第19話 プロポーズ

まるで神様に引き合わせられたような運命的な出会いだったと言うには、最悪な出会い方だったが彼女はそれすらも受け止めてくれたのだろう。


本当に初めてだが、人生初の告白をしようと思った。

身体中を緊張が支配した。


その日。

いつも通り夕方に待ち合わせると、二人で飲みに行った。

彼女と出会ってからは、悪酔いしなくなっている。飲みに行って、カラオケ行ってーーそんな暮らしがとても楽しくて、充実している。


夜が来る。その時の薄暗さはとても不気味で気持ち悪いものだが、夜が来た後の星空はとてもキレイなものだった。


「ーー明日は晴れるな、、」


不意にそう呟いていた。


「ーー今日、花火大会だって知ってた?」


突然、笠原が言う。


「知らなかったけど、花火大会なの?」


疑問符に疑問符で返すというおかしな現象になってしまった。


「そうだよ」


笠原が微笑む。

その笑顔には優しさが満ち溢れているように思える。


「ーーあのさ、、俺、、オレと付き合ってくれないか?」


唐突な告白だった。

ようやくの思いで、絞り出した俺の思いは、声が情けなくも掠れて、ただ恥ずかしいだけだった。


「ーー声、掠れてるよ?」


冗談ぽく笠原が笑う。

うまくはぐらかされた感じなんだろうか?ーー俺はそんな事を思ってしまった。


「山崎くん、そんな風に思ってくれてありがとうねーーでも、私は男の人と付き合ったりする気ないから、、ごめんね」


「じゃ、どうして俺にあんなに親切にしてくれたの?」


「ーー別に親切にした訳じゃないんだ。私もね、、お酒が好きだから、もっと楽しそうに飲んで欲しかっただけーーそれだけだよ」


笠原が言った。

俺は、、振られたんだ。俺の思いは、、迷惑だったんだ、、。

ショックで顔がひきつっているだろう。

その思いに蓋をしようとした。だけどうまくは行かなかった。


そんな事を考えてるうちに、爆音が響いた。

花火だ。

キレイな花火が空に浮かんでいる。

だが、花火のその音は俺の耳も、心もうまく通過していった。


まるで花火なんて行われていなかったかの様にーー。


この日から俺の頭の中は、彼女で一杯になった。俺はどうやら、彼女に本気で惚れてしまったようだ。


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