第2話

『ぇ…?』

少女は人の声を聞いた。何を言っているかは聞き取れなかったのだが。さっきの独り言は聞かれていないだろうか…。キョロキョロ周りを見回すけれど、人影はなかった。声がした方をよく見る。やはり人はいない。何時間か探し回り、誰もいないことがわかった。

やっと、ほっと胸を撫で下ろした。



「それにしても、は何だったんだろうな…。」

スマホをいじりながら、もとい、スマホで調べながら、つぶやく。今調べているのはについてだ。だが、いくら探しても出てこない。普通なら、夢占い辞典とかを調べると出てくるものなのだが…。

「何をしているんですか〜?」

今、恐ろしい声がした。

「校内ではスマホの使用は禁止のはずですよ〜?」

その小柄な体躯には似つかわしくないドスの利いた声。そんなの知り合いの中には一人しかいない。おそるおそる、右下に目をやる。

「清香か…。」

そう。図書委員長であり校内屈指の美少女、花園清香その人だった。明らかにお怒りになっておられる。背中につーっと汗がつたう。

「あらあら〜。そんなに顔をこわばらせて、どうしたんですか~?」

そう言って肩に手を置かれた。花の清らかな香りが鼻腔に入ると同時に、目から水が出た。

「ああっ!!骨、骨!!軋んでる!清香様、おやめください!!!」

その細い腕からは想像できないほどの力だ。

「呆れちゃいますよ〜。」

そう言って、彼女は、綺麗な黒髪をかきあげる。

「折れるかと思った…。」

いやもう本当に。骨からめっちゃ嫌な音したもん!!

「校則を守らないだなんて感心しませんね〜。」

「いや、これには理由わけがあるんだ!」

「それはどんなものてましょうか〜?」

訝しげな目で見てくる清香。本当、見かけだけはいいんだよな…。華奢で小柄な体躯。花のような香り。ツルすべの色素の薄い肌。サラサラの黒髪。のんびりとした口調。庇護欲を駆られる少女である。

「いや、今日変な夢を見てな…。」

「まさか、授業中に入眠していたんですか~?」

「いや、朝だよ朝!」

一瞬だけギクッとしたのは、ここだけの話だ。

「ほうほう、それはどんな夢で〜?」

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