ペンギン仕掛けの目覚まし時計 6

織風 羊

第1話 母星にて



「なぁ、ムー、お前、いつの間に帰ってきてたの?」

「僕、忘れたよ」

「あい変わらずな返事やなぁ。確か、地球やって聞いてたけど?」

「うん、地球だよ」


願いを叶える星に帰ってきたマルセリーノと兎のムーの会話は続く。


「その地球の障害者支援施設に行ってたって聞いたけど?」

「違うよ、施設には入ってないよ」

「せやったな、施設に入らんと何処行ってたん?」

「僕、忘れたよ」

「そうか、まぁええわ。これ迄にも、しょっちゅう家出しとったけど・・・。まぁ、ええわ。どうせ、僕忘れたよ、とか言うんやろうしな」

「うん、忘れたもの」

「分かった、分かったよ。どや? 久しぶりにワイを乗っけて散歩にでも出かけへん?」

「いいよ」

「よっしゃ、行こ!」


マルセリーノが兎のムーの首にまたがると、ムーは勢い良く飛び出した。


「ぶっ」

兎は飛び跳ねるもの。いつものようにマルセリーノは兎からずり落ちそうになりながら、しっかりと小さな翼で手綱を掴んだ。


「ワイ、返す返すも乗り物に兎を選んだん後悔するわ」


兎は、首の上で転げ落ちそうになって飛び跳ねているぺペンギンを気にもせずに、マルセリーノの家の横にある兎牧場から勢い良く駆け去っていった。

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