第27話とらと次郎
うどん一人前を二つに分ける手もあるが量が足りない。
だからっと言って天ぷらを増やし過ぎると今度はくどくなってしまう。
天ぷらは程々が美味しい。
メニューを少し変更してもいいのならあれが出来なくはないけど…。
「もし、俺とこれから来るもう一人の舌を満足させられたら、この店に饂飩粉を卸してもいい。勿論払い忘れた代金もいらない。」
どうやらりゅうさんが支払った分じゃ足りなかったみたいだ。
うどんを店に出せるようになったら今後儲かるだろう。
しかも、この時代大きな店でなければ卸してくれないのでありがたい話だ。
「もし、満足してもらえなかったら…?」
そう、一番の問題はそこだ。
美味い話には裏があるとよく言うので用心しなければならない。
よしさんにだけは迷惑かけたくはない。
「そうだな。…俺の…嫁になるっていうのはどうだ。」
こちらの反応を見るのを楽しんでいるように見える。
俺の嫁ってこんな事言う人本当にいるだ。
この店とよしさんに迷惑にならないんだったらやるしかないよね。
「わかりました。ですが、材料が少し足りないので少し変更してもいいですか?」
「俺を満足させられるならかまわない。」
この人さっきから変な威圧感を感じる。
口は笑ってるけど目が笑ってない。
買い物してる時は普通…ではなかったけどこんな雰囲気ではなかった。
「あっいたいた。しん…じゃなくて、えーっと…虎…?」
「やっと来たか、次郎。」
この人と一緒にいた口が悪い店員さんだ。
名前は次郎って言うんだ。
「とにかく腹が減った。飯にしましょうよ。」
「今頼んだところだ。よろしく。」
二人に一礼して台所に向かった。
小さめの丼を二つ用意して、一人前のうどんを二つに分けて入れる。
今回は卵黄をうどんの真ん中に落として、刻んだネギも散らす。
冷やしたつゆも付ける。
これでミニうどんが完成。
次は天丼を作っていく。
最初は天丼のたれを作るのだが、私的に甘じょっぱいたれが好きなのでそれを作る。
というか天丼は甘いたれしか想像できない。
うどんで使ったつゆと時次さんから頂いた蜂蜜を少し入れ、お酢もほんの少しだけ入れて鍋で温め水分を飛ばし少しとろみがついたら出来上がり。
丼に玄米をよそい、その上から特製のたれをかける。
このたれだけでご飯をおかわりできそうだ。
そのご飯の上に天ぷらを色合いを見ながら飾っていく。
料理においては見た目も大事だからね。
天ぷらの上からまた特製たれをかけるのだが…。
この時のポイントは多めに特製たれをかけること。
普通ぐらいのかけ具合だと天ぷらに余りたれが染みておらず、何か物足りなさを感じてしまうのだ。
天丼のたれは少ないよりかは多ければ多いほどが天ぷらの衣にたれが染みて美味しいのだ。
これで、ミニうどんと天丼セットの出来上がり。
ふーっと深呼吸し大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら料理を運んだ。
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