第41話 試していいですかね!?

「グリフォンは私が受け持つわッ! シャーリー達は街を守ってッ! 他は地上の魔物を掃討よッ!」


「「「了解ッ!」」」


 と言ったものの……魔物多すぎね?


 僕とシャーリーさん、師匠、エレノアさん以外は魔物を狩りに行ったけどさ……。



「……」


 エレノアさんは僕のそばで無言だ。


「あ、エレノアさんも良ければ手伝ってくれると助かるかな? 報酬は魔力で良かったよね??」


「それでいい……主──これからが踏ん張りどころ……運命の分かれ道……」


 そう言い残して魔物前に一瞬にして移動するエレノアさん。


 ただ、僕が気になったのは『主』という言葉だ……。精霊との主従関係は確か『契約』をしないとダメなはずだ。


 シルフィさんの時もそうだったけど、エレノアさんと2人の主になったつもりは無いし、そんな『契約』は行っていないはず……。


 謎だ……。


 とりあえず、目の前の敵をなんとかしないとダメだな。レラとか凄い勢いで斬り込んで行っているし……口元吊り上げてるから怖いな。フィアも結界や光魔法でサポートしながら戦っている。フィアって確か結界はかなり苦手だったのに普通に使ってるじゃないか……。


 まぁ2人はリリアさんとユラさんのサポートを受けているから心配ないだろう。


 僕と師匠、シャーリーさんは守りの要だから、その場からは動いていない。


 本来であれば皆を守りながら戦うのがいいんだろうけど、ここを潰されたら全てを失う──それに魔物は幸いにもからしか襲ってきていない。


 ここさえ踏ん張れば囲まれる事もないはずだ。


 しかし、母さんヤバいな……。


 マンティコアの時より強くなってないかな?


 逃げ惑うグリフォンを見てると討伐ランクAの魔物が弱く見える……。


「師匠……」


「なんだ?」


「世の中の厳しさを知りました……」


「そうだな……まぁなんだ、お前も十分凄いから自信持っていいぞ? それにお前みたいな子供は普通なら特攻かましてもおかしくねぇしな? それに俺の盾はぼろぼろだし、期待している」


 ここに残っている事は正解のようだ。褒められて素直に嬉しい!


 師匠の盾は強い一撃をもらったら壊れるかもしれないし、僕が頑張らないとね!



「来ますね……」


【直感】先生達が警鐘を鳴らす──


「そうだな。またブレスだろうな……」


 レッドドラゴンに乗った人が動き出した。


「防げますか?」


「できん事はないが──次あのブレス受けたら盾が壊れる可能性はあるな。まぁなんとかするわ」


「なら──師匠は一応さっきの反射技で待機しといて下さい。試したい事あるんですよ」


「ん? あぁ構わんぞ。ただ──あの盾じゃ防げんかもしれんぞ?」


「いいんですよ。とは別なので──いきます──【盾具現化シールドリアリゼイション】──」


 とか言いながら結界の前に置いている盾の大きめを具現化させる──


 当然、これで──





 ◆





 ロイは俺の目の前でさっきと同じ魔力盾を大きくして出す。


 それもただ出しただけじゃない。


 それを10個もブレスの直線上に並べている。


 試したい事とは威力を殺して俺の負担を減らすのが狙いだろう。


 確かに今の盾の状態では完全に防ぐ事は出来ない可能性もある。


 威力を殺してくれるなら今の盾でも十分耐えられるかもしれん。


 この絶望的な戦いの中、しっかり考えている──全く大した奴だ。



 俺は【盾反射シールドリフレクション】を使用する為に構える。俺は盾が壊れないように


 ロイにはまだ教えていないが師範代以上は『魔力操作』が必須になるからな。これで少し持ち堪えられるだろう。



「お前の心遣いは伝わったッ! 後は任せろッ!」


「え? 別に防いでも良いんですよね??」


「あぁ、どれだけの魔力を込めたかはわからんが──尻拭いはしっかりしてやるッ!」


「やった! 任せて下さいッ!」


 ふん、目をキラキラさせやがって……。


 無事に生き残ったら──


 お前が最高の盾使いになれるように【ガスタール流盾術】道場本部の紹介状を書いてやるからな!


 正直、俺って感覚だけで覚えてたから上手く教えられんしッ!


 師匠ならなんとかしてくれるはずだ!



 そんな事を考えていると──



 ブレスがロイの出した盾に直撃する──


 案の定、どんどん魔力盾を貫通していくブレス。


 そして、最後の一枚に当たった瞬間──


「は?」


 予想外の現象が起こると同時に俺はまぬけな声を出していた。


 ブレスは当たると同時に


 俺は一瞬何が起こったかわからなかった。


 それはシャーリー様も同様で、驚いた顔をしている。


 ロイと同じ魔道具を使っていたカイルはこんな事は出来なかった。


 全ての魔法攻撃を無力化させる姿を見て思い浮かべた人物が1人だけいる──かつての【統べる者】フランが使いこなした吸魂剣ソウルイーターの効果と同じだ。


 この短時間の間に何があったんだ? 何故こんな事が出来る?


 そんな事が次々と頭の中を過ぎる。


 俺はロイの顔を見ると──


「おぉ、出来たっ! 師匠! なんとかなりましたね!」


 満面の笑みを浮かべていた。


 だが──脇が甘い。


「油断するな馬鹿!」


 咄嗟にロイの前に出て、空からロイ目掛けて向かってくる鎖の付いた槍を盾で逸らして弾く──


 中々の威力だが、この程度なら問題ない。


「うお!? 喜んでて気付かなかった!? 何この銛は?!」


竜使いドラゴンテイマーはブレスで注意を逸らして、同時に放った物理攻撃で仕留めるという厄介なやり方をしてくる奴もいる。気を抜くなよ?」


「へぇ〜、同時にやられると回避が難しそうですね……」


 確かにステラがいる時にこれをやられていたら──俺1人では手一杯で下手したら死んでいたかもしれん。今回はロイがブレスを防いでくれたお陰で冷静に対処出来た。


 手が読めているなら防御は問題は無い。所詮は初見殺しのやり方だ。


 問題は──


 空高く飛んでるあいつらをどう落とすかだな……。


 シャーリー様の魔法もあの距離なら避けられるし、厄介だ。


 それに魔物の数もどんどん増えているな……。


 せめてエレンがいれば打てる手はあったんだがな……ロイ達はなんとか逃してやりたい──

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