第27話 その世界は輝く為に、全ては恋の為に

立花も随分と凄惨な過去を抱えていたんだな。

思いながら.....俺は高校にやって来る。

すると芽美が、おはよ、とやって来た。

俺は、ウィース、と言いながら挨拶をする。


「何?随分とやる気に満ちてるね」


「.....そうか?俺は何時も通りだぞ」


「そうかな。それは違うと思うぜ」


「戸畑.....お前もそう思ってんのか」


戸畑は笑みを浮かべてやって来る。

それから首を振った。

お前らしくない感じだぜ、と言いながら。


いやいや。俺らしいって何だよ、と思ったのだが。

芽美も戸畑も、うーん、と首を捻る。

それから、お前らしいってのは元気って事だ、と答えた。


「.....何か良い事があったのか」


「別に何もないぞ。どっちかと言えばある少年に会ってそれから話が進んだ感じだな。それだけだ」


「ある少年?何だそりゃ」


「天翔を好いている子だよ」


「.....あー。.....成程な。良いねぇ恋愛は」


言いながら、まあ俺も最近から好きな子は居るけど、と苦笑いを浮かべる。

俺は、オイ。聞き捨てならんぞ。誰が好きなんだ、とニヤニヤした。

すると、ん?俺か?俺は芽美ちゃんが好きだぞ、と答えた。

一瞬にして俺達の周りが凍った気が.....って何!!!!?

