第119話 ハーフ&ハーフ満喫中!

 今日は土曜日。しかも朝からうちの子が誰もいないのに、剣道部の保護者当番だった。


「うちの子なんでいないんだー!」


 一番ちゃんはもう剣道は平日の部活だけで、中体連も出ないらしい。惜しいことをした。小学校の時はスポ少の大会で県内一番になったのに。あの輝かしい実績は、その記憶のまま、更新されることはない。あ、その方がいいのか、きっと。美しい記憶のまま、剣道に幕を下ろしたい、そういうことだと思っている。


 ちなみに二番ちゃんは、剣道部だったけれど、去年の市民大会で中一男子の部優勝を果たし(参加人数少ない)、地区大会まで行った、それを美しい思い出として残し、あっさり卓球部へ転部した。ただいま初心者なので、苦戦中だけれど、自分で自転車で部活に行くくらい楽しいそうなので、まぁあ、ありよりのありな選択だと思っている。


 そんなわけで、自分の子供が参加していなくても、剣道部保護者会の会長だし、自分の子供が参加していなくても、土曜日の当番はやってくるのである。なかなかめんどくさい……、ということはないと思いたいけど、うん、めんどくさい。しかも、年度が変わり、保護者会を開く準備をしたりしなくてはいけない。それもめんどくさいけれど、会長の私より、会計さんの方がやること満載で、大変そうだと思った。


 そんな朝からの用事を済ませ、すっかりゴミを出すことを忘れ、お昼ご飯を食べてからの、今度は塾の保護者会をオンラインで受けて、途中で寝落ちしてしまい、気付いたらもう五時だった、という本日。


 頭の中は、関川さんの企画している「ハーフ&ハーフ」で書いている恋愛小説の中にいる。主人公の涼子ちゃんを愛し合ってる真っ最中にほったらかして、どっかに消えてしまった関川君。せめて別れ話をして消えたのならまだいいけれど、失恋する時間を与えることもなく、ある日忽然と姿を消してしまうなんて、なんて酷い男なんだと、関川君を恨んでしまう。


「関川君、見つけたらただじゃおかねぇぞ!」


 そう言いながら書いているけれど、企画している関川二尋さんが毎週出してくれるお題の前半部分から連想して後半部分を決めて、それに合わせて前半部分も自分のテイストで書き換えるから、もうすっかり自分の内側に世界観が出来上がってしまって、なかなか関川君を登場させることができないのだ。


「かわいそうや、そんな愛し合って愛がいっぱいの真っ最中に突然消えるなんて、かわいそうな涼子ちゃんやぁ……ううう」


 昨日の夜あたりは、少しジンソーダでも飲んでいたためか、涙をポロポロこぼしながら、書いてしまった。そんな記憶、私の中にあっただろうか? 失恋自体があんまりない……、わけではないが、結構不真面目に恋愛して来た時期が長いので、純愛と言えば、今がまさに純愛なのだ。純愛夫婦。いい響きである。夫婦に純愛という言葉は使わないかも? え? ではそういう場合は何と言う? 夫婦愛?いいや違う。私たちはまさに純愛真っ最中。ただ、少し純愛のような夜の営みではなくハードなだけ。ん?


「失礼だな、純愛だよ」


 どっかの呪術な高校生のアニメ映画で見たセリフが脳内で聞こえてくるけれど、そんな純愛をしていた涼子ちゃんが、かわいそうで、かわいそうで。おいおい、昨日は泣きながら書いていた。


 はやく「関川君がどうなってしまったのか」とか、「何で目の前から消えたのか」とか、涼子ちゃんに教えてあげたい。何も知らないで苦しみ続けるなんてかわいそうすぎる! かわいそうすぎるんだけど、全十回お題が出るうちのまだ二回目。なんてこと! あと八話分も切ない思いをしなくてはいけないのか!?


「涼子、済まない。君の涙はまだ流れ落ちそうだ」


 頭の中は剣道へ行っても、家に帰って来ても、洗濯機を回しても、猫の続きのネタを探していても、何をしていても、関川君と涼子ちゃんの世界の中にいる。


「はうっ! ハッピーエンドにささっと持って行って、イチャラブだらけのお料理ストーリーにしちゃえばいいじゃん! もう!」


 でも私の頭の中の脳内再生君はそういうのは嫌だと申している。もっとねっとりしたいそうだ。


「かわいそうだよぉ涼子ちゃーん! ごめんね、私の脳内再生君のせいで、苦しめてごめんね、ごめんね、しくしく」


 そんな私は、きっと関川二尋さん主催の「ハーフ&ハーフ」を超満喫していると思う。今日はそんな日記です。


〈愛する人が、愛していたのに、愛されていると知っていたのに、ある日突然忽然と姿を消したら〉


 まさにそんな恋人たちが、あちらこちらでたくさん生まれてしまう、それが戦争だと思っている。そう思って、涼子ちゃんを書いてるのもあるから、胸が苦しくて、なかなか抜け出せないのかも知れない。そんな心情を苦しみを書きたいのだ。だからあっさり簡単に過ぎ去ることができないのだと、本当は自分でもわかっている。でも、せめて物語の中は、最後は幸せにしてあげたい。



 世界中の恋人たちが、自分たちの意思じゃない世界で別れることがないように。愛する人と引き裂かれることのない世界になりますように。


 そう思いながら、毎週金曜日に新しいお題が出るのが楽しみな私です。



 本日もお読みいただきまして、誠にありがとうございました。今日は土曜日、これから家族の時間です。




愛する家族と平和に暮らせる日々に感謝して。





――黙祷。



戦争のない平和な未来を子供たちに残したい。

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