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水曜日の午後、僕と絢はお城公園の坂道を天守閣めざして登っていた。水曜は午後から履修が1ケだけなので、絢が「お城に行こうよ」って言いだしてきた。もちろん、ふたりとも初めて行く。それに、デートみたいなのも初めてだ。そういえば、今まで、図書館とか僕の家でしか、ふたりだけで会ったということがなかった。
[うふっ モト君と初めてのデート 私、ジーンで色気ないけど、まぁ 良いっか モト君、手をつないでくれないのかな 私からつながなあかんのかなぁ]とか絢は思いながら、時々、手が触れるように近づいて、登っていた。
僕は、絢の手の平を探すように、後ろからつないでいったんだが
「うぅーん ちがう 逆 ウチが後ろから モト君が引っ張って行って」とつなぎ返してきた。
「絢 本当に 追いかけてきてくれてありがとう 美術コースなんて、受かったの 二人だけなんじゃぁないか そんなのに、よく・・」
絢はつないだ手を前後に振り出して「ワン ッー ワン ッー」と掛け声を出し始めてた。僕の言った言葉を無視しているようだった。石段を登って、三層の天守閣に着いた。中に入って登り始めたら、途中から急な階段になって、さすがに手を引いてやるのも大変だった。
「うわぁー こんなの スカートじゃあなくて良かった」
「絢のパンツなんか誰も・・」
「いやだぁー 誰も見ないってー」絢は下から僕のお尻をつついてきた。
「いや 誰にもみせちゃぁ駄目だよ」
「ウン わかってる」と言ったきり、絢はまた顔を紅くして、黙っていた。
最上階からは市内が全部見渡せた。
「絢んちも見えるのか」
「うん こっち」「あそこだよ 中庭の庭園があるから、わかる。大きなお家なんだ。ウチの部屋からもお城見えるんだよ あっ もしかしたらウチの部屋も見えるんかも あー 着替えてるとこ見られてるかも」
僕が「ばーか」と変な顔していると
「だいじょぶだよ カーテンしてるもんねー」と、こんな絢は可愛い、抱きしめたいと思っていたら
「そうだ、ふたりの写真撮ろうよ 仲良いのん 小学校の植田先生に送らなきゃ ウチ、まだ先生に、ここにいること知らせてないんだ。不義理しちゃてるね でもね、ウチ、もしかしたらモト君にふられるんじゃぁないかと心配やったから」
そんな訳ないよ、絢、今度はしっかり・・
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