第9話 王女の侍女はボフミエ魔導国の侍女と仲良くなりました

私はインダルの王宮の中庭にいた。

目の前に幼馴染のルドラがいて花輪を作ってくれていた。

今と違ってルドラの背が低いので子供の頃みたいだった。


私に花輪をくれるんだ。

私はそう思ってニコニコしてそれを見ていた。


「何しているの」

そこにキラキラ輝いたリーナ王女が来た。王女は子供の頃から可憐だった。


「これを」

ルドラは出来上がった花輪をリーナの頭に載せた。


嘘っ!私にじゃなかったんだ。私はショックを受けた。


「ありがとう!」

ニコッとリーナが笑った。


リーナはきれいだった。でも・・でも・・・・


次の瞬間には大人になったリーナとルドラが抱き合っていた。


「いやーーーー!」

私は大声で飛び起きていた。




周りを見渡すとそこは知らない部屋だった。白い壁に囲まれた部屋の真ん中に置かれた立派な

ベッドの中に私は寝かされていた。服は制服から白い寝間着に着替えさせられていた。外が明るいのでもう朝だろう。


「大丈夫ですか?」

そこに侍女と思しき人が入ってきた。


「ここはどこですか」

私は驚いて聞いた。


「学園の隣の建物です。あなたは魔力切れを起こされたとジャルカ様が連れてこられたんです」

「そうなんですか」

私は思い出していた。クリスのマネして少し大きな障壁を出そうとして魔力切れを起こしたのだった。


「私は侍女のミアと申します」

「ミアさん。ひょっとして夜通し、ついてくれていたんですか」

私は慌てて聞いた。


「時々様子を見に来た程度だから、ソニアさんは気にしないで」

ミアは笑って言ったが、いやいや、学園の隣ってひょっとしてここは。

「あの、ここってひょっとして宮廷ですか?」

私は恐る恐る聞いた。



「宮廷って言っても他国みたいなことはないですよ。王様はいらっしゃらないし」

「そんな、私なんて平民なのに」

私は慌てた。平民が寝ていて良いところではない。


「大丈夫ですよ。宮廷魔導師のジャルカ様が連れてこられたのだから」

「ジャルカ先生。宮廷魔導師だったんだ」

私は驚いた。宮廷魔導師って言ったらどこの国でもエリートだ。すごい人だとは思っていたけれどそれほどすごい人だったなんて。

その人にこんなところに連れてきてもらうなんて何てことだろう。今は朝だろう。朝って・・・・


「大変。今何時ですか?」

外は明るかった。私は授業に遅刻するかもしれないと慌てて聞いた。


「8時です」

「やばい遅刻する」

私は慌ててベッドから飛び起きた。


「大丈夫ですよ。今日は休みです」

ミアが言って笑った。


「あっ、そうだった」

私はホッとして言った。今日は学園は休みだった。今までは毎日王女のお世話していたから休みというものの実感がなかった。


「ソニアって本当に慌てんぼうだね」

ミアは微笑んで言った。


「うーん、そうなのかな。私はそのつもりは無いんだけど皆に言われる」

「私も時には失敗するけれど、あなたほど多くはないわよ」

ミアがまた笑って言った。


「えっ、私まだそんなに失敗していないわよ」

私はぷりぷりしていった。そう、まだそんなにしていないはず。


「何言っているのよ。入学式の時にいきなり遅刻してアルバート様にぶつかったんでしょう」

「えっ、何故、知っているの?」

私は目が点になった。


「アルバート様から聞いたわ。いきなり講堂でアルバート様にぶつかったんでしょう。新手の抱きつき令嬢かって最初は警戒したって言われてたわ」

「抱きつき令嬢って何よ」

私はぶすっとして聞いた。


「私も知らなかったから聞いたら、アルバート様はドラフォードの名門公爵家の出身じゃない。本国にいる時に、お近づきになりたくてたまに王宮とかで慌ててぶつかって来る令嬢とかがいたんですって」

「へえええ、そんなのがいるんだ」

私は知らなかった。そう言うふうに近づく方法もあるんだ。知らなかった。


「もっともアルバート様は運動神経が良いからぶつかられたことはなかったって言っておられたけれど、避けたら避けたで転けられて怪我でもさせたらまたその後が面倒だから、最近はうまく躱すようになっておられたそうだけど、あなたの場合はもろにぶつかられて驚いたって、おっしゃっていらっしゃったわ」

「遅刻して本当に慌てていたのよ」

私はミアに言い訳をした。


「そうみたいね。あんな天然でよく王女の侍女が出来るなって感心されていたわ」

「それ馬鹿にしていたの間違いよね」

私はアルバートを今度見たら睨んでやろうと思った。そんな恥ずかしいことをみんなに言いふらしているんじゃないわよ。


「えっ、でも、それって王宮の皆が知っているの?」

思わず私は聞いてしまった。


「そんな訳ないじゃない。朝礼で聞いただけよ」

「ちょっと待って。朝礼って何よ。そんなに多くの人が知っているの?」


私は慌てた。朝礼って侍女の朝礼に騎士のアルバートが参加するわけはないし、全体朝礼か何かで私のことを発表するのもおかしいし。


「クリス様の朝礼よ」

「クリス様?」

私はよく判らなくてミアを見る。クリスって平民のクリス?


「ああ、ごめん。クリスティーナ様。筆頭魔導師様よ」

そうだ。クリスってクリスティーナ様と愛称同じだったんだ、ってとこじゃなくて、筆頭魔導師様の朝礼でアルバートの奴が発表しただと・・・・


「ええええ!この国の最高指導者に私のバカさ加減が知られたってこと!」

それも馬鹿として・・・・・・。私は真っ青になった。


もう終わった。我が国はこんな馬鹿が王女の侍女をやるくらい、数学は全くできていないし、人材不足だって思われたんじゃないの。


そんなインダルの王女の事なんて見捨てて当然と思われたかもしれない。


まだお会いしたこともないのに・・・・。もっとも会える可能性はないし、更にへったけれど・・・


「何青くなっているのよ。別に毎朝の朝礼でたまたまあなたの名前が上がっただけよ」

「でも、そんな馬鹿のおっちょこちょいがインダルの王女の侍女しているって知られたら、王女殿下が余程人を見る目がないみたいじゃない。私は国を代表して留学しているのに」


「そんな事無いわ。クリス様はそんなふうには取られないわよ。笑っていらっしゃったし」

「ほら、やっぱり笑われたんじゃない」

私は真っ赤になった。どのみち数学のこともアルバートが色々言ってくれたに違いない。私は呆れ返ったアルバートの瞳を思い出していた。



「それよりももうじきクリスさんが来るわよ。今日街に遊びに行く約束したんでしょ」

「あっ、そうだった」

ミアの言葉に私は思い出していた。


「でも、やばい。服がないわ」

私は慌てた。


「大丈夫。この私が着ていない服があるからお近づきの印にあなたにあげるわ」

ミアがピンクのワンピースを出してくれた。


「えっ、本当に良いの?」

「また、お返しに、学校でのこと色々と教えてくれたら良いから」

「え、もう変なことはしないわよ」

「うそ、絶対に毎日何かあなたならやってくれるって」

流石にそんなことはない。毎日なんて。やっても2日に一度だ。

というと、それで十分じゃない。と駄目だしされたんだけど・・・・

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