第28話 [最強賢者vs剣豪①]

「ふっ!!」

「ッ!!」


 小銭が落ちると同時、俺と桜路は一気に距離を詰めて竹刀をぶつけ合う。ギギギと竹刀を押し合うと、桜路の方が押され気味であったを

 パワーはやはり体格差があるので、俺の方が強いらしい。


 桜路は竹刀を少し傾けて俺の竹刀を流し、柄の部分を俺の腹に当てようとしてくる。


「っ……ぶねぇ……」

「体柔らかいんですね」


 体をひねって避け、地面で一回転して再び立ち上がる。


「ふぅ……ッ!!」


 呼吸を整え、桜路に向かって駆け出し、互いの竹刀をぶつけ合う。足を引っ掛け、引っ掛けられ。避けて避けられを繰り返した。

 これは試合じゃなくて戦い。だから、使えるものはなんでも使っていいのだ。


 数分打ち合いをした後、桜路が一旦距離を取ったと思うと、俺に話しかけてくる。


「最上さん、使っていいんですよ?」

「……使うと言っても、俺が何を持っていると?」

「僕と同じものを持っているのでしょう。使わないのならば、僕から使わせてもらいます」


 桃色の髪がふわっと浮くぐらい、一気に姿勢を低くしたその瞬間、桜路の雰囲気が一気に変わった気がした。


(なんだあれ……!?)


 桜路の体や、竹刀から桜の花弁のような靄がふわふわと漂っているのだ。

 魔法ではない……何か。


「〝縮地しゅくち〟」

「なッ!?」


 まるで、今見ていたのが幻想だと思うぐらい一瞬でその場から姿を消す桜路。気配は俺の後ろにあった。

 振り向きざまに竹刀を振るうと、桜路の竹刀とぶつかった。


「っ……おっも……!!」


 先程とはまるで違うパワーだった。今の俺でなんとか耐えれるぐらい、強力なパワーを孕んでいる……!

 俺は自然と口の形が三日月型に変形していた。


「笑ってる場合、ですかッ!!」

「ぐっ……!」


 竹刀を一閃してきて、俺はそれをガードしたのだが、後方に下がるぐらいのパワーだった。


桜仙式さくらせんしき――」

(っ、やばい……)


 『何か来る』と、直感的に思った。

 桜路が何を使っているかもわからないけれど、本能が『やばい』と俺に信号を送っている。


「【石割桜いきわりざくら】!!」


 桜の花弁のような靄を纏った竹刀を振り上げ、俺に向かってそれを振り下ろしてくる。

 俺は竹刀を横にして、両手でそれを受け止めようとしたのだが――


「ぐゔッ!!」


 鉄骨が真上から落下してきたかと思うほどの威力で竹刀を振るわれ、桜の花びらに乗せられながら後方に吹っ飛ばさる。そして俺は、鈍い音を立てて壁に激突する。

 竹刀は真っ二つに折れてしまった。


「ゲホッ……桜路、それは一体なんなんだ……?」


 ビリビリと痺れる腕を動かし、桜路に向かって指を指す。


「え、もしかして〝仙式せんしき〟が使えないんですか?」

「せん、しき?」


 素っ頓狂な声を漏らす桜路に、一時休戦してその仙式について質問してみた。


「仙式とは、人間の体に流れる〝仙気せんき〟という生命エネルギーのようなものを利用して、様々な能力を使ったりするものです」

「へぇー!」

「仙気は人によって〝色〟が違ってきます。人間、十人十色ということですね。ちなみに僕の色は〝桜色〟です。

 仙気を体に纏っている時とか、色が滲み出てくるんですけど、それは仙気が使える人にしか見えないんです。……だからてっきり最上さんも使えるものだと思ってました……」


 前世にはそんなものなかったから使えないんだよなぁ。でも見えるってことは、俺にも使える可能性があるということだろうか?

 まあ使えでも使えなくても、今はまだ使えない。だから、魔法を使わせてもらおう。


「仙式は使えないが、俺は他にも持ってるものがある。だから、このままつずけても問題はない、戦いを再開しよう」


 流石に禁忌魔法とか卑怯な魔法は使わない。せいぜい身体能力強化や、竹刀に付与魔法エンチャントをするまでだ。

 考察するに、その仙気は竹刀とかの武器に付与できそうだし、フェアだろう。


 竹刀立てからもう一本手に取り、それや自分に付与魔法エンチャントをする。


「へぇ……! 確かに、なんだか雰囲気が変わった気がしますね」

「くくく……楽しもうじゃないか」


 ラウンド2ツーの始まりだ。

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