第3話 これが僕の力か!?

 目が覚めたら家の見慣れた天井が見えた。


 というか朝日が昇ったばかりみたいで気絶してから相当寝ていたみたいだ。


 きっと、僕は意識を失った後はレラに運ばれたのだろう。


 男として不甲斐なし!


 でも、デレた姿を見れたのは嬉しかった。また見たいものだ。


 さて、母さんも起きてないだろうし、『感度操作』について考察してみよう。



 通常──スキルは『剣術』であれば剣を振れば剣術の熟練度が上がる。それは10段階で表示されるらしい。


 つまり、レベルがある生産系や戦闘系などのスキルは何をしたらレベルが上がるのかわかるのだ。


 僕の『感度操作』はレベル表示がない上に、何をしたらいいのかわからない。


 レラとの模擬戦中にふと思った事──


 それはではないか?


 という事だ。


 ゲームみたいにスキルが表示出来たら問題ないんだけど、残念ながら『鑑定』スキルや、それを付与したアイテムが無いとわからない。


 こういうのって、念じまくれば習得出来るのがラノベのテンプレだと思うんだよね。そう思って昔に四六時中念じまくった時期が僕にもありました!


 その結果!


 何も起こりませんでした!


 けれど、僕は諦めたくありません!


 きっと、『感度操作』をもっと具体的に念じたらわかる気がする!


 僕のがそう告げている!


 今まで、僕がこれは『感度操作』の効果だろうと思ったのはまさしく、だ。


 これらを念じてみよう──


 すると、目の前に文字が羅列する。


 成功だっ!



『感度操作』

【痛覚】5

【直感】3

【性感度】2


 と表示されていた。


 ふむふむ、噂に聞くスキルのレベル表示みたいだな。スキルは表示されない事から『鑑定』は習得してないな……これは『感度操作』特有の表示なのかな?


 これ触れられないな……目の前に文字だけが表示されてるだけなのか?


 この数字は変動させる事が出来るんだろうか?


 試しに【直感】を動かすようにイメージするが3以上動かない。


 次に【痛覚】を動かすようにイメージをしてみると、レベルは10になった。自由に動かせる。


【性感度】も同じで自由にレベルが動かせた。


 とりあえず【痛覚】を最大にしてみるが、今の所は特に変わりはない。


 試しに自分を叩いてみる──


「──いったぁぁぁぁっ」


 普段なら特に痛みを感じないぐらいの力なのに激痛が襲う。


 レベルを直ぐに5に戻すと痛みは消えた。


 レラに吹き飛ばされてもあまり痛くなかったのは【痛覚】が1になっていたからかもしれない。


【痛覚】は標準が5で、1が鈍麻、10が鋭敏になるのかもしれない。もっと試さないとわからないけど。


【直感】はこの先、上げる事が出来るのかは不明だけど──これで少し謎が解けたな。


「ロイ──どしたの!?」


 僕の叫び声で母さんが近くに来てくれる。


「ちょっと起きる時に首を捻ったみたいなんだ」


 咄嗟に嘘を吐く。『感度操作』の事を言ってもいいんだけど、まだ確証が無いしね。


「そう……心配したわ……一応『回復魔法』を使うわね?」


 母さんは僕の首に手を当てて『回復魔法』を使ってくれる。ほんのり暖かくて気持ち良い。


 魔法もいつか使ってみたいなぁ。


「ありがとうっ! そうだ、肩揉みしてあげようか? 回復魔法のお礼に!」


「あら? いいの? お母さん嬉しいわ」


 僕は【性感度】を3にして試してみる事にした。


 それ以上は【直感】が良くないと言っている気がするからね。



 ◆


 ────


 ────────


 ────────────


「あふん……昨日より……ん、あぁ、良い……わぁぁん」


 私は今息子のロイから肩揉みをしてもらっている。


 昨日からしてもらっている肩揉み──


 とても気持ちが良い……ダメだわ……このままずっとしてもらいたくなる……。


 それに何故かお腹の奥が熱くなるわ。


 この感じ──


 あの人と深く愛し合った時と似た感じ?


 私は息子に欲情してる?


 いえ、ダメよ……負けてはダメ。


 私は引退したけど『聖天』の称号を持つ聖騎士だわ。


 これぐらいは耐えてみせるわ──


「母さん今日はこれぐらいね?」


 唐突にロイが肩揉みを終了する。


「え?」


 終わり? もう? まだ10分ぐらいよ?!


「また明日ね? それより、前みたいに稽古してよ!」


 ロイは昔から決めた事は曲げない子。これ以上はしてくれない。明日してくれるなら楽しみに待つ事にしよう。


 それに最近──『開花の儀』以降は戦闘系のスキルが得られなかったせいか、稽古をつけてくれと言わなくなっていたから冒険者は諦めたと思ってたけど、何か心境の変化があったのかもしれない。


 大人顔負けの強さのレラちゃんと模擬戦をするぐらいだし……しかも攻撃を防いだと聞いているわ。


 別に『開花の儀』を受ける前でも一般スキルや上位スキルは訓練で習得出来る。だけど未だにロイは習得した感じはしない。


 確かめてみる価値はあるかもしれない。


「わかったわ……いつも通り庭でやるわよ?」


 頷くロイと私は外に出る。


 お互いに木剣を手に持って構えるとロイが攻撃してくる。


 それを簡単に弾きながら私は考える。


 ロイにはやはり剣の才能が無い。


 それは昔から既にわかっている。スキルを習得すると一気に扱いが変わる。ロイに聖騎士顔負けの訓練を行っても『剣術』スキルは習得出来ていない。


 せめて私の血を濃く継いでくれていたら私の全てを託す事が出来たのに……。


 こればかりは親や子が望んでもどうにも出来ない。



 ロイの攻撃が止む。


「母さんみたいに早く強くなりたいなぁ〜レラとかどんどん強くなってるから負けてられないよ!」


 私の胸がズキっと痛む。


 ロイは賢い子──既に剣の才能が無い事ぐらいわかっているはず……それでも強くなりたいと願っているのはわかる。


 これが部下であれば容赦なく「お前に剣の才能は無い」と一蹴するけど、愛する我が子の絶望する顔だけは見たくない。そう思ってずっと訓練してきた……。


 でも、このまま命の危険が付き纏う冒険者にはなってほしくない……戦闘系のスキルが無いと極端に死ぬ確率は上がってしまう。



「そ、そうね。ロイはお父さんみたいに盾を使ってみない? お父さんは盾を使ったら凄かったのよ?」


 剣の話題から逸らそうと今は亡き夫のカイルの話題に変える。


「盾? そういえば使った事なかったね」


「ロイはもしかしたらお父さんに似て凄い盾使いになれるかもしれないわよ?」


「え? 本当!? じゃあ、盾使ってみるよ!」


 上手く話を逸らした私は訓練用の木盾を渡す。


「手加減して攻撃するから防いでみて」


「わかったよ!」


 私は力だけを手加減して、ロイに認識出来ない速度で剣戟を放つ──


 せめて──


 遠回しに戦闘に向いてないと為に──


 容赦しないっ!


 カツンっと私の木剣が木盾に弾かれる音が聞こえてきた。


「……え?」


 まさか──


 これを防がれた? 並の聖騎士なら余裕で当たる一撃を?


 レラちゃんが言っていた事は本当??

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