第103話 迷宮攻略RTA

 赤き湿原まで舞い戻った俺たち。

 即座に城の地下の迷宮に挑戦……となるのだが、創造神にショートカットを聞いていたので横合いの壁をガツンと殴る。


 物凄い衝撃を与えないといけないそうなので……。


「みんなでハンドドリルで掘ろうぜ」


『コツコツ行きますか』


『ピピー』


 そういうことになった。

 三十分ほどゴリゴリ掘っていたら、壁が抜けた。

 その先に階段がある。


「隠し扉だな。ここが開くということを知らない奴は、三十分も掘り続けられないだろうからかなり完璧な隠し扉だ」


『オー! ハンドレールまでついてまーす! ユーザーフレンドリーなダンジョンでーす!』


「そりゃあ創造神が出入りするためのものだからな。自分に都合がいいように作るだろう。階段まで一段一段が広くて、踏み外しにくいようになってるし……」


「柔らかいよこれ! 転んでも大丈夫だね」


「すげえ! 迷宮はスパルタなのに裏道は過保護レベルだ!」


『途中に休憩所あるわよ。ふかふかの椅子と灯りと暇つぶし用の本棚があるわ……』


「もう家じゃん」


 創造神の人となりがよく分かってしまう。

 妥協なく迷宮を作りながら、管理する者の利便性も妥協せずに追い求めたのだろう。


 まさか魔人侯や兄弟神たちも、足元にこんなものがあるとは思ってもいなかったに違いない。

 だが創造神、頭上とかに魔人侯がいるシチュエーションが怖くて仕方なかったので、この快適な迷宮の舞台裏を捨てて外に出たのである。

 外は外でめちゃくちゃ危険だろうに。


 とりあえず俺たちは、迷宮舞台裏のアクティビティをフル活用しながら進むことにした。

 ソファがあれば座り。

 本があれば読み。

 ベッドがあれば寝転ぶ。


 険しい道程であった。

 まる一日掛かった。


『いやあ、住みたいくらいですなここ。食べ物がないのだけが残念ですぞ』


「さすがに食べ物は腐っちゃうもんな。しかし、死と隣り合わせの迷宮も一皮剥けばこんな生ぬるい世界なのかもしれん」


『オー! 普通はリバースでーす!』


 俺たちは、何の苦労もなく、むしろアクティビティを楽しんでツヤツヤした状態で最下層まで来たぞ。

 しかも、ガーディアンを停止させる合言葉まであった。


 赤き湿原の迷宮のガーディアンは、なんか全身に苔や泥をまとわりつかせた、骨の肉食恐竜みたいなやつである。


「えーと、創造神の名において命ずる! 余は兄弟神じゃないし魔人侯じゃないので止まれえ!」


 ガーディアンはゴゴゴゴゴっ唸って止まった。

 なんて必死な感じの合言葉なんだ。

 余裕とか趣とか一切ないな! 実に創造神らしい。


 ガーディアンはゴゴゴゴゴっと唸って動き出した。


『もがーっ!!』


「うわーっ! 合言葉全然効いてねえぞー!!」


『これはあれですな? ガーディアンを造った時、命令が上手く効かなくなったからこの迷宮を放棄したやつではないですかな?』


『ダディはラストの詰めがスウィートっぽいですからねーHAHAHAHAHA』


「笑い事じゃねえぞフランクリン」


「あっ、ポルポルが行ったー!」


『ピピー』


 対衝ブロック塀を装着し、ドローンと合体したパーフェクトポルポルが飛ぶ!

 そしてガーディアンにペチられて、ボイーンと跳ねていった。

 対衝ブロック塀とポルポルの頑丈さで、無傷である。


 ボイーンと反射しながら、バキューンバキューンとガーディアンを撃っている。


『も、もがーっ!!』


 自分で跳ね飛ばしたくせに、反射しまくるポルポルに対応できず、ガーディアンが戸惑っているぞ。


「チャンスだ! みんな突撃ー!」


『わっはっは! 最後はこのやけくそになる辺り好きですぞー!』


『ミーのアタックを見せてやりまーす!』


 対衝ブロック塀で武装したラムザーとフランクリンが盾になり、俺は壺のおっさんを呼び出して彼の後ろ側に乗り込む。


「ゴー!」


 ピッケルで地面を突いて飛翔する壺のおっさん。

 そろそろおっさんの制御に慣れてきたので、自在に飛び回れるぞ。


 壁をピッケルでコツン。

 天井をコツン。

 ガーディアンの背骨をコツン。


 この三回の接触で、あっという間にガーディアンの頭上だ。


『もがーっ!?』


「ポルポルとラムザーたちに気を取られていたな! わはははは! 本命は俺だあ!」


 虫取り網を叩きつける。

 ピョインッ!と音がして、ガーディアンがアイコンになった。


『ウグワーッ! 最後のガーディアンを撃破しました! 6000ptゲットです!』


「なにっ、最後とな!?」


『タマル様ー。迷宮核もぶっこ抜きましたぞー』


『ウグワーッ! 最後の迷宮核を手に入れました! 6000ptゲットです!』


「最後だと!? それはそうとポイント美味しすぎるな。ちょっとこれ、豪遊できちゃうでしょ」


 地上に降りた俺の頭の中は、もうこの大量のポイントをどう使うかでいっぱいだった。


『ねえねえ、なんか最後のとか言ってなかった? これが五つ目なんでしょ? おかしくない?』


「キャロルがちゃんと聞いてた!」


『食べ物がないところでは、あたしもたまに仕事するわよ。あれなんじゃないの? 羅刹侯爵とか言うのが始まりの迷宮を突破しちゃったんじゃない?』


「あ、それかあー!」


 これはなかなかの一大事。

 魔人侯が創造神の力を手に入れてしまったのである。


「よし、じゃあまた村に帰って、これからの対策を考えよう。それはそうとめちゃくちゃポイントが入ったから、みんなで使い道考えようぜ!!」


 俺の宣言に、歓声をあげる仲間たちなのだった。



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