第17話 地底のサンバ。今明かされるヘルズテーブルの謎!

 道中、岩に擬態していた昆虫みたいなモンスターがいた。

 スポットライトでカーッと照らしてやると、『ギエーッ』とか叫びながら落っこちてきてじたばたするので、すかさず虫網でゲットするのである。


 そしてちょこちょこ魔人商店に行って換金する。

 ぶっちゃけ、エーテルバスターキャノンが買えるくらいのポイントが溜まった。


「……ここでポイントを全部使ってエーテルバスターキャノンを買ってもいい……。買ってもいいが、これまで貯めてきたポイントがゼロになってしまうのは悲しい」


「お気持ちわかりまあす」

「まあす」


「なのでワンステップ入れる意味で、こちらなどどうでしょう?」

「どうでしょうー」


「こ、これは……!!」


 というわけで。

 双子の店員に勧められて、俺はあるものを買って戻ってきたのである。


「何を買ってきたの? ベル?」


「うむ。なんか高級なベルらしい。強そうな怪物が出てきたら鳴らしてみよう」


『カタカタ』


「えっ、さっきからずっとでっかい怪物がこっちを追いかけてるって? サンバのリズムで撃退したやつか。どうやらサンバとスポットライトが怖いと見えるな」


 いつまでも襲ってこないもんな。


『どーれどれ。あひゃー』


 ラムザーが後方にライトを当てて確認して、びっくりして戻ってきた。


『あれはでかいですぞ。サンバが無かったら即死でしたな』


「わっはっは。陽気なリズムの威力は強大な怪物も怯むのだ。また踊るか」


「いいわね! 私この音楽好き! いえーい!」


「異世界にもイエーイってあるのか!!」


 カルチャーショックを受けながら、ポタルとノリノリでサンバする俺。

 何か足りないことに思い至る。


 その瞬間である。


『新しいレシピが生まれました!』


▶DIYレシピ

 ※マラカス

  素材:木の枝+骨+小石


「うおおおお」


 俺は雄叫びを上げながら、作業テーブル化しているプレートアーマーの上でガンガン物作りをする。

 誕生、マラカス!!

 こいつを両手に持って、シャカシャカ音を立ててみた。


 こ、これはいいぞ!!


「なにそれ!? 私にもちょうだい!」


「使え使え!」


「いえーい!」


「うおー!」


 ラムザーは俺たちの踊るさまを見て、これが若さか……みたいな顔をしていた。

 単純にこの男、踊り疲れているだけである。


 馬車がさらに騒がしくなったので、追ってくる巨大な怪物がちょっと離れたらしい。

 光るのとかうるさいのとか本当に苦手なんだな。

 なのに俺たちを追ってくるということは、迷宮の守護者とかそういうものなのかも知れない。


 やがて俺たちは、迷宮の最奥にたどり着いた。

 歌って踊って、踊り疲れたら馬車の中でお風呂に入ったりしていたのである。

 今まで、これほどまでに道中をエンジョイされた迷宮があっただろうか? いやない。


 目の前に広がっていたのは、隕石でも落ちたのかというようなクレーターっぽい光景なのだ。

 石筍が巨大な円を描いて生えており、その中心に真っ白な石碑がある。

 そして石碑の真ん中に、光るものがはまっていた。


『あれが迷宮核でしょう。あれが怪物を召喚し、この迷宮を守らせているのです。そして石碑にはこの世界の秘密の一端が刻まれているに違いありませんぞ』


「ラムザー凄いな、よく分かるな」


『さっきタマル様がまとめてくれた石碑の内容から、なんとなく予想した感じですぞ』


「そうなのか! まとめた俺凄いな!」


「ねえねえ、お腹すいたー」


 踊り疲れ、風呂に入ってマッタリモードになったポタルに袖を引っ張られつつ、馬車を降りて石碑に近づく。

 うわー、背中にポタルが乗ってきた。

 ハーピーは大きい鳥みたいな感じで、器用に背中に止まるのだ。


『なぜ体の大きい我のところには来ないのですかな?』


「ははっ、男の魅力というやつだよ君ぃ」


「ラムザー鎧着てるし筋肉でガッチガチだから硬そうなんだもん」


「お、俺が運動不足でプニプニだとう!?」


 ポタルの言葉の裏を読んでショックを受けつつ、石碑をさらっと読むのだ。


『古に神々の争いあり。神は兄弟神によって討たれ、倒れたその身を大地とした。これこそがヘルズテーブルの始まりである……』


「よくある感じの創世神話だ。よし、長いからまとめるぞ」


『来ましたな、タマル様のまとめ』


「分かりやすいから好き!」


「えっ、好き!?」


 言葉尻を捉えて勘違いしてしまうぞ!

 それはそうと、まとめるとこうだ。


・神様は死んでその体がヘルズテーブルになった。

・神様は兄弟神をめっちゃ憎んでいるので、彼らを打倒するヒントを各地の迷宮に残すよ。

・迷宮には兄弟神とその尖兵である魔人候は入れないよ。

・兄弟神は魔人候に自分たちの象徴たる武器を与えているよ。

・魔人候を倒して武器を手に入れると、対応する兄弟神は大きく力を失うよ。

・魔人候の武器を集めていくと、ヘルズテーブルを狙う神々が力を失っていき、集めた者がヘルズテーブルの王になれるよ。

・なので武器は大切にね!


 まとめを読み終わった後、俺たちは無言で馬車の中を振り返った。

 そこには、流血男爵の大剣で作られた五右衛門風呂がある。


「もう風呂にしてしまっているな」


「いいお湯だったよね……」


『だから言ったではないですかー。いいお湯でしたが』


 まあ、やってしまったものはしょうがない!

 開き直る俺である。

 そしてそんな俺に襲いかかってくる、迷宮の守護者たる巨大な怪物!


 もう、でかすぎて全貌が見えない。


『もがー!!』とか叫んでいるのしか分からない。


 俺たちを囲むように振り下ろされた、毛むくじゃらの足が八本。

 蜘蛛かな?

 超でかい蜘蛛かな?


「これは、虫取り網がようやく本来の虫を捕獲できるようになるのではないか」


「道中も虫いたでしょー」


「あ、そうだっけ」


 それでも、これほどのサイズの虫(蜘蛛は正確には虫ではない)が虫取り網でいけるのか?

 やれんのか?


 いや、やるしかあるまい、なのだ。


▶DIYレシピ

 マラカス


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