第134話 こんなところに惑星の欠片

 惑星の欠片というのは、この星のいろいろなものが詰まった結晶なのではないか。

 そんな事を考えながら目的地に到着した。


『家ですな。それも、そこまで大きくない』


 その辺りはもともと、商店街だったようだ。

 ブロック状の量産型住宅が並んでいた形跡があって、大半は瓦礫だが一部だけが形を留めている。

 瓦礫になった住宅がカバーになって、劣化から守ってくれたりしたんだろうか。


 あ、これラーメン屋だ。

 ラーメンのレシピは難しいか……?

 まあいい。今は惑星の欠片だ。


「普通の家に惑星の欠片があるっていうのは不思議だな。どういうことだ」


『ピポピ!』


「こっちかー」


 タブレットを持ったポルポルに導かれて、一件の家の前に立つ。


「こういうのはドアベルを鳴らしたり、ノックをするもんなんだ」


「へえー。タマルの住んでたところの決まり?」


「そうそう」


 ポタルはハーピーだから、そういうの必要ないもんな。

 そもそも住まいに壁も天井も無いわけだし。


 俺は文明の力を見せる感じで、ドアをガンガンとノックした。

 粉々に粉砕されるドア。


「うわーっ、激しい決まりだねー!」


「ドアが劣化してただけで、ノックで粉砕することは普通ないからな!?」


 だが扉が開いてしまったものは仕方ない。

 中に踏み込んでいくと、なんか骨になった小さい死体があった。

 子どもかな。


 その手の先に、朽ちた小さなタブレットがある。


『ピピ!』


「おっ、そのタブレットの中に惑星の欠片があるのか! どれどれ」


 タブレットを取り上げる。

 骨がそれについてきたが、すぐにボロボロと崩れていった。


 哀れに思ったので、俺は骨を回収する。

 そしてベルを作ってみるのだ。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※小さい骨のベル

 素材:小さい骨


「子どもの骨かー。どれどれ」


 チリンチリーンと鳴らすと、俺の傍らに小さい影が出現した。

 おおっ、ミニサイズのスケルトンゴーレム!


「よし、お前を骨ボウズと名付ける……」


『カタカタ!』


 子どもスケルトンがかくかく頷いた。

 骨次郎たちに弟ができたな。


「ところで骨ボウズ、生前の記憶は? ない? あ、ちょっとあるの? これに入ってるのは……ほうほう」


 タブレットを起動するやり方を骨ボウズに教わった。

 何百年も経っているタブレットなのだが、外からの光を受けてちょっとだけ動き出す。

 光電池か。


 ぼんやりと灯った画面の中で、動画が流れている。

 ヘルズテーブルになる前の世界の様子だ。


 自然がある。

 海があり、山があり、浜辺があり、草原があり、森があり、湖があり、火山がある。


 人間たちがいる。

 都市があり、街があり、村があり、働いたり遊んだりする人間たちの姿。


 動物たちがいる。

 見たことのない、空と陸と海の生き物たち。


 そう言う情報がタブレットの中に収められていた。

 なるほど、こいつは惑星の欠片だ。


 この星に残された、最後の記憶みたいなもんなんだろう。

 だから、タブレットは特別なものになり、こうして残った。


『オー、タマルさんがしんみりしてまーす。サッドですかー』


「うむ。こいつにこの世界の過去が全部詰まっているんだと思うとな。なかなか来るものがある。それはそうとして、これは素材として使うね」


『オー!! ドラーイ!!』


 これによって、創造神プリンターを作ることが可能になったのである。

 戻ってくると、骨次郎が飛空艇を展開して待っていた。


『カタカタ?』


「新しい仲間だぞ。惑星の欠片を守っていた骨ボウズだ」


『カタカタ!』


『カタカター!』


 他の骨たちも飛び出してきて、後輩の加入を歓迎する。

 骨ボウズはちょっとびっくりしたようだったが、骨軍団のウェルカムな雰囲気に安心したのか、パタパタと走って彼らの中に加わった。


『ウグワーッ! 星に残された古代人の魂を救いました! 200ptゲット!』


 骨ボウズ的には、何百年ぶりに人間……であったものに会えたということになるのだろうな。

 あっ、骨ボウズが骨三郎キャノンに驚愕している。


 何だ、俺を振り返って何を物欲しそうな仕草をするのだ骨ボウズ。

 キャノンを付けて欲しい?

 いきなり進化系になるのはまだ早い。骨として精進して欲しい。


『カタカター!』


 骨次郎が飛空艇を発進させた。

 空中で、タブレット端末を使ってある文句を検索する。


『軌道エレベーター建設場所』


 すると、地図がグーンとピンチアウトし、砂漠からヘルズテーブルまでをカバーする地図になった。

 おお、このもりもり盛り上がっているところがデッドランドマウンテンだな?


 なにっ、デッドランドマウンテンが、ちょうど世界のへそに当たるのか!

 これはラグランジュポイントと呼ばれるところで、惑星の自転の影響が少ないところ……だった気がする。(実際は赤道直下と言うんだぞ)

 ここに軌道エレベーターを建設すればよい。


「待てよ……。軌道エレベーター建設には人数が必要だが、眷属は砂漠を離れられない」


『そうですな。邪神たちにやってもらいますかな』


「バイト邪神だけだと数が足りないんだよ。環境保護団体……というか環境保護艦隊が攻めてくるのがいつか分からないだろ」


『確かにですなあ。なんとなからぬものか……』


『フーム! 砂漠をエキスパンドできればポッシブルですねー』


「砂漠を……拡張する……!? それだ!」


 俺は飛空艇を、タマル村に急行させた。

 そしてヌキチータに直談判する。


「砂漠の道を作ってくれ!!」


『さ、砂漠の道なんだなもし!? ははーん、僕もタマルさんの考えていることがわかったんだなもし! 任せるんだなもしー!!』


 ということで、作業開始。

 ヌキチータが一晩でやってくれました……!!


『ぼ、僕は流石にクタクタなんだなもし~。寝るんだなもし~』


「お疲れ!」


 そしてここからが重要だ。

 砂漠地帯からデッドランドマウンテンまで、砂漠の道を引いていくのだ!


▶DIYレシピ

 小さい骨のベル


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