蒼井ミハエル ~吸血鬼から見た人間という生き物~ 巻の二

京衛武百十

我が家では夕食を終えると皆で一緒に片付けをする。これも含めて<家族のコミュニケーション>になってる。 でも、こういうのを誰かの前で話すと、『幸せアピールがウザい』なことを口にする人間がいる

 我が家では夕食を終えると皆で一緒に片付けをする。これも含めて<家族のコミュニケーション>になってる。

 でも、こういうのを誰かの前で話すと、

『幸せアピールがウザい』

 的なことを口にする人間がいる。だからアオは、SNSでは自分のプライベートにはほとんど触れない。自身の仕事の告知にしか使ってないんだ。

 他者の幸せな様子を妬み、その一方で<結婚生活にまつわる愚痴>を見れば、

『やっぱり結婚なんてデメリットしかない!』

 と勝ち誇る。本当に浅ましいよね。だけど、そういう考えの人間は結婚しない方がいいというのは事実だと思う。

『自分だけが幸せになりたくて、誰かを幸せにする努力はしたくない』

 というタイプだろうからね。

 僕達は、自分の勝手で子供達をこの世に送り出した。だからこそ子供達にも幸せになってほしいと思っていてその努力が実を結んでいるだけなんだけどな。

 子供達が幸せそうにしているから僕もアオも幸せなんだよ。なのにそれを発信したら『幸せアピールがウザい』とか。

 そんな風に絡まれるのが面倒だから発信しない。だから幸せな家庭を築いてる人間ほど他者からは見えにくくなる。

 半面、結婚生活についてのネガティブな情報を発信する人間ほど共感を得られるから、承認欲求も強い人間、自己顕示欲の強い人間ほどそういう情報を発信するようになる。

 本当に意味が分からない。自分が幸せじゃないからといって他者も不幸であることを望むの? そんな人間を『幸せにしてあげたい』と思ってくれる人間が滅多にいないことは、経験上、よく知ってるんじゃないの?

 自分が幸せになれないのは、自分が誰かを幸せにしようと考えないから。自分以外の誰かにも不幸になってほしいと考えるから。

 そういうことなんだよ?

『自分は自分』『他人は他人』と思うなら、他者の不幸を願うのはおかしいよ? それは、『自分は自分』『他人は他人』とはまったく思えていない。他者のことを気にしてるからこそ他者の不幸を願うんだよね?

 そして、他者の不幸を願う人間と積極的に関わりたいと考えるのは同種の人間だけだし、そういう者同士で傷を舐めあってもどちらかが少しでも幸せを感じたりしようものなら足を引っ張ってくるんじゃないの?

 これでどうやって幸せになるつもりなのかな?

 アオ達を見ているからこそ、そういう実感しかないんだ。

 <種の存続は生物の本能>

 なのにそれを否定して『子供は要らない』『子供を作ったのは間違いだった』と言いながら、<本能>を理由に不貞を働いたりもする。

 人間はいったい、何がしたいの?


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