第27話 生まれろ潜水艇!

 二人分の斧を作ったのである。

 木材に鉱石を合わせると、斧になった。


 これを持って、三人で岩壁へ。


「それじゃあ、掘りまーす! 鉱石たくさん必要だから、斧がぶっ壊れるまで行くぞー!」


「おー!」


『お任せあれー!』


 いつものサンバを流しつつ、陽気な気分で岩壁をぶっ叩くのである。

 ピョコンッ、ピョコンッ、と飛び出してくる鉱石群。

 それらが山になり積み上がる。


 斧もそれぞれ一回ずつぶっ壊れた。


 そして、見慣れない鉱石も飛び出して来た。

 チロリロリンッと音がして、キラキラ光る金色のカタマリが出てきたのである。


「こ、これは金鉱石!!」


「きれいー」


『馬車に飾っておきましょうぞ』


 俺たちが騒いでいたら、ちょっと遅れて解説の声が響き渡った。


『オリハルコン鉱石をゲット!』


 オリ……ハルコン……?

 ええ……金じゃないのぉ……?


 スーッとテンションが下がったので、俺はオリハルコンをポタルにあげた。


「くれるの? ありがとー! キラキラ光るもの好きー。こういうのくれるタマルも好きー」


「えっ、好き!?」


 ブワーッとテンションが上がったので、俺は斧を振るってガンガン鉱石を掘り出していく。


『タマル様は分かりやすくていいですなあ』


「何を言うんだ。分かりやすい方が自分をコントロールできていいんだぞ! まあ俺はコントロールしすぎて過労死したんだが」


 しかし転生後のこの体、疲労はすぐ取れるし、無茶な動きにも対応できる体の柔らかさがあるし、凝りとは無縁だし……。

 健康チートとでも言うべき作りをしている。

 これはめちゃくちゃありがたいな。


『たくさん集まりましたぞタマル様! こんなもんでどうですか!』


 鉱石の山ができている!


「つかれたあ」


 ポタルが山の上でしんなりしていた。


「ひえひえしてて気持ちいいー」


「ポタル降りてきなさーい。これからDIYに使うから」


「まだ仕事するの? タマルって本当にずっと元気よねえ」


 スローライフをするためには、動ける時に動き続ける体力が必須だからな!

 俺はDIY作業台を用意すると、キングバラクーダの巨大な骨格をその上に。

 鉱石の山を傍らに。手前に浮遊石を置いた。


「行くぞ! 生まれろ潜水艇!」


 トンカントンカンと作業が始まる。


『作業が始まったらキングバラクーダの骨と鉱石の山が消えましたぞ!』


「いつも見てるけど、ほんと魔法みたいだよねえ。あれがタマルの魔法なのかなあ」


「自分で作らないと、確かにDIYは魔法に見えるかもな」


 俺は朗らかに笑いつつ、作業を完成させた。

 アイテムボックスに、潜水艇が存在している。


 斧を一本作るのも、潜水艇を一艘作るのも全く同じ時間だったな。

 なんとゲーム的な。


『ウグワーッ! 潜水艇が誕生しました! 1000ptゲット!』


「どーれ」


 潜水艇を取り出してみる。

 ちょうど傍らは海だ。

 ぽいっと放り投げる要領で……。


 バシャーンッ!と大きく水しぶきが上がった。

 そこに出現したのは、大きさにして全長40m、幅5mの潜水艇である。

 円筒形と言うか、細長い弾丸みたいな形をしている。


『ふおおおおお』


「ほわああああ」


 驚愕に不思議な声をあげる二人をよそに、俺は潜水艇の尻側についていた大きな扉を開く。


「ここから馬車が入れられるみたいだ。行くぞ!」


『カタカタカター』


 ホネノサンダーとホネノライジングは物分りがよい。

 すぐにトットコと馬車を引いてきて、一緒に潜水艇へと乗り込んだのである。


『カタカタカタ?』


「奥に操舵室がある? え? 部屋で分かれてない? トイレだけ分かれてる? なんだその変な構造は」


 骨次郎から報告を受けて、俺も乗り込むのだ。

 慌てて、ラムザーとポタルも乗ってきた。

 後ろの扉が、ひとりでに閉まる。


「おほー、だだっ広い空間!」


 そこはまさに、だだっ広い空間だった。

 その一角に2m四方くらいのスペースがあるんだが、多分これがトイレだな。

 かなりのスペース取ってるじゃないの……。


 周囲にはたくさんの窓がある。

 空は曇っているが、まあまあ外の光が入ってくるので艇内は明るい。


 船自体の光源は……これか。

 操舵室らしき場所に立ち、操作盤の電球スイッチを押す。

 すると、天井で裸電球が灯った。


 裸電球!!

 クリーム色の明かりが幾つか灯ったが、なんだろう、このノスタルジー感は。


『カタカタ』


「あ、骨次郎馬車を固定してくれるのか。ありがとう」


 潜水艇の床に馬車を固定し、これで出港準備は万端だ。


『タマル様、忘れていますぞ!』


「なにっ、何を忘れていると言うんだ」


『これだけ広いのなら……ほら』


「ああ!!」


 ラムザーの指摘にハッとする。

 俺は船内に、システムキッチンと五右衛門風呂と、お洒落な衣装ケースとふわふわベッドを設置した。

 完璧だ……。


 広大な空間が、俺のセンスによってお洒落な生活空間に生まれ変わったのである。

 お洒落な……生活空間……。

 じっと五右衛門風呂を見る。


 まあいいか。

 俺は考えるのをやめるぞ!


 操舵室に向かう俺。

 室とは言っても、そのまんま空間がつながっており、扉も壁も何もない。


 そこには地面から生えた舵輪みたいなものと、足踏み用のペダルがあった。

 このペダルを踏むと……。

 潜水艇後部から、ブルルルルンッと音が聞こえた。


 スクリューが回り始めたのかな?

 その勢いで、潜水艇が水の中に進み始める。


「よーし、出航だ! 目指すは海底神殿! 海の素材を獲得する旅だぞ!」


『まさか水の中に行けるとは! 怖さ半分、楽しみ半分ですなあ』


「神殿つくまで暇? そっかー。じゃあ私、お風呂入ってようっと」


 ぽいぽいっと脱ぎ捨てられたポタルの服が、操舵する俺の頭に引っかかった。

 えっ、この一切遮るものがない空間で脱いで入浴に!?


 いつも見ている気がするが、何度見てもいいものはいいのである。

 俺は操舵しながら振り返った。

 うーん、寿命が伸びる……。


『タマル様! 前! 前ー!! いきなり水中の怪物が迫ってますから! 前を見てー!!』


 ラムザーの悲鳴が響き渡るのだった。


▶UGWポイント

 1940pt


 獲得アイテム

 潜水艇キングタマル号

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