みが垣間見える。視線を上に向ければ、空はどこまでも高く蒼い。そして白い雲を従えてどこまでも広がっていく。
なによりここには人がめったに訪れない。静かに過ごすにはいい場所だ。だからこそこの場所は、少年にとっての一番のお気に入りスポットだった。
そんな場所に、今は二人ほど邪魔者がいる。
「ここがお前のお気に入りの場所か」
金髪に濃紫の眼。見るからに高貴な雰囲気を纏った少年が、感慨深そうに呟いている。
そしてもう一人は、齢二百年をゆうに超えている老人がフライの魔法でふわふわと浮いている。節くれた指で撫でつける白い髭。深いしわに覆われた顔。柔和な表情を浮かべるその姿は、はたからみれば好々爺然としたものだ。この老人がこの国どころか周辺国家における最大戦力と知ってしまうと、恐怖の権化以外のなにものにも見えない。
「ペロ。爺。俺の……いや、俺たちの手で帝国を変えてみせる」
金髪の少年は、遠くに見える帝都に手を伸ばしながら物騒なことを宣言する。
バハルス帝国の皇太子ジルクニフの姿に、黒髪の少年、ペロロンチーノ・ヘッセンは、小さく「主人公乙」と、つぶやいた。
「ああジル。私のかわいいジルや。私の育てた中でもっとも優秀なお前ならば成し遂げるだろう。いやそれ以上の結果を出すであろう」
ジルクニフの言葉に、フールーダは嬉しそうに頷く。たしかにジルクニフの頭脳はすごい。転生した結果、成熟した精神を持ったペロロンチーノよりも感情を制御し、理知的に考え、素早く最適な結果を導き出すのだから、本当の天才とはこんな存在の事をいうのだろう。その上で経験という血肉を得たらどれほどの存在になるのか……。
「お前はできると言ってくれないのか?」
紫の瞳が、ペロロンチーノに問いかける。
「お前ならできるだろうよ」
ペロロンチーノはそっけなく答える。ジルクニフは、やれやれとわざとらしい仕草をしながらもう一度問いを投げかけてくる。
「俺たちといったのだぞ。おまえがいなくては、面白くないではないか」
「はは、まるで手に入れるだけなら簡単だと言わんばかりだな」
ペロロンチーノは茶化すように言うが、ジルクニフの頭にはすでに帝国を手に入れ、改革する道筋ができていることは分かっている。それを肯定するようにジルクニフは、当たり前だと言わんばかりに笑みを浮かべる。
ペロロンチーノは足場の悪い木の上で、器用に臣下の例をとりながら宣言するのだった。
「じゃあ、こうだな。ジル。おまえなら最優の皇帝になれる。でも俺たちならさらにその先まで行けるだろう」
「当然だ。ペロ、人類圏の立て直しだってできるさ」
ジルクニフはそういうと、ペロロンチーノに満面の笑みを向けるのだった。
――ほんと、どうしてこうなった。
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