第18話 ハウスメーカー戦隊

 少しずつ終わりが見えてきた確認作業と決定作業。でも、とにかく時間がないのです。とにかく早く発注をかけないと、予定の工期通りに家が引き渡されないのです。

 予定のズレがなぜそんなに問題かというと、今や一家の大黒柱となったわたしですが、転居と共に転職をする計画を立てており、ナマケモノ体質からくる、厄介ごとは最短ルートで片付けたいとの考えから、既に転職計画を進めていたのです。一応、退職にあたって、1ヶ月後に辞めます、そうですか、では済まない立場だったので、3ヶ月前に申し出て調整して、子供の学校の転校もあったので、年度切替りをめがけて、全てがうまくゆくように計画していたものだから、それがズレると大変なことになってしまうのです。

 それほど遠方でもないので、多少の不便はよしとしますが、何より困るのは、「家の引渡し日=ローン実行日」とローン審査が通ったわたしの現在の会社への在籍の関係なのです。

 そもそも、ローン実行日前後での転職は面倒なことが多く、しない方が良いのでしょうが、有資格の専門職でのキャリアアップ転職は、銀行さん側としては特に問題とならないと言われたので、だったら、ナマケモノは遠方に通うより、この引越しを機に近くて、もっと良い職場に移りたいわと思ったのです。引き渡し日が遅れてしまって、現在の会社在籍中を過ぎてしまうと、転職自体は良いのだけど、審査は、新たな会社の条件で、し直さないといけなくなる。

 トラブル発生時には、もう前職場に退職を申し出て、さらに新しい職場候補からお会いしたいとの打診もあったが、身動きとれずの状態。

 そんなこともあり、なんでよ!との思いが、より増幅したのでした。

 そんな事情もあり、予定の引渡し日に向けてなんとか全てをまとめるため、ハウスメーカーさんには、よくやっていただけたし、我々家族も日々の生活をこなしながら頑張った。

 通常、今日はインテリア担当さん、今日はお庭周りのエクステリア担当さん、最後は現場監督さん、といったように、時間をわけて登場するそれぞれの担当さんですが、今回は、分ける時間もなく、担当のKさんと全員そろって、相談し、打ち合わせ、その場で共有する形で行われた。

 ひとりひとり現れるより、なんだかチームワークもよく見える。インテリアの部分でも現場監督さんが意見を言ったり、逆に担当外のことに、インテリア担当さんがアドバイスしたり、やはり、みんなで相談した方が決定が早いです。毎回、遅い時間になっても、最後まで、お茶を取り替えに来てくれる事務のお姉さんも加えて、戦隊モノのヒーローに見えてきた。

 そういえば、お茶を出すだけのお姉さんにも、夫はフラットに話しかけるのです。今、これで悩んでるんだけど、お姉さんはどっちがいいと思います?と。いや、私はそんな意見なんて…と断るお姉さんですが、いいんです、違う人の意見や感覚を聞きたいだけなのでと夫。

 だんだん、私はこっちが好きですねと好みを言ってくれるようになったお姉さん。でも、これも素敵ですと、バランスを取ることも忘れないお姉さん、優秀なかたです。どんなに遅い時間になっても、一度も嫌な顔ひとつせず、笑顔で飲み物を替えてくれた。

 そんな方々のおかげで、なんとか全ての確認、決定、発注を終えて、あとは完成引き渡しの日を待つだけになった。

 とはいえ、その後は、支払い関係の手続きや、家の保険の手続きやら、色々色々あるのです。こういったことは、家の中身を決めるような楽しさは全くなく、とても面倒なことですが、ここで手を抜いたら、これまでの苦労が無駄になるようなアクシデントがまた起こるかもしれない。回らない頭をなんとかぶん回して、やりきった。

 ついに、ナマケモノ、家を建てられたんじゃない?

 いや、最後まで何があるかわからない。油断は禁物です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る