2部 強くなりたいなぁ

第11話 訓練開始だ!?

 次の日──


 やっと僕達は冒険者育成学園に入学する為に必要な訓練を開始する事になった。


 何故次の日なのか?


 肝心の母さんとシャーリーさんに全身揉みほぐしをしたら「動きたくない」と言われたからだ。


 これから揉みほぐしは訓練後にしようと思っていると、目の前で母さんが話し出す──


「これから冒険者にとって必要な事を教えます。学校に入学すれば同じ事を教えてもらえるかもしれませんが、所詮あそこは冒険者の仮資格をもらう場所──ある程度の実技を習得し、学校の座学など今知っておけば、貴方達はその分、実戦が行えるでしょう」


 母さんの言葉に疑問符が浮かぶ。


「どういうこと?」


 実技や座学はやっておいて損はない。けど、実戦が出来るという意味がわからない。


「学校の入学試験は実技試験と冒険者に関する座学試験、一般座学試験があります。ここで合格ラインに達するのは当然ながら──更に高得点を獲得すると、授業が免除になります。その分、学校にあるダンジョンに潜る事や依頼をこなして経験を他の人より多く積む事が出来ます」


 シャーリーさんが説明してくれる。


 なるほど……それは大事な事だ。スタートラインが違えば僕達の学園生活も変わる。


 問題は高得点を取れて僕達3人免除出来るかだ。


「私……座学が苦手だ……」


 レラは座学が不安のようだ。その分実技は問題ないだろう。


「僕は実技だね……」


 僕は座学は問題ないと思う。色々と小さい頃から教えてもらっているし、前世の記憶だってある……だけど、実技が不安だ。そもそも盾で試験って──何をするんだ?


 攻撃を防げばいいのか?


「私も実技かな……」


 フィアも実技が不安のようだ。『光魔法』の光線とか凄かったし大丈夫のような気がするんだけどな……。


「母さん、実技試験って何やるの?」


「──ロイとレラちゃんなら模擬戦ね。フィアちゃんは回復役だし──回復魔法や後衛用の試験よ」


 なるほど、それなら僕とレラはなんとかなりそうだな。


 フィアはあまり自信がないのか表情は暗い。聖女候補だったのであれば回復魔法は得意なんじゃないのか? 後衛用の試験てなんだろ?


「そうなんだね。それでこれからどうするの?」


「午前は座学、昼からは冒険者にとって必要な実戦訓練や模擬戦をするわ。訓練はもう少ししたら始めるわよ」


 母さん達は訓練の準備を行っている間、僕達始まるまで3人で少し話をする。


「私……座学自信ない……どうしよ……」


 レラの声に元気が無い。ここは男として何か気の利いた言葉をと思うが──


「まぁ、頑張ればなんとかなるもんだよ?」


 ──思い付かなくて普通の言葉を返す僕。


「私勉強とかした事ないんだけど?」


「「え?!」」


 僕とフィアはレラの言葉に驚く。


「私の家って農家で貧乏だし……」


「まぁまぁ、まだ時間はありますし、少しずつ頑張りましょう」


 フィアは励ますように言葉をかける。


「そうね……お金の事もあるし、何が何でも特待生にならないと……」


 レラは最悪学費を払う事も考えているのか……。


 確かに冒険者本部の学園なら学費も凄そうだしね……最悪は母さんやシャーリーさん達に泣きつくか? いや、仮冒険者なら稼ぐ事も出来るだろうし、僕達がフォローすれば問題ないか。


「ふふ、実は私も実技が自信ないですよ? 今年から後衛職の人も護身術の実技試験があるらしいです……魔法だけの試験なら良かったのに……」


 フィアも暗い表情の理由を話す。


 なるほど……フィアは護身術の方が心配なんだな。


「……何でまた今年から変わったの?」


「魔法使いとかの後衛職の死亡率が高いかららしいです……」


 という事は……皆頑張らないとダメなのか……。


 こうして僕達は冒険者育成学園に向けて猛勉強と猛特訓が始まった──



 ──と言っても午前は座学なんだけどね……。


 一般座学は僕やフィアにとってはそんなに難しくない。所詮は読み書き計算だった。僕達2人は渡された問題を解くぐらいだった。


 だけど──


 レラにとっては超難問だった……。


 読み書き計算が出来ないから基礎からの開始だ。


 シャーリーさん曰く、これが普通らしい。


 小さな街では勉強をする概念が無いと言っていた。


 それでも普通は少しぐらい親に教えてもらうそうだが、レラは勉強が嫌いでやらなかったそうだ。


 レラがこのままだと学園で座学の授業を受ける事になる。


 空き時間は僕とフィアで教えていこうと思う。問題が読めないのは問題外だ。



 ちなみに冒険者についての座学もそうなんだ〜と思うぐらいで僕には拍子抜けだった。


 初日だし、簡単にしてくれたんだろう。



 そして──


 午後からの母さんによる訓練が始まる──


 僕はてっきり模擬戦かと思っていたのだが、違った。


「さぁ、今日は素材集めをしてもらいます。指定した範囲内でマンドレイクを探して持って来て下さい。これは薬草採取の模擬訓練です。期限は日暮れまでで、集められなかったら──です。さぁ行きなさい」


 マンドレイクか……確か午前の座学で教えてもらったやつだな。釣鐘状の花弁と赤い果実をつけるって聞いた気がする。


 特筆するなら根茎の部分が人型で魔力を多量に含むという事ぐらいだろう。


 何やら引き抜く時に奇声を発するらしく、聞くと幻覚を見るらしい。


 錬金術や薬に使う素材で冒険者の依頼にもたまに出ていると言っていたな……。


 しかし、マンドレイクは朝の座学で教えてもらったけど、レア素材のはずなんだが……そんな物がここらへんにあるのだろうか?



 それよりも気になる単語があった──


「ちょ、ちょっと待って母さん! お仕置きって?」


「そうですよ?」


 首を可愛くコテンと倒して何食わぬ顔で母さんは返事する。


 大先生の若返り効果で肌が艶々してて凄く可愛いんだけど──


 僕は血の気が引いていく。レラとフィアは何の事かわからずに疑問符を浮かべている。


 最悪だ……絶対に期限までにマンドレイクを手に入れなければ……。


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