第119話 サンドワームを寄付しに来ました!
『サ、サンドワームが一撃で!』
『もうだめだーっ』
眷属たちが、慌てて逃げ出した。
猛烈な勢いで砂に潜っていくぞ。
後ろから追いかける俺が、「逃げるなーっ。逃げるな卑怯者ーっ」とか言いながらピョインピョインと半分までゲットしたが、残り半分には逃げられてしまったな。
『鬼気迫る勢いで追いかけましたなタマル様。顔にポイント欲しいと書いてありましたぞ!』
「その割には声に気合が入ってなかったよねー」
「そりゃあほら、戦意を喪失した相手を追いかけるのなんかそれっぽいこと言って脅かすだけでいいだろ」
『オー! オミッションなインテミデイションでーす!』
「えっ、なんて?」
『手抜きな脅迫だと言ったのでーす』
「なるほど、勉強になるなあ」
そんなわけで、砂の魔王キナッコーの第一陣は撃破だ。
ゴッドモジュールで一旦村に戻り、売ったり寄付したりするぞ。
『ファーーーーーー!! サンドワーム! この惑星に存在しないはずの生命体! 魔王の眷属! 素晴らしい!』
異形博物館にて、館長大喜びである。
フクロウヘッドがニッコニコ。
テンションが恐ろしく高い。
『お兄様、このニョロニョロがそんなにいいのですか?』
『ええ。素晴らしいものなのです。まず、この星に存在しませんから、通常では手に入らない種だと言えます。それだけではありません。これは魔王キナッコーによる品種改良が施され、眷属となった種なのです。つまり、あの砂漠でしか手に入りません! 貴重な生態系! しかし、あれは侵略してくる生態系です。タマルさんによって征服されてしまうことになるでしょう。なので、消滅する前にこうして寄付していただけたことがとてもありがたい』
「館長がめちゃくちゃ喋ってる」
『本当に嬉しかったんですねお兄様』
『ああ、これはお礼のレシピです。他にサンドワームを捕まえられれば、馬車の車輪が無限軌道になりますよ』
「おおっ、砂上を突っ走るのにちょうど良さそうじゃないか」
▶DIYレシピ
※キャタピラ
素材:サンドワーム素材×4
サンドワームはどうやら、全体が均質なものでできているらしい。
本体からかなりの数の素材がはぎ取れるようだ。
よし、もう一匹捕まえに行くか!
「魔王の眷属ですか。なかなかレアリティ高いですね。一体400ptで引き取りまあす」
「まあす」
「いいじゃんいいじゃん!」
15体捕まえたので、6000ptになった。
こりゃあ嬉しい。
使い道は後で考えよう……。
しかしこの間の王子様ルックはびっくりしたな。
俺の変身姿に、ギリースーツ以外の選択肢が生まれてしまった。
「ところで新商品がありまあす」
「まあす」
「なになに?」
「柵セットでえす」
「買ったあ!!」
……ということで。
「それでポイント全部柵にしちゃったの?」
「はい」
「でも、ツケにしなかったのは偉い。許す」
「ありがたき幸せ……」
『タマル様がポタルの尻に敷かれてますな』
『あれはいちゃついてんのよ』
『オー、ベリーホットですねー!』
『ピピ! ピピピ!』
「おー、俺を冷やかす連中の中で唯一真面目なポルポル、どうしたんだ。何を聞きたいんだ? 何? この柵で何をするのかって?」
『ピッピピッピピピ』
「これを……こうだ!」
『ピピ!』
柵が砂漠に突き立つ!
一本だけ地面に刺さった杭に、板が二枚貼り付けられているように見える。
「これを隣に刺すと、こう!」
なんと、もう一本の杭を突き立てたら、板と板が繋がったのである。
「大きくなった! 何これ、何これ!?」
「ふっふっふ、ポタルさん、俺が無駄使いしただけではないことがこれでお分かりいただけただろうか。こうやって、こう! こうやって、こう! こうやって、こう!」
カッツンカッツンと柵を建てていく。
めちゃくちゃ広がって、広大な敷地を囲い込むことができた。
ここで、天地創造ルックに変身である。
花畑をバリバリと造成していく。
柵の周囲を花畑にし……。
さらに、内側にはトウテツから買っておいた花の種をばらまく。
そこにジョウロだ!
『おおっ、タマル様がてきぱき動いてますな。我に手伝えることはありますかな?』
「マッサージ椅子持ってきて。全身労働でバキバキになりそう」
『了解ですぞー』
ラムザーがゴッドモジュールを使って、村に戻る。
そしてすぐに帰ってきた。
『あーれー』
「マッサージチェアにハイドラさん乗ってるじゃん」
『ちょうどマッサージされて溶けてたので一緒に持ってきましたぞ』
「この人俺たちのオペレーターなんだから連れてきたらダメでしょ」
ということで、ポタルとキャロルがハイドラを送っていったのだった。
『ずっと村にいても退屈だと思ったので連れてきたのですがな!』
『ミーたちは特殊な訓練を受けているのでノーブロブレムですが、素人のゴッドを連れてきたらリスキーですねー』
「俺たち人系がよくて神が危険ってこれもう分かんねえな」
『ま、そういう適当な感じが我らの旅っぽいですな』
「そうかもなあ」
『さあさあタマル様はマッサージチェアで溶けてて下され! 後は我とフランクリンがやりますぞー』
『オーケー! ミーにイントラストでーす!』
「今のはわかったぞ。任せろって言ったな」
『イエース!』
こうして俺はお言葉に甘え、マッサージチェアに揉みほぐされながら、砂漠に生まれゆく花畑を眺めるのだった。
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