第8話 天龍の愛の告白

天龍ちゃんと天翔ちゃんの事は.....あくまで義妹だ。

それ以上でもそれ以下でも無い。

俺は.....思いながら日々を過ごしていたのだが。


芽美に指摘された。

何をと言えば、天龍ちゃんが俺を好いている、という事を、である。

そんな馬鹿な事が.....?

と考えながらの4時限目の終わり。

つまり昼休みの事だが.....俺と戸畑が駄弁っていると。


「ねえ。和奈」


「.....何だ?」


「.....お弁当.....作って来たから。彼氏のあまり分で。適当に作った」


「.....はい?」


俺に突然、その様に芽美が言ってきた。

ちょっと待ってくれ。

そんないきなり弁当ってどういう事だよ!?、と思ってしまったが受け取るのを否定する訳にもいかず。

俺は素直に受け取る。

それから、彼氏に持って行くから、とそそくさと去って行った芽美。


「.....良かったじゃん?」


「.....いや。訳が分からん」


「.....そうだな。.....でもこれって良かったじゃん?」


「.....何でお前はジャン付けしてんだ」


「.....嫉妬かな?アハハ」


言いながら戸畑は俺の頬をグリグリと指で押してくる。

俺は、止めい、と言いながら静止しつつ。

そのままお弁当を見る。

それから、まあいっか、と開くと。

そこには数多くの食材が.....手を抜いているとは思えないぐらいに並んでいた。


「.....彼氏の弁当と間違えてないか?これ」


「.....うーむ?.....そう言われればそうかもな。手抜きとは思えない」


「.....大丈夫かな。芽美のヤツ」


「.....まあ.....大丈夫じゃないか。.....間違いとは限らんし」


「は?何か言ったか?」


「別に何も」


何だよコイツ。

と思いながら戸畑を見ていると。

学校内放送があった。

それから.....何故か俺が呼び出されたのだが。

え?、と思いながら俺は慌てて戸畑と弁当を置いて職員室に行った。



「すまない。.....実は君のご家族さんから連絡があってね。.....何でも熱を出したそうだ。.....天龍.....さんだったかな。.....それで翔さんという方から、どうしても忙しくて代わりに病院に行ってくれないか、と連絡が来てね。君の母親も夜勤なんだろう?」


「.....え.....マジすか。じゃあ行きます」


「.....そう言ってくれると思ったよ。.....君は優しいからね」


職員室にて。

中年であり小太りな中島楯彦(なかしまたてひこ)先生を見る俺。

ショックで、だ。


何時も柔和で丸眼鏡を掛けている先生だが。

かなり慕われている担任である。

その先生が言ってきた。


「.....今直ぐにもお見舞いとかに行きたいですが.....」


「.....うんうん。君ならそう言ってくれると思ってね。.....午後の分は全部私に任せてくれ。.....欠席扱いにしないから。今回は特別にね」


「.....先生。マジ感謝っす」


「.....良いんだ。.....君の事情は.....知っているからね。大変な事も全部ね」


「.....」


俺は少しだけ眉を顰めながらも。

頭を下げてから、行って来ます、と言った。

猛ダッシュで職員室を後にしながら。

そのまま後の事は戸畑に任せてから早退した。

それから.....病院に向かう。



「天龍ちゃん!」


俺はドタバタと息を切らしながら病院に向かうと。

病室、そこには高熱で苦しんでいる様な天龍ちゃんと医者と看護師が居た。

小学校で気を失って病院に運ばれたと聞いたが。

俺は直ぐに天龍ちゃんに駆け寄る。

それから眉をまた顰める。


「.....先生。大丈夫なんですかね?」


「.....これはインフルエンザですね。.....予防接種は受けられているとの事ですので1日あれば回復すると思いますよ」


「.....マジか.....良かった.....」


俺はホッとしながら荷物を叩きつける様に床に置いて。

そして天龍ちゃんを見つめる。

看護師さんが椅子をくれた。

それに腰掛けながら.....天龍ちゃんを再び見る。


「保護者の方ですね?」


「.....あ、はい.....兄です」


「.....分かりました。ちょっと書いてほしい書類があるので.....」


看護師さんにそう言われてナースステーションに向かう。

それから俺は書類を見てサインしてから。

そのまま病室に戻って来た。

すると.....天龍ちゃんが俺を見ている事に気が付く。

天龍ちゃん。大丈夫?と聞いた。


「.....兄貴.....」


「.....苦しかったら言ってな。.....今日は1日付き合えるから」


「.....ゴメン.....なさい。.....学校あるのに.....」


「.....そんなもん。お前に比べたらどうでも良い」


「.....兄貴.....有難う」


学校なんざ行かなくても死なないしな。

俺は思いながら天龍ちゃんをただひたすらに見つめる。

心配だ、と思いながら、だ。

すると天龍ちゃんが、ねえ。兄貴、と向いてきた。

それから俺を見てくる。


「アタシ.....兄貴の事が好き」


「.....そうだな。.....兄妹として俺も.....」


と言ったのだが。

首を振る天龍ちゃん。

それから俺をジッと見てくる。

一気に赤面になった。

熱なのか何なのか何なのか分からないが、だ。

そして告白してくる。


「アタシは.....貴方を.....お兄を.....1人の男の子として好きです」


「.....え.....」


「.....家族じゃなくて.....好き。.....1人の男として。.....兄貴が好き」


「.....ちょっと.....待ってくれ。え?」


「.....付き合って、とは言わないよ。.....答えは待ってる。.....でも兄貴が好き。これは事実なの」


俺はボゥッと火が点く感覚に襲われた。

それから、マジに?、と聞き返すが。

頷く天龍ちゃん。

アタシは.....優しい兄が好き、と言いながら。


「.....でも兄貴は色々と傷付いているから。.....今は答えを求めるつもりはないよ。だから.....いつか答えを聞かせてほしい」


「.....配慮してくれて有難うな。.....うん」


「.....兄貴。.....有難う。兄貴が兄貴で良かった」


「.....俺も感謝してる。.....お前達が妹で.....本当に.....本当に良かった」


「愛してる。.....とは言えアハハ。こんな直って恥ずかしいけど」


俺は言葉に苦笑しながら。

そして天龍ちゃんも横になったまま、アハハ、と笑う。

それから.....俺達は暫く会話した。

投薬とかもあったが.....その最中でも元気になる様に、だ。

そして.....。

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