第173話 ここだけの話。
『占いの館』の本日のカード。『 POLITICS:二枚舌 』は、自分には当てはまらないな、なんて思いながら書いていたけれど。
「すんごい当たってる! 今日は私、二枚舌過ぎた!」
自分でも驚きました。とりあえず、その『 POLITICS:二枚舌 』をご紹介いたします。
***
本日の一枚をご紹介いたします。もしもこのカードのメッセージが、必要なときに、必要な方のところへ届くことができれば幸いです。
『 POLITICS:二枚舌 』
【カードの絵】
目を細め、いやらしく口の端をあげて笑うカッコをつけた気味の悪い男が、こちらに向かいニヤニヤと笑っています。腐った緑色をしたこの男は、テーブルに手をつき、椅子に座っているようで、そのテーブルの乗った手には、棒に括り付けられた仮面を持っています。その仮面はいかにも無防備でいい人のように笑っている仮面ですが、その仮面が貼り付けられている棒には、腐った緑色と同系色の目が鋭い大蛇が巻きついています。この嫌な感じでニヤニヤしている男と大蛇は、まるで同化しているようです。
《本日のメッセージ》
本日のカードのメッセージは二枚舌です。二枚舌、それは、表向きと裏向きが違うことを指しています。
このカードの絵のように、表向きはいかにもウェルカムな優しい微笑みを見せていても、心の中では、自分以外の相手を
それは本来、気持ちの良いことではありません。
他人に良い顔をして、いかにもいい人を装い、その反面、心で蔑んでいるのですから。
人間関係は、一言で、これが正解と言えるものではないと思います。
もしも、本日のカードが何か心に引っかかったとしたら、なんで引っかかったのかを考えてみるのもいいと思います。
あぁ、あの人はそういう人だよね、と、他人に当てはめるよりも、自分がそういう時はなかっただろうか?と記憶を辿る方が、きっとあなたを今よりも成長させてくれるような気がします。
誰かがどうか、ではないのです。
自分は、どうか、なのです。
本日のカードからのメッセージでした。
***
基本的に、私は表裏がない性格だと思っています。嘘をつくことはあまりありません。誠実に生きて行きたいと思っているからです。
だがしかし……。
私は本日、とても自分の心に嘘をつき、まさに二枚舌で生花の先生とお話をしてきました。
私の生花の先生はもう九十歳近いと思うのですが、お元気です。それはとてもいいことだと思っています。先生のところに通い始めて約五年。お免状も取りながら学んでいますし、先生のことはだい、……好き、……、嫌いじゃないです。
基本的にはいい先生に習っていると思っているのですが、若干、いいや、結構趣味が違います。あ、趣味というのは、お好みの花器のイメージとでも言いましょうか。私の先生は、自由花というジャンルがお好きで、私は古風な古典的な生花が好きなのです。
そんな自由花が好きな先生は、ご自身で花器も製作されて、その花器を使い、数々の展示会に出されてきました。そりゃそうですよね、もう直ぐ九十歳くらいなんですから。
で、昨年くらいから、ご自身が過去に制作された花器をくださるのですが。
「これはねぇ、だいぶ時間も使ったし、材料費だってあなた、馬鹿にならないのよぉ。本当、こんないいものをもらえるだなんて、あなた、幸せよ。次の花展は、これでお出しなさい」
と嬉しそうに、押し付けがましく、おっと、指が滑りました。ええ、大変ありがたいお言葉と共にご自身で制作された花器をくださるのですが、それがどうも私の趣味に合わず、(ここだけの話、夏休みの自由研究で作ったみたいな花器に見えてしまうんです)それを花展に出すなんてと、蕁麻疹が出るほどに昨年は悩みました。でもですね、弟子ですので、なんとかしなくてはと、リビングにその花器を置き、あれやこれやと頑張ったわけです。
さて、本日。またもや、先生が別の花器を教場に出されておりました。
――うそ、まじで? もう本当にやだー!
内心そう思いますが、絶対にそんなことは言えません。
「あなた、今年はこれをあげます。これもねぇ、だいぶお金も時間も使って作ったの。本当、こんな素晴らしい花器を使って花展に出せるだなんて」
「先生、本当、素敵ですね。本当にこんないいものを頂いてもよろしいのですか?」
「でも、そうねぇ、これ、材料費がとてもとてもかかってるから、この板の分だけお金をもらおうかしら。本当はもっともっとお金かけてるのよぉ。二千円でいいわ」
「……あ、ありがとうございます。生けるのが楽しみです」
私、二枚舌使えました。今日それに気づきました。あ、違うか、毎回この先生自作の花器の話のときは使えるのです。結構大人な対応ができるものだと、自分で自分を褒めてあげたいです。
はぁ。
私は自分の好みがはっきりしているので、結構、かなり、とっても、すごくすごく、みると蕁麻疹が出るくらいに! うん、そんなくらい素敵な花器がそのうち我が家に来るそうです。
もう今年の花展は、出れないな……。そうそう、子供が受験だしっ!
ここだけの、絶対内緒な、妄想の何にもない日記でした。
そんな本日は、もう直ぐ夕ご飯ですので、この辺で。
本日も、お読みいただき誠にありがとうございました。
********
そんなちっぽけなことで蕁麻疹とか言ってる平和な日常に感謝して。
考え方が違うもの同士が仲良くなるためには、相手の意見に従うのではなく、自分の中で折り合いをつけることなのかもしれません。
そんな簡単じゃないとは思うけど、みんなで仲良く世界中が手をつなげるような未来が早くやってきますように。
――黙祷
戦争のない世界を望んでいます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます