(三)
「彼女が自分の意志で打ったと?」
山城純雄は声を張り上げた。
北浅草警察署の取調室から部下である城陽典孝とともに会議室に戻り、小休止をしている時だった。厚生労働省の麻薬取締局の捜査官である桃山英吉と話しているときだった。
「違うんですか?」
桃山が返答した。
「彼女は、自分で打ったのではなく、打たれたのでは?」
「それは証拠がないでしょう」
「彼女が自分の意志で打ったという証拠は?」
「それはありません。しかし、彼女の体内から薬物が検出されたのは事実です」
「それでは彼女が打ったという証拠にはならない」
「ええ、なりません。しかし、彼女が麻薬中毒にあったという証拠にはなります」
(続く)
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