#23 鬼島無事死亡。七家六歌の保険
萌々香が飲み干して……サイコロは……5ッ!? ハァッ!?
おかしいだろ。サイコロがこんなに何回も同じ目が出るなんて……確率で言ったらて天文学的数値になるんじゃねえのッ!?
ん……え?
えぇぇぇぇぇぇぇッ!?
「!?!?!?!?」
「あれれ。萌々香さんのサイコロが突然転がった〜〜〜? 2ねッ!! 風でも吹いたのかしら〜〜〜これで同点」
「……鬼島くん。これ……どういうこと?」
「あれ、え? 嘘だろ、おかしい、これはおかしいッ!!!」
いったい……何が起こってるんだ……。
「さぁて。あたしの番ね」
突っ伏していたけど良かった。起き上がれたのか。
ん……ヴェロニカのやつ……目は据わっているけどシラフに戻ったようだな。
どうなってるんだ?
「あ、そうそう鬼島さん。あたしたちが勝負を挑むときってどんなときか知ってます?」
「……いきなり何を?」
「ヴェロ姉さん……ちょっと早いですよ」
「まあまあ。シナモン……でも——そうね。さて、振るよぉ~~~」
……5。
そんで、鬼島が必死にテーブルの下をさすってやがる。
なるほどな。やっぱりイカサマじゃねえかよ。
「残念。さっき酔ったフリしたときに、テーブルの下にケーブルを見つけてっと。酔ったフリして……抜いちゃいました〜〜〜これって、電磁石のコンセントだよね〜〜〜」
「ッ!?」
「はい、あたしたちの勝ち〜〜〜〜みんな〜〜〜おつかれ三太郎っ!!」
え、ええええええええ。
今まで周りにいたホスト……鬼島と萌々香に酒を注いでいたホストまで全員
まさか……。
「おまえらぁぁぁぁぁぁぁどういうことだゴラぁぁぁ」
「な、なんなのコレッ!? お、鬼島くんッ!! どういうことなのッ!!」
「種明かしは……あなたち二人……以外全員グルでした」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? い、いや俺、俺聞いてないからなっ!?」
「な、なんなのそれぇぇぇぇぇぇぇ」
い、いや。俺も知らなかったんだけど。
じゃ、じゃあ、俺がガチギレしていたのとかって……な、なんだそれ。
ヴェロニカが酔わなかった理由ってもしかして……ウィスキーじゃなくて……?
それで……シナモンちゃん淡々としていたのか。
そうか……ヴェロニカ……やる気満々のリオン姉じゃなくてシナモンちゃんをパートナーに選んだ理由は……演技力か……。
って、あり得ねぇぇぇっ!!!
「ハルさん……初めから仕組んでいたんです。ごめんなさい話せなくて。ヴェロ姉のはじめの一杯以外はすべて烏龍茶でしたから。ヴェロ姉が酔わないのも当然です」
「……こ、このサイコロは?」
「これはイカサマサイコロで、電気を入れるとサイコロの中の磁石が働いて、あらかじめ設定しておいた目を出せるんです。これも六歌さんから教えてもらった情報で。ヴェロ姉が酔ったフリをしたときにこちらも仕掛けました」
「マジかよ……あ、じゃ、じゃあ、な、なんで一回負けたんだ?」
「イカサマでやられる映像がほしかったんです。本当に、ごめんなさい……黙っていて」
「なにコソコソ話してんのよ。こんなのイカサマじゃない!!」
ヴェロニカがバンッってテーブルを叩いて立ち上がったけど……。
「こんなイカサマで久米夢実とその妹を
「ふ、ふざけないでッ!! 勝負したんだから……仕方ないじゃないッ!!」
「……ホスト遊びをしていて延長上にこんな茶番勝負をしたとでも?」
「そ、そうでしょ。第一、夢実が勝負に乗ったんだから、文句なんて言われる筋合いはないはずよっ!!」
「なるほど〜〜〜妹をメチャクチャにするぞって脅して勝負をして。負けたら違法な料金を請求し、払えないならって、無理やり身体を奪った……これが真相でしょ?」
「そ、そんなはずないでしょッ!! ねえ、鬼島くんッ!?」
「ああ、そんなことするは——」
ん。ヴェロニカのやつ……スマホを取り出して……何する気だ?
「証言をしないなら、この証拠はすべてネットに上げる。裏カジノと売春斡旋、それからなになに……マネーロンダリング? 鬼島さん……随分と犯罪に手を染めてますね」
「ほ、ほんとうなのッ!?」
「萌々香さ〜〜ん。早く逃げたほうがいいんじゃないの〜〜〜一緒にタイーホされちゃいますお〜〜〜。もし証言するなら、ネットにアップするのは止めておくけど? ほら、録音させていただきますから、証言して証言」
「ネットにあげるならあげろ。ああ、やってるよ。だがな、そんなの関係ねえよ。その前にお前らをタダで返すと思うか? そうだよ。久米夢実を
キレやがった。本性を現しやがった。
こいつ……頭オカシイんじゃねえの。消してやるとか、どこの映画の世——マジかよッ!? え? もしかして、本当にアッチの世界の人だったの……。
「へぇ。それを命令したのは?」
「海原さんだよ……今さら聞いてどうする? もうおまえたちには何もできない」
「海原……あの海原かッ!?」
「そう。ハル君。同級生の海原。よく知っているよね?」
隆介と一緒になって……美羽をイジメていた同級生の一人だ。
まさか、まだつるんでいたなんて。
……え。
ゾロゾロと店の奥から……半グレさん達が……30人くらいいる?
やべえよ。本当にやべえ。
「はい〜〜〜録音しました。証言ありがとうございます〜〜」
「おい……こいつらを縛り上げてスマホを奪え」
半グレどもに囲まれたぞ……。
いや、無理だろ。三姉妹がいくら格闘技をしていたとしても数の暴力には勝てない。
「クズ野郎の捨て台詞ですね。えっとですね……実は今現在も録画させていただきました。手口もすべて録画したので……がんばってくださいっ♪ 鬼島さん」
「なっ……」
店に入ってくる……お隣の半グレさん一行ッ!?
俺の隣人のあの半グレ……なにしてんだッ!?
「オタク野郎さんッ!? こ、こんなところで何してるんですか!?」
「それはこっちのセリフ! 半グレこそなにしてんだって」
「ああ、俺たち……
「それ良くないからッ!!」
こいつら血の気が多すぎ。ん?
七家社長って言ったか?
「きゃぁぁッ!! ハル君の家のお隣さんがなんでここにッ!?」
「ハ、ハルさんのッ!? うぅぅぅ殺さないでくださいッ!」
「……ハル殿。こ、こんな友人がいたとは」
いや、ビビりすぎ。中身はそこそこ良い人だからね?
「あ、あぁぁ……お、お願い……こな、いで」
ああ、萌々香……え?
萌々香、漏らしやがったッ!?
マジかよ……そんなに怖いのか??
「俺たちはオブザーバーなので、オタク野郎さん続けて」
「……お、おう」
笑った顔も殺人的に怖ぇぇぇよ。
ヴェロニカに目配りをして、と。
「うぅ……さて、気を取り直して。こほん。今まで被害に遭った女の子、それにお金をむしり取られた人たち。そのリストがここにあります。手法はすべて録画させていただいたので証拠になるかな? それと今後裁判で携わる弁護士もその費用もわたし達で捻出しておきました。えっと……ここでネタバレです。リオン姉どうぞ」
「うむ。残念ながら裏カジノと売春斡旋、それにマネーロンダリングの証拠なんて初めから持っていない。実際にしているらしいくらいの噂程度の情報しかなかったんだ。だが、証言しているのだからそれが証拠となるだろうな」
「はい、ってことで無事死亡の鬼島さんお疲れ。最後に、協力してくれたエキストラのみなさんには〜〜〜謝礼を支払いま〜〜す。再就職先は
「ちょ、ちょっとヴェロ姉、それは六歌さんに怒られますって」
「あっ! やべ……なんて。大丈夫」
……あれ、さっきから鬼島のヤツが静かに……顔が青ざめている?
な、なんなんだ。そういえば周りのホストも引きつった顔してる。
「な、七家六歌さんって……華麗の七家さん……か? それに……七家さんの配下の……半田まで……来ているなんて」
「……半田さんっていう半グレは知らないけど、六歌姉さんはあたし達の姉さん」
「青ざめていますね。これは穏やかじゃないみたいです……」
「なにかあるな」
いや、普通じゃないぞ。雰囲気が一変した。
場が凍りつくなんて言葉があるけど……まるでそれを絵に描いたような……。
「萌々香さんすみません。俺、隆介さんから手を引きます。七家六歌がバックにいるなんて聞いていなかったんです。すみません」
って……萌々香漏らした挙げ句、ガタガタ震えて座り込んでるじゃねえか。
「さて、ハルきゅ〜〜〜ん。帰るよ」
「はい、みなさん、ダッシュで撤収してくださ〜〜〜〜い」
「ハル殿、走るぞ」
って言われるがまま走らされて……訳わかんねえ。
なんだなんだ。
で、しばらく走った頃にパトカー数台が鬼島のホストクラブの停まったんだわ。
「大丈夫なのか? 俺たちも事情徴収?」
「それはないですよオタク野郎さん。七家社長の名前だして、それを言うほど鬼島も馬鹿じゃないです」
は、半グレ……いつの間に俺のとなりに。
それよりも、いったい……七家六歌さんって何者なんだよ……。
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