第161話 あえて題名のない今日は。
タイトルを決める前に書き始めた時は、全部書いた後にタイトルがちゃんとつけられているかを確認した方がいいと学んだ過去がある、本日。
まだタイトルは決めていません。もしも、タイトルが「第161話」とだけ書かれた妄想日記だとしたら、それはきっと少しほろ酔いの私が書いた深夜の日記です。
「まぁ、また?」と軽く受け流していただけると嬉しいです。おほほ。現在時刻、23時12分。あと一時間もしないうちに六月三日になります。
六月三日。一番ちゃんのお誕生日、そして、私がお母さんになった日です。
「ちょまっ! そんな大事な日の妄想日記をこんなノリで書いていいのか? ヘッドフォンはノリノリのダンスミュージックだし!?」
思わず自分でツッコミを入れたくなりますが、それもありよりのありでしょう。今年で一番ちゃんは十五歳になるので、十五年前の私は、今頃愛するパパさんの「痛いか?痛いのか?」の声かけに半ばキレながらも以前住んでいた賃貸マンションのベランダで真っ暗な田舎の畑を眺め、陣痛の痛みに耐えていたと思います。
「痛いか? 痛むんか?」
「うん、でも痛いと思うと痛いからさ、痛いって思わないようにしてるんだよね」
このくだりは少し前の妄想日記に書きましたが、まさしくそんな感じで腕時計を見ながら陣痛をこなしている私は、まだ一人目の出産間近の妊婦さんで、これからやってくる鼻からスイカが出るような痛みを想像できていなかったと思います。実際、鼻からスイカは出ません。物理的に。
だがしかーし! 鼻からスイカを出すくらいの痛みと言う表現はあながち間違ってはいない。私の出産した助産院のおばあちゃん先生は、陣痛にうううと呻き声を上げる私に言いました。
「この障子のさんが見えないくらい痛くなったら生まれるのが近いから」
『障子のさん』とは、よく意地悪なお姑さんが出てくるドラマで、うんと、そんなドラマは今は昔かもですが、そんな時代のドラマで、お姑さんが指ですぅっと撫でて、「あら、こんなところにホコリが」と言うところのことです。
「そんなところが見えなくなるまで痛くならないと生まれないのかー!」
リアルで叫んでしまった十五年前の私。隣で寝ている夫の横で、健気にお腹が痛くなる時間の感覚を測り、ぐいぐい押される腹部の痛みに耐え、障子のさんはまだ見えるけども、けども! これ以上は自宅にいては不安だと、夫を起こして、用意していた入院グッズを肩にかけ、助産院に向かいました。それが多分夜中の二時くらい。電話で状況を伝えると、助産院の先生は今か今かと寝ずに待っていてくれていました。
「さっき、一人産まれたから、ベッドは産んだらそのまんまになるけどいい?」
その助産院はおばあちゃん先生がやってる助産院で、入院の部屋が二部屋と診察や出産をするための診察室がひとつしかない助産院でした。
「全然いいです!もう家にこのままいたら怖い!」
このセリフだけ聞くと、いや読むと? もう今すぐにでも産まれそうな感じですが、実はそんなことはなく、生まれたのは六月三日のお昼前でした。
これは詳しくもかけるけれど、私と我が家の大事な家族の記憶なので、深くは書かないでおこうと思いました。とっておきの、宝物な時間なのです。
最近書きたいだけ物語を書いていて、そのどれもが愛しいです。短いものも、長いものも。その中には私が体験してきたことや、感じたことが混じっています。混じったものを書きたい自分がいるからです。でも、一番の宝物な時間や経験を私のありのままの妄想日記で書くのはどこかで線引きがあります。
家族だけの、宝物は胸の奥にとっておきたい。
だから、ニュースを見ると、苦しくなります。
誰かのそんな気持ちや時間や思い出を破壊することは、愛する人が死んでからもなお、心をえぐり続けるような気がしてしまいます。
あれれ、おかしいな、ダンスミュージックでノリノリで書くはずだったのに、なんだか涙が出てきてしまいました。
そんな、ありのままの私の今の気持ちを書いてしまった本日は、この辺で。
本日もお読みいただき、誠にありがとうございました。
*
自分ではない誰かが、なにを大事にして生きているかなんて、他人にはわからない。
でも、これだけはわかると私は思う。
「愛する人を失いたくない」
みんながそうじゃなくても、私はそうだ。
だから、どうか、そういう未来がいつかきて欲しいです。
自分にとっては知らない誰かでも、誰かにとっては大切な誰かかもしれないと思えば、いつか、戦争はなくなりませんか?
お花畑の思考回路と言われても、やはり私は、そう毎日思うのです。
お亡くなりになられた方々へ。
この世界の未来が平和でありますように。
――黙祷
私は、戦争のない世界を望んでいます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます