第22話 事件

 2階の寝室の快適なベッドで、親子3人寝ていると、階下でガシャーンとスゴイ音がして、ナマケモノと夫が飛び起きた。

 単純なナマケモノは、すぐにでもその音の正体が知りたくて、階段に向かおうとすると、楽天家でありながら、危機管理に関しては非常に慎重な夫は、ちょっと待ってと小声で言うのです。僕が行くから携帯持って少し後からついてきてと。のんびりぼんやり温室育ちのナマケモノは、理由も分からずとりあえず携帯をもって、階段の上から夫が降りていった階下の様子を伺った。

 後で、理由を聞くと、万が一強盗だったり熊だったり⁈して夫がやられたら、わたしは隠れるか逃げるかして警察に電話してもらうためだそうな。想像すると恐ろしい…でも必要な慎重さです。

 

 それはそうと、ガシャーンの正体ですが、階下に先に降りた夫から、来てーと声がした。声のトーンから、どうやら強盗ではなさそう。

 階段を降りてみると、書斎の入り口付近で立ち尽くす夫。書斎のカウンターテーブルの上にある150センチ程の幅にわたる2段の作り付けの棚が、2段とも完全に崩壊して、わたしの本やら書類やら趣味の道具やら、必死に整理して詰め込んだものが、すべて棚板とともに床に崩れ落ちていたのだ。

 なに?!なぜ??新築作り付け!片付け終えたばかり!こんな壊れ方する?!

 沸々と怒りが込み上げて、夜中でしたが、夫に、ハウスメーカーの担当者に写真&メールを送りつけてもらったのです。

 

 この棚は、とにかく頑丈な棚にして欲しいと再三伝えていたはず。それは、端から端まで、書類やら本やら裁縫に使う布やら毛糸やらを、びっしり詰めたいからと、担当者にも、現場監督にも伝えていた。完成後に中を見ていた時にも、現場監督に確認していたのです。どーゆーこと???壊れて取れた棚板が付いていたであろう壁の辺りを見ると、素人目に見ても頑丈に付いていたようには全然見えない。怒りと驚きでしばらく思考停止。

 明日も仕事だし早く寝なきゃと我にかえり、とりあえず現場写真を収め、散乱した荷物を部屋の端に寄せることにする。引っ越しで段ボールや衣装ケースに入れて運んできた荷物を、やっと綺麗にしまったのに、また衣装ケースにザッと入れて片付けた。これなんの作業??

 怒りを抑えながら寝室に戻ると、愛しい娘は、こんな大惨事にも、ピクリともせず熟睡しているのでした。寝顔のかわいさにほんの少しだけ癒されながら、怒りと疑問渦巻く頭を抱えてとりあえず眠りについたのでした。とにかく明日の朝になったらすぐにハウスメーカーのKさんに連絡しなければ。

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