四十三、少女救出 2

 レベルが高くスキルを持っているダークウルフ。俺が向かってくるのを見て、一瞬で俺の背後へと回って来た。


「ウソだろう。今の俺の目で見ても動きが追いきれない」


 ダークウルフはその素早さを生かして俺を翻弄してくる。やはり、元の素早さが早い奴が俊足のスキルを使ったらそらこうなるわな。


「厄介だが面白いな」


 俺は左手に持っている剣を異空間倉庫にしまい、右手に持つ剣をに集中する。二刀流も面白かったが、本気の戦いをするときは慣れているこっちに限る。


 相手の動きを鑑定して先読みする。それにより、次どこに動くかが分かる。俺はそこに合わせて攻撃をすると、ギリギリのそれを感知して回避して見せる。レベル二十でここまでに動きが出来るのには少しびっくりだが、その行動も読んでいた。俺は剣を引き戻し、回避先に合わせて攻撃を加える。それに反応は示したものの、二度目は回避しきれずに俺の攻撃を受けた。ただ、致命傷となるダメージにはならず、かすり傷を与えただけとなった。


「こうも俺の攻撃を回避してくると思わなかったが、中々楽しいな。それに、ずっと見ているとその動きにも目が慣れてくるぜ」


 俺はダークウルフの動きを鑑定して動きを先読みする。その上、ただ相手がそこに来るから攻撃を合わせていただけだが、今回はタイミングをばっちり合わせて攻撃をする。それにより先ほどまでタイミングが少し早く、ダークウルフに気づかれていた攻撃も気づかれずに命中した。


 致命傷となるダメージを受けたダークウルフは、その場で倒れてしまうも、何とか立ち上がろうとしている。俺はそこへ一刺しして止めを刺してダークウルフを倒した。


「これで終わりだな」


 少女の方を振り向くと同時に、


「ありがとうございます」


 頭を下げられたのだった。俺は少女の情報を得るために鑑定を使う。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 クリス=サーベル 15歳 人族 LV20


 スキル:槍術 熟練度2 風魔法 熟練度2 不屈 熟練度2 

     毒耐性 熟練度1 麻痺耐性 熟練度2


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 レベルはそこそこ高い。このレベルから考えるにクリスと言う少女はDランクからCランクの冒険者だろう。まだ全体的にスキルの熟練度は低いが、それも低ランクの冒険者だと考えると納得だ。だが、この見た目で俺と同い年だと言うことには少し驚いた。俺の肩程しかないアリスよりも少し身長が低いから十歳くらいかと思っていたのに。


 クリスのステータスを見ながらそんなことを考えるのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 私、クリス=サーベルはDランク冒険者。ルーラの町で生まれた私は友達達と一緒に冒険者になってパーティーを結成した。そして一年間必死にやって来てDランクになり、力も付いてきてダンジョン調査依頼の事を聞かされた。最初は皆でどうするかと話したが、ダンジョンには魅力的なことも多く、とりあえず一階層だけ行ってみようと言う話になって今朝、冒険者ギルドでダンジョン調査の依頼を受けました。


 初めの内はかなり順調で、モンスターとは一体としか出会わずに来れた。そのせいか、私達は、ダンジョン調査依頼も他の依頼と同じでそこまで難しくないと、下の階層に行けると思い込んでいました。


 ですがそれは間違いでした。よく周囲を警戒せず、先へ進んでいたためなのか、背後から数匹のモンスターが付いてきていることに気づいていなかった。


 そして私達はダークウルフ五体に囲まれることになった。皆最初は戦おうとしていました。ですが、状況が不利になると、私がモンスターに向かって戦いを挑みに行っている隙を見て、三人は逃げて行ってしまったのです。


 それに気づいたこ時にはもう三人の姿は小さくなっていて、私の心は絶望に染まりました。その時私の動きは止まってしまい、ダークウルフの攻撃を食らってしまったのです。


 どうしようもない。ただ大声で助けを呼ぶしかできなかった。ただ、誰も助けに来てくれないと思っていましたが、


「もう大丈夫だよ」


 一人の少年が私の前に立ち声を掛けてくれました。その時、私の心は少しの安心感に包まれました。でも、それと同時に私が助けを求めたせいで少年が死んでしまうと、罪悪感にも包まれしまいましたが、


「大丈夫ですよ。マイルさんは強いので安心してください」


 もう一人の少女が私の傍に来てくれた。少女は少年の事をマイルと呼び、マイルは少女の事をアリスと呼んでいる。


 この二人はパーティーを組んでいるんであろうとすぐわかった。しかも他にパーティーメンバーがいない所を見るにたった二人でこのダンジョンに挑んでいるのだとか。


「すぐに逃げてください。たった二人では危険です」


 私は、知らなかった。ダンジョン内のモンスターがここまで強いと言うことを。だから、この二人に助かって欲しいと思いアリスと呼ばれる少女に声を掛けた。


 でも、


「心配はいりません。マイルさんはあなたの声を聞いて一目散にこちらへと向かわれました。だから大丈夫ですよ」


 アリスと呼ばれる少女は、私にニコリとした笑顔を向けてくれる。その笑顔を信じ私は、マイルと呼ばれる少年の戦いを見守ることに。


 その戦いは圧倒的で、ダークウルフ一瞬で四体を倒し、一番強そうなダークウルフを圧倒して倒してしまった。


 これで私は救われた。そう思うと、心にあった不安感や緊張感は消えてしまったのですが、それと同時に私は意識を失ってしまうのです。

 

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