第18話 絶対に負けられない

て。天龍ちゃんとキスをしてしまった。

何という事でしょうか。

俺は真っ赤に赤面しながら.....横を上機嫌で歩く天龍ちゃんを見る。

天龍ちゃんは満面の笑顔を浮かべていた。

そんな天龍ちゃんに青ざめながら言い聞かせる。


「本当にマズイ。.....このままでは。絶対に秘密だぞ」


「分かってるよ♪兄貴♪」


「本当に分かっているのやら?」


俺は額に手を添えながらまた青ざめる。

相手は義妹なのにキスをしてしまうという失態。

咎められてもおかしく無い。

困った.....本当に参る。

思いつつ俺は自宅に帰って来る。


「遅い.....」


「うわ!?天翔ちゃん!」


「何をしていたの。2人共。土だらけ.....泥だらけじゃない」


「ん?良いこと♪」


「.....」


だから隠せとあれ程。

俺はもう一度額に手を添えてから盛大に溜息を吐く。

するとその様子をジト目で見ていた天翔ちゃんは天龍ちゃんだけ入れてから玄関を閉めようとした。

俺は、オイオイ!?、と慌てる。

すると頬を思いっきり膨らませたリスの様な天翔ちゃんが現れる。


「ふーんだ。お兄ちゃんのバカ」


「.....勘弁してくれ.....というか俺は何も悪くない.....」


そんな感じのやり取りをしながら。

天龍ちゃんと天翔ちゃんは後から風呂に入るという事なので俺は先に風呂に入った。

だがその時にとんでもない光景を目にする事になる。

何を、と言えば.....スク水に着替えた天翔ちゃんが入って来たから。

お風呂に、だ。

嘘だろ。



「て、天翔ちゃん?.....君は何をしているのかな」


「私だってお兄ちゃんが好きなのに。.....おかしい。これは絶対におかしい」


「.....!」


俺は股間をタオルで隠しながら天翔ちゃんを見る。

天翔ちゃんはタオルで体を洗い始めた。

ちょっと待ってくれマジにどうなっているんだ。

勘弁してほしいのだが。

思いながら俺は天翔ちゃんに背を向ける。


「.....お兄ちゃん」


「な、何でしょう」


「.....私と天龍はどっちが魅力的」


「え.....いや。決めれないんだが。と言うか.....そんな感じで見てないぞ」


「.....ふーん。.....お兄ちゃんのバカ」


じゃあどうすれば良かったのか。

俺は思いながら汗を流す。

すると天翔ちゃんはタオルを差し出してくる。

それから.....背中を指差す。

スク水を脱ぎなが.....ら。


「.....!!!!?.....ちょ!?」


「早く洗って。お兄ちゃん」


「勘弁してくれよ天翔ちゃん。マズイってこれ」


「ふーん。天龍にはえっちな事をして私にはしないんだ。ふーん」


「だからえっちって.....違うって.....ああもう」


天翔ちゃんの柔らかな背中を洗いながら。

俺は冷や汗を流してしまう。

早く上がらないと、と思いながら、だ。

それから擦ってから俺はしゃがんだまま天翔ちゃんにタオルを渡す。

すると.....振り返った天翔ちゃんが.....俺の顔に右手を添えた。


「.....お兄ちゃん」


「.....え」


それからそのまま天翔ちゃんの唇で俺の唇が塞がれた。

俺は真っ赤に赤面しながら、!!!?!、と反応してしまう。

そして天翔ちゃんは数秒してから唇を離す。

俺を赤くなりながら見てきた。


「私だってお兄ちゃんが.....和奈さんが好きだから。負けたく無いから」


「.....いや.....だから天龍ちゃんみた.....あ」


「やっぱり天龍もお兄ちゃんとキスをしたんだね。だったら私だってキスをしても良いよね」


「.....あのな.....」


「私は駄目なの?おかしくないそれって」


駄目とか駄目じゃないとか。

そんな事を言っているんじゃないんだが。

ただ今はするべきじゃないと言い聞かせていたのに。

なのに2人ともキスをして来やがった。

俺はどうしたら良いのだ。


「じゃあ次はお兄ちゃんの番。.....私が擦ってあげる」


「あ、ああ」


「何。私から擦ってもらうの嫌なの?」


「い、いや。そんな事はないです」


「.....じゃあ大人しく従って」


「はい」


何で俺はこんな目に遭っているのだろうか。

思いながら.....背中を擦ってもらう。

すると天翔ちゃんは、大きな背中、と言いながら大変そうに擦る。

俺は、無理はしなくて良いから、と言うと。

天翔ちゃんが固まっていた。


「ああ。.....背中に大きな傷跡があるよね」


「これ何の傷跡なの」


「.....自殺未遂で.....飛び降りた時の傷かな。馬鹿だよね。本当に」


「お兄ちゃん.....」


キュッとタオルを握り締める音がする。

俺はその姿を鏡越しに見ていると。

天翔ちゃんがそのまま抱き締めてきた。

俺を後ろから、だ。

ビックリしているとゆっくり俺の頭を撫でてくる天翔ちゃん。


「お兄ちゃん。私が居るからね」


「有難う。天翔ちゃん」


「.....だからもう死なないでね」


「ああ。もう大丈夫。俺はお前らを支えると誓ったんだ。今度は」


「お兄ちゃん.....」


「お前らを支えて家族になるって誓ったんだ。だからクヨクヨはしてられないよ」


この言葉に。

天翔ちゃんは笑顔を浮かべる。

クスクスと笑いながらだったが。

俺は頬を膨らませる。

すると天翔ちゃんは、御免なさい、と謝ってきた。


「ただ嬉しくて。.....そういう意味で笑った」


「そうなんだ。.....ちと馬鹿にされたかと思った」


「そんな訳無い。お兄ちゃんが好きなのに。誇らしく思っているのに」


言いながら俺にタオルを渡してくる天翔ちゃん。

それからまた俺を抱き締めてきた。

俺はその事に、コラコラ、とようやっと怒る。

さっきはされるがままだったが、だ。

思春期の女の子なのだから。


「.....お兄ちゃん」


「.....何かな」


「大好き」


「.....そうか」


全く天翔ちゃんといい。

天龍ちゃんといい。

やりたい放題だな、と思ってしまう。


だけど.....そんなに俺が好きなんだな、と。

そうも思ってしまう。

あくまで関係は義妹だと言い聞かせているのにな。

俺自身に、だ。


因みにこの後。

状態を知った天龍ちゃんが乱入して来た。

それからまあ.....色々あり。

この天翔ちゃんとのキス事件は幕を下ろした。

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