4、リンゴ1個分



「ご飯が美味しい!」


「それは良かったね」


 部屋のテーブルに配膳された夕食。

 主食はパン。

 主菜は肉を煮込んだシチューだった。

 何の肉かはわからないが、美味しいから良しとする。

 これでまた大きな問題が解決した。

 食事が口に合わなければ、生きていけない。


「とりあえずゆっくり食べな。また後で来る」


 部屋を出て行く優しいお姉さん。

 

「この世界いよいよ気に入った!」


 飯が美味い!





 貰った財布にリュックからお金を移動しながら、残金を確認する。


「653ゴールド、これは多いのか?」


「失礼するよ」


「優しいお姉さん、質問!」


「‥‥‥なんか失礼な言い方ね」


 テーブルの食器を片付けながら、お姉さんがこちらを向く。


「1ゴールドで何が出来ますか?」


「‥‥‥難しい聞き方するわね」


 お姉さんの答えでは、1ゴールドでリンゴが1つ買えるらしい。

 大雑把に1ゴールドを100円の貨幣価値としてみる。

 宿屋の一泊が20ゴールド、夕食が5ゴールド。一泊2000円で一食500円。

 宿代が少し安い気もするが、だいたい当ってそうだな。

 俺の今日のブヨブヨ退治で手に入れたゴールドは678ゴールド。

 日本円にして‥‥‥67,800円。

 石を投げるだけの簡単なお仕事。

 

「なんて素敵な世界なんだ!」


「リンゴが好きなの? 買ってきてあげようか?」

 

 まだいたお姉さん。


「お姉さんは1日働いて何ゴールド貰えるの?」

 

「‥‥‥いきなり、本当に失礼ね。20ゴールドよ」


 2,000円とは安過ぎる。

 計算を間違ったかな?


「外のブヨブヨしたの倒してる方がお金になるよ」


「スライムを? 倒せる訳ないでしょ」


 ブヨブヨは予想通りスライムでした。


「1匹で2ゴールド貰える」


「‥‥‥あんた、本当に大丈夫じゃないわね。モンスターは物凄く危ないから、近づいちゃ駄目よ」


「そうなの?」


「近づいたらすぐ殺されちゃうわ。明日街を案内してあげるから、今日はゆっくり寝なさい。おやすみ」


 優しいお姉さんは食器を持って出て行った。

 

 ブヨブヨが危ないだと?

 石を投げてるだけで339匹倒しました。

 

「‥‥‥俺は勇者様かもしれません」


 石でスライムを潰す勇者なんて聞いた事がない。

 

「さ、寝よ!」


 勇者なんて興味ない。

 俺はレベルを上げてお金持ちになるのです。

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る