俺は衝撃を受けながら、マジで!?、と問う。


「芽美ちゃんは良い子じゃないか。.....俺は好きだと思っているけどな」


「.....そうなのか?.....嘘だろお前」


「.....戸畑君.....」


「俺がジョークを交える時はそれなりに言うぞ。.....だけど今回はジョークじゃないぞ。俺は芽美ちゃんが好きだから」


「.....」


マジかよ、と思いながら芽美を見る。

芽美は赤面していた。

こんな人前で好きとか言われるのが困ったのだろう。

俺は、戸畑。もうちょっと配慮しろよ、と言うが。

配慮ってもんが無いからな、と戸畑は苦笑いを浮かべた。


「俺は芽美ちゃんが好き。.....だけどまあこの恋は叶わないと思うからな」


「まあ.....確かにそうだな」


「.....」


芽美はマジに悩んでいた。

俺はその姿を見ながら、落ち着けよ、と言い聞かす。

それから.....教室に歩き出す。


その時に、うん。でも付き合っちゃう?、と芽美が言う。

え!?、と思いながら俺は芽美を見た。

戸畑もビックリしている。


「.....ねえ。和奈」


「.....何だ.....ってかビックリなんだがお前.....」


「私ね。こう言ったのはね。多分2人に勝てないと思ったからなんだ」


「.....は?.....え?それってどういう意味だ。2人って何だ」


「そうだね。.....天龍ちゃんと天翔ちゃんだよ。.....あの子達に勝てないって思ったから.....ね」


「は?」


それってつまりだが。

極端な話、俺が天龍か天翔のどっちかを好いていると言いたいのか。

そんな馬鹿な事がある訳無いだろ。


俺は首を振りながら、何でだよ、と揶揄った。

だが真剣な顔を止めない芽美。

その顔に少しだけ驚く。


「.....馬鹿な。.....俺の義妹だぞお前」


「そうだと思うけどね。.....だけどね。私は君を一回振ったよ。それに.....君は私に向いていない気がする。それにあの2人に向ける目は.....桁が違う」


「馬鹿な.....」


馬鹿馬鹿言っても君はあの2人のどっちかが好きなんだよ、と言ってくる芽美。

俺はその言葉に.....顎に手を添える。

足が止まってしまった。

戸畑は、オイ。本当に良いのか。芽美ちゃん、と言ってくる。

その言葉に、うん、と答えた芽美。


「.....私は.....多分、和奈の横にはふさわしく無い」


「水沢。.....良いか」


「.....いや。良いってか.....」


そりゃ俺の幼馴染だからな。

何とも言えないんだけど.....でも。

俺は.....まあ今は振られているからな。

だから.....そうだな。

芽美はフリーだしな.....。


「芽美。.....本当に良いのか」


「戸畑君が好きって言ったんだから。私はその想いに応えたい。戸畑君の事、ちょうど気にもなっていたしね。これで良いんじゃ無いかな」


「.....」


「だから大丈夫。.....私、戸畑君に付き合う」


止める事が出来ない。

と言うか.....止めれない気がする。

何故かって言えばそうだ。

俺は芽美の幸せを一番に願っているからな。

思いながら、分かった。そこまで固いんなら、と言うしか無かった。


「.....戸畑。任せる。芽美の事」


「.....お前に託されたんじゃ仕方が無い。好きな人を護るさ」


「頼むわ」


芽美は笑みを浮かべた。

その顔を見ながら.....俺は。

そのまま歩き出す。

そして教室にやって来てから.....窓から外を見る。

大きく動き出したな、と思いながら。



「芽美さん.....付き合い始めたの?戸畑さんと?」


「.....ああ。.....そういう事だな」


「.....そうなんだ.....」


家に帰って来てから話した。

切り捨てた訳じゃ無いけど、と強く言われた。

だけど.....私はその場に居る事は出来ない、と話した芽美。

俺はその言葉に.....強く何かを感じた。

意志を、だ。


「.....じゃあお兄ちゃん。私と天龍のどっちかが好きって事?」


「.....そういう事に.....なるのか?良く分からないんだ」


「兄貴はきっと好きなんだ。私達のどっちか」


「.....そうなんだろうか.....」


俺は真剣に考える。

でも正直この気持ちは恋じゃ無いと思うのだが。

思いながら.....俺は真っ直ぐに見据える。


2人を、だ。

それから、天龍。天翔、と声を掛ける。

すると2人は、ん?、と向いてきた。


「俺な。考えたんだよ。授業時間をサボって1時間潰して」


「.....うん」


「僅かながらには思う。その事を。.....二階に上がってくれないか。2人共。それぞれの部屋で待っていてくれ」


「.....うん。待つよ。兄貴」


「だね。天龍」


そして俺は待ってもらう事にした。

2人に.....それぞれの自室で、だ。

それから目を閉じて考える。

もう一度.....これで間違いないか、を。


そして目を開けた。

今は友人とかしか思えないけど。

でも大切な人としてきっとこの人なんだろうな、と思う。

それは、と思いながら二階に上がりドアを開けた。


ガチャッ


「よお」


「.....よ、よおって.....兄貴。そんな.....」


俺が行ったのは。

そう。

天龍の部屋だった。


衝撃を受けている天龍。

そして目に涙を浮かべた。

嘘だよね?兄貴、と言ってくる。


「.....散々考えてみた。.....だけど.....だけどな。.....俺は最初に俺に好きって言ってくれたお前が側に居ないと.....駄目なんだ。天龍」


「.....そんな.....」


「天龍。俺は.....多分君が好きだ」


「.....和奈.....さん.....」


涙が溢れて止まらなくなる天龍。

それからドアが開いて.....天翔が入って来た。

天翔は.....その顔を残念の様な顔じゃなく。

笑みを浮かべていた。


「負けちゃったね。天龍」


「.....天翔.....良いのこれ」


「.....これは最初に好きになった人の勝ちだと思う。.....天龍。貴方が最初に好きになったんだよねお兄ちゃんを。最初に話したのも天龍だったよね」


「アタシ.....」


「.....天龍。幸せにしてあげて。お兄ちゃんを」


その天翔の言葉に号泣し始めた天龍。

俺はその姿を見ながら頭を撫でた。

振った瞬間と恋に落ちた瞬間が。

同時に襲って来てしまい。

俺は何も言えなかった。


「兄貴。.....アタシで.....とても嬉しい。でも.....兄貴を幸せにするのはアタシで本当に良いの?.....アタシで.....」


「天龍。選ばれたのは貴方なんだから。.....しっかり幸せにして。お願い」


「.....分かった。天翔」


泣きながら抱き合う2人。

俺はその姿を見ながら.....天を仰ぐ。

そうか.....俺は天龍が好きだったんだな、と。

初めて出会った時も天龍だったから。

そしてキスをしたのも天龍が初めてだった。


「.....あの時から惚れていたんだな.....」


俺は思いながら盛大に息を吐く。

それから.....また考える。

天龍を.....幸せにしないと、男として、だ。

思いながら.....俺は2人を見ていた。

涙が止まるまで、だ。


「ねえ。お兄ちゃん。私は選ばれなかったけど.....応援しても良い?貴方を」


「.....当たり前だ。お前も大切な家族だ。それは今もこれからもずっと、だ。だから.....応援してくれ。俺達を」


「.....兄貴.....」


「『兄貴』って言うのはおかしいんじゃない?天龍。.....和奈さんって言った方が良いよ」


「で、でも恥ずかしいよ天翔.....」


「もー。ダメダメ。呼ばないと。恋人同士なんだから」


そして天翔は天龍を見つめる。

俺はその姿を見ていると。

天龍がモニュモニュしながら俺に向いた。

それから、か。和奈さん、と呟く。

俺は少しだけ赤面した。


「.....は、はい」


「和奈さん.....で良いの?天翔」


「.....当たり前。.....だって恋人同士なんだから!」


「恥ずかしい.....」


「ダメダメ!」


これは先が思いやられそうだ。

思いながら.....俺は苦笑する。

それからクスクスと笑った。


2人も、だ。

その中でも有難う芽美。

きっかけをくれて.....、と思った。

それで.....世界が広がったから、と。

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