シーン 14
冷たい風が車庫を吹き抜ける日が増えてきた。少し前に俺の寝床は、二階ベランダの下の風が当たらない場所にお母さんが移動してくれていた。暖かかった日には、近くの畑ん中でバッタとか追い回したりしていたが、最近はずーとうずくまって寝ていることが多い。
今は、少し出て電柱のたもとで、そろそろ帰って来るだろうすずりチャンを待っていた。ここは、坂の下まで見通せる場所だ。右手の方から、茶色の毛並みがツヤツヤと光っている大きな犬と連れ立った人が歩いて近づいて来る。身構えていたのだが、その犬はこっちを見ないようにして、無視するように前を通り過ぎて行った。この辺りは犬が多いようだが、大体は小さな犬だ。俺には大きな犬の方が安心できるようだと感じている。
見えた、すずりチャンだ。冷たい風が降りて行っているだろうに、ほっぺを赤くして。首に温かそうなのを巻き付けただけなのに、懸命にスカートを跳ね上げて、向かって上って来る。お母さんなんかはモコッとしたものを着て出てゆくのに、なんであの娘はもっと着ないのだろうか。近くまで来て、俺の姿に気づいたのか、「プチッ」って手を振った。少しよろけながら。いろんな想いもありながら、ニャーと精一杯応えた。
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