第27話とっておき

 しゃりしゃりしゃり


 しゃりしゃりしゃり


「サエちゃん、例のやつでよろしく」


「うん、あれだね。了解だよ」


 抹茶パウダーに少量のグラニュー糖を混ぜ、お湯を加えながら溶いたあとに濾して冷蔵庫で冷やした、自家製甘さ控えめ抹茶シロップをたっぷりと。


 さらにその上には極上の粒あん、とどめに白玉を2つ乗せて完成!


 しゃりしゃりしゃり


 しゃりしゃりしゃり


「ほいサエちゃん、次のやつ!」


「はい、よろこんでー」


 サエちゃん、ノリノリだな。


 濃いめに淹れたコーヒーから作ったシロップをかけたあとに、シナモンパウダーをさっとふりかけ、その上にビターな味付けにしたキャラメルナッツをトッピング。


「はい、甘くない大人の味付けのかき氷、お待たせさましたー!」


「う、うむ?」


 甘すぎるって話をしてた貴族と、それに相槌をうっていた貴族の2人に差し出されたかき氷。


「甘くないかき氷とな。ふうむ、しかしこれはいったい?」


「はい。緑色のほうは、東の国で飲まれるお茶の葉を粉にしたものを用いて作った宇治金時といいます。茶色いものは豆を煮てやや甘めに味付けしたものですが、緑のお茶ととてもよく合いますよ。あ、白い玉はライス……ええと、スティッキーライスという穀物を粉にして団子にしたものです」


「黒いかき氷は、コーヒーという香りのいい豆から作ったシロップをかけました。そこに、甘い中にほんの少し辛みのあるスパイスをかけ、苦味のある砂糖でコーティングした煎り豆を乗せてあります」


「ふむ、このスパイスはシナモンか? かなり貴重な品であったと思うが」


「ご存知でしたか。今回、皆さまのためだけに取り寄せました。ぜひお召し上がりください」


 うん、今回のエリシャのパーティーのために取り寄せたのは嘘じゃないしね。まあ、評判がよければ屋台でも売るかもしれないけどそこはそれということでさ。


 こっちの世界にもシナモンがあったのには驚きだけど、そういえば地球でもかなり歴史の古いスパイスだったし、似たような物があったとしても不思議じゃないか。


「こ、これはなんと香り高いのだ! 苦味が強いが、このシナモンとキャラメルナッツの香ばしさがプラスされ、香りの三重奏、いや、それよりもさらに複雑な味わいになっているぞ!」


「この宇治金時というかき氷も凄いぞ! 変わった香りのするお茶は、初めてなのになぜか懐かしさを感じる風味だ。それをこの甘く煮た豆と一緒に口に入れることで、苦いのに甘いなんとも言えない味がとても楽しいぞ!」


 食レポありがとうございます。


 2人があまりにも褒めるものだから、1度他の味を食べた人たちも興味を持ってまたやってきたみたいだね。


「宇治金時にコーヒーは苦めな味付けです。苦味が苦手な方は練乳をかけると食べやすくなりますよ」


 ポーシャの言葉に、男性だけでなくご婦人方もまた集まってきた。


 よし、もうひと頑張りといきまっしょい!

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