13「スクールカーストの変動と、バカットー騒動」
💭 🔁 ❤×?170
翌朝、昨日よりもさらに10分早い7時半に教室に入るも、花瓶は既に置かれていた。
執筆しながら待つことしばし。徐々に人が増えてきて、相変わらず存在感の無い星狩さんがいつの間にか横に居て、ふたりでしばしイチャついた――と言っても挨拶したり手を振り合ったりするくらいだけれど。
クラスの話題は、主に3つ。
1つ目は、当然ながら急死してしまった的場くん、相曽さん、出目さんの事。
特に出目さんについては、死体の写真が大量に拡散されていて、いいねがたくさん付いた事を喜ぶ声や、
『正直助かった』
みたいな事を言う人まで居た。
……正直、信じられない。
2つ目は、【パリピの女王】
結果的に悪ふざけで相曽さんを殺す事になった天晴さんは、本人が登校していないのを良い事に、『インスタ女子組』の面々からボロクソに言われていた。『インスタ女子組』の女帝だったはずの彼女の権威は、もはや見る影も無い。
図らずも新女帝に祭り上げられる形となった【セミプロダンサー】舞姫さんが舞い上がって、悪口を主導していた。
そして、話題の3つ目と言うのが――
【典型的バカットー】
【映えの権化】蝿塚「出た、バカットー」
【セミプロダンサー】舞姫「あーアタシも見た見た。アレは無いわ」
馬子は無所属だけど、素行悪い組の種田、江口さんと仲が良いらしい。荷物を置いて種田の方へ行こうとする途中で、
【陽キャリーダー】蹴鞠「馬子くん、あれは消した方がいいよ」
【バカットー】馬子「あ? あれって何だよ?」
【陽キャリーダー】蹴鞠「昨日のツイートだよ。バイト先の」
【バカットー】馬子「え~、何でだよ
【陽キャリーダー】蹴鞠「いーや、店に迷惑が掛かる前に消すべきだ」
【バカットー】馬子「でもほら、コレなんて30個も付いてんだぜ? もってーねぇじゃん。
【陽キャリーダー】蹴鞠「その
【バカットー】馬子「読んでねぇけど」
【陽キャリーダー】蹴鞠「今すぐ読んだ方がいいよ」
【バカットー】馬子「あんだよ……」
昨日の夜に投稿された、馬子の呟き。
『清掃中~(舌を出した顔のアイコン)』というコメントとともに、鼻の穴に醤油差しを突っ込んだ写真が添付されている。目元こそ手で隠しているけど、他にも顔出しでパリピっぽい自撮りをたくさんUPしている彼だ。髪型や顔かたちで本人だと分かる。
店内の装飾を見る限り、大手牛丼チェーン店だ。
他にも、肉を外に出して自分が冷凍庫に入ってみたり、ゴミ箱の上で盛り付けてみたり、とやりたい放題。
馬子は以前からバカットーの素質アリだと内心思っていたんだけれど、『いいね❤ × 58分 = 余命』の所為でタガが外れてしまったのだろうか。
『草』
『おもろ』
『(爆笑する顔のアイコン)』
みたいな、好意的な反応が若干。
『出たバカットー』
『あーあ』
『本名でよくやるわ』
『人生卒業おめでとうございます』
『これは賠償確定だな』
みたいな、呆れ系の反応がそれなりに。そして、
『特定しました』
『通報しといた』
『猫目高校2年4組馬子カズヤくん17歳、
という、特定・通報系の反応がぽつぽつと。
【バカットー】馬子「ひっ!?」見る見るうちに、顔色が悪くなっていく。「あ、ああああッ! どうしよう、どうすればいい!?」種田にすがりつくも、
【下種野郎】種田「知らねぇよ。勝手に人生詰んでろ」
【エロ垢】江口「草」
【陽キャリーダー】蹴鞠「とにかく、今すぐツイートを消すんだ!」
【バカットー】馬子「わ、分かった! ああっ」スマホを取り落とす。スマホは床を跳ねて
【Vヲタ】武威「け、蹴っていないでござる! 無礼であろう!?」彼は陰キャなクセにアクティブな性格をしているので、果敢に言い返す。
【映えの権化】蝿塚「い、嫌、嫌ぁ……『58分』になってる!!」
蝿塚さんの良く通る声が、教室中を駆け巡った。
【セミプロダンサー】舞姫「何を今更。分かってた事でしょ?」
【映えの権化】蝿塚「ち、違うわよ! 最初に呪いが発動したのがいつだったか覚えてる!?」
【セミプロダンサー】舞姫「あ……」
……そう。僕がクラスを『呪い』に登録したのは2日前のホームルームの時間。
つまり――
【セミプロダンサー】舞姫「1分減るタイミングが、早まってるって事!? な、何でよ!?」
【映えの権化】蝿塚「そんなの私に分かるわけないじゃない!」
一体全体、何分早まったんだろう?
僕が例のページの登録ボタンをクリックしたのは、ホームルームの最中だった。時計は今、8時40分前を指しているから、少なくとも5分は早まっている。
2日で5分なら誤差みたいなものだけど……。
そうだ、星狩さんに確認すべき事があるんだった。
昨日、試しに頼々子さんから支給されていた塩とお札をスマホに試してみたんだけど、『呪い』が消える事はなかった。ならば次の手として、星狩さんがURLを知っている可能性に賭けてみようというわけだ。
僕は隣の席を見る。星狩さんが可愛い顔を呆けさせて、窓の外を見ている。
――1ヵ月前。初登校した日の事。
僕は朝のホームルームで自己紹介をして、自席を指示され、そして目の当たりにした。
机に花瓶を置かれ、悲しそうに俯いている星狩さんを、だ。僕は悪目立ちするのも忘れて花瓶を引っ掴み、教室の後ろの棚に置いた。
――その日から、僕と彼女の交流が始まった。
彼女はとっても可愛い上に、
しばらく星狩さんの横顔を見ていると、彼女が気付いてこちらを向いた。微笑み掛けてくれる。
超可愛い。天使かもしれない。
「例のサイト、URL知らへん?」
『ごめん、知らない』
「履歴は?」
と尋ねると、星狩さんは『はっ!?』とでも言い出しそうなほどびっくりした顔になり、スマホを操作し、それから見る見るうちに顔色を悪くする。
『履歴、残ってない!!』
「何て事……」
いや、そうなっている可能性は十分にあった。
何しろ『呪い』は、僕らのTwittooを自由自在に操れるんだ。Webサイトの閲覧履歴を削除するくらい、わけないだろう。
――ピンポンパンポーン
その時、校内放送の音が鳴り響いた。
緊急の、学年集会を告げるものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます