第125話 華麗なる侵略
砂漠をスローライフ化する計画は、大いに加速した。
具体的には二倍くらいの勢いである。
オアシスによる緑化スローライフ、そして砂漠の食材によるグルメスローライフ。
二方面作戦というわけだ。
タマル一味に加わった強力なメンバー、シェフ。
この男の料理が凄い。
フレンチとかをフライパンと万能変形包丁で作り上げ、しかも俺の能力を、DIYお料理レシピに限り使用することが可能なのである。
「シェフはなかなか凄いやつだな」
『アイヤー! その代わりワターシはアイテムボックスが使えないヨー!』
「仲間に許されてるリソースは有限なんだな」
『オー! ミーはDIYできませんが、ミスターシェフはクッキングがポッシブルなんですねー! ミスターシェフがデリシャスをメイクしている間、タマルさんはフリーですねー!』
「ああ。俺が開拓に専念できるということだ!」
あの後、一回だけキナッコーの眷属みたいなのが攻めてきた。
そして飯を食わせて懐柔した。
「えー、では皆さん! 昨日トウテツが来たので、全てのポイントを植物の種に変えました! ということでね、これを植えてじょうろで水をやっていこうと思います!」
ウオーっと返答する、食事で寝返ったキナッコーの眷属たち。
キナッコーの下にいても、次々異世界を侵略させられるばかりで安寧の時間が訪れないらしい。
しかも、食事は保存食ばかりとか。
辛かろう。
ということで、飯を食わせて働いてもらっているのだ。
ちなみにこいつらはこいつらで、砂漠を出ると消滅するらしい。
地獄じゃないですか?
『いやー、それでも自分たち、
「そうかそうか……! では俺は最後までお前たちに美味しいご飯と穏やかな時間を約束しよう!」
眷属たちと固い握手を交わすのである。
花を植え、水をやり、飯を食い、夜になったら寝る。
「タマルタマル……」
「アッハイ!」
いそいそとポタルと一緒に愛の巣へ。
そして朝。
柵に突撃した結果、頭を打って事切れている怪物たちがずらり。
『アイヤー! 食材いぱいだよー!』
「シェフ、そいつらはキナッコーの手下の怪物たちでは?」
『フレンチはなんでも食べられるようにするよー』
「そうだっけ……? というか、異世界だし宇宙から降りてきた邪神なのにフレンチ……?」
『タマル様が今更な疑問を抱かれましたな。まあまあ色々なものが混じっているので気にしても始まりませんぞ。我はタマル様と出会ってから三日目くらいで考えるのをやめましたからな』
「凄く序盤じゃない?」
だがラムザーの言うことももっともである。
一々細かいことにこだわっていては進まない。
そしてDIYお料理レシピは、一旦俺が手に取らねば発生しないのだ。
『アチョー!!』
怪鳥音とともに包丁を振り回すシェフ。
やはり中華なのでは……!?
『フレンチ風に食材を分けてみたよー』
あくまでフレンチと言い張るか。
だが見事な切り口で、怪物たちは解体されている。
「どれどれ」
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYお料理レシピ
※砂漠焼きそば
素材:サンドワーム+サボテンモンスター
サンドワームが焼きそばに!?
※砂漠サラダ
素材:サボテンモンスター+キラースコーピオン
こっちはスコーピオンの素揚げがサクサクと楽しい、鮮やかな色合いのサラダになった。
※砂漠バーベキュー
素材:サンドバジリスク+サボテンモンスター
バジリスクの肉の串焼きである。
これを見ると、サボテンモンスターが色々な料理に関わっている。
どうやらヤツは、その身に甘味と酸味と辛味を有しているようなのだ。
「サボテンモンスターは捕まえて養殖したくなってきたな」
『サボテン牧場でーす! ミーがマネジメントしたいですねー』
フランクリンに意外な野望が。
「よーし、じゃあオアシスを広げながら、サボテンモンスターを捕獲して牧場作るか。ここにそれ用の柵がある」
『オーケー! ヒアウィゴー! ミーに続くでーす!』
フランクリンがキナッコーの眷属を従えながら突き進んでいった。
なんと無防備な前進か。
『アーウチ!』
「ほらー! やっぱり何か出てたきた!」
フランクリンも歩けばアクシデント・イズ・ハプン。
砂の中からもりもりと何か出てきて、眷属やら何かが襲われている。
『オー、よくシンクしたら、ミーはモンスターをハントできるスキルがありませんでしたねー! HAHAHAHAHA!』
「ははははは、こやつめー!」
俺は全速力で追いついて、眷属たちを襲っている何者かをゲットする。
ピョインッ!と音がして、見てもいないのに捕獲したぞ。
アイコンには……。
ほうほう、スーパーアントライオン……蟻地獄か。
そしてゲットした蟻地獄の跡には、すり鉢状の床が残されている。
硬い。
というか、ここが砂漠世界の底か。
つまりここまで掘り進めば、世界の下限に到着する。
深さは大体10mくらいかな。
その辺りを調べた後、上に登ることにした。
とは言っても砂を掘り進んで上がるのは不可能である。
「カモン、ポルポル!」
『ピピー!』
ピューンとポルポルが飛んできた。
さて、ここを舗装し、煉瓦の地面を設置する。
蟻地獄に豪華な煉瓦のスロープが誕生だ。
意気揚々と上がってきたら、植樹とか種まきがすぐそこまでやって来ているところだった。
順調順調。
そして水やりを続けることで、植物は勝手に増えるのだ。
なにせこいつら、特定外来種な植物だからね!
「しかし、キナッコーの攻撃が散発的だな。もっと徹底的に攻めてくると思っていたが」
『ピピピ! ポポー!』
「なにっ、あちこちで柵に攻撃を仕掛けてる? ああそうか。オアシスをめちゃくちゃに広げていっているから、あっちが攻撃しなきゃいけない対象がアホみたいに増えてるんだな」
しかも、植物たちはたまにじょうろで水やりに行くと増える。
「既に俺たちは飽和攻撃を仕掛けていたということだな」
『仲間になった眷属たちも総動員して、四方八方にオアシスを広げてますぞ。そろそろタマル様が川を伸ばす頃合いですな』
「よしよし、砂漠を希少な地形に変えてやろうぜ」
砂漠が2,オアシスが8だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます