第17話雨の日に拾う不審者
「あの、、、貴方。こんなとこで
何されて、。いるのですか。」
わたしは
ヒルタワーのホテルから
オフィスに戻って
レセプションの片付けを
終わらせ、退勤するとね、
同じ区画内で テナントが入る
コンセプトモールに
向かって歩いていたの。
ヒルズヴィレッジの区画には
タワーオフィスの向かいに
日本ブランドの ショッピング
モールと、
総合医療センター。
タワーと同じオーナーが建設した
レジデンスがあって、
それらは 緑豊かな
ランドスケープ デザインに
なっている。
モールの前には
グリーンパークがあって、
シンボルツリーが
都心でもナチュラルな景観を
作っているのね。
そのグリーンパークの
隅っこの芝生。
子猫が いそうな、
段ボールに入って
真っ赤な傘をくるくる回す
不審者を、
タワーエントランスを出た
わたしは、それを目にして
ギョッとなったの。
たまに、前を行く人が
チラチラ見ているのも
仕方無いよね。
近づけば、段ボールには
ご丁寧に 黒マジックで、
『Do magic for you』と
書いてあるわけよ。
朝と同じでね、
髪と髭で 半分は顔がわからない
不審者になってるのよ。
「Street、マジック!!」
いや、悪戯しちゃうぞ的に、
マジックって言われても。
だいたいね、
こんなとこでしなくてもいい
凄ーーーい
パフォーマーなんじゃないの?
「Do magic for you!
君の為に 魔法を使うよ。」
そう、目の前で
髪も髭も
伸びっぱなしの 不審者は
わたしの脳内葛藤を
知ってか しらいでか
また例の真っ白い
歯をニカッとさせて、
これまた白いTシャツに
デニム姿の
三角座りポーズなんかしてよ、
片方の手を出すと
指で輪っかを作ったの。
それ!お金!?
「Please pay the price!
対価?は お願いしますから。」
ハイハイ
0円は、スマイルだけなのね。
にしても
この不審者はさ、本気?
わたしは怪訝な顔をしつつも
鞄から出した、財布を開けて、
答えるよ。
「OK。マジック、プリーズ」
だって、
今日は この人にね
助けてもらったようなものだし。
それに、
あんな夢みたいなのをね、
ううん、あんな凄くなくて
いいよ。
本の少しでも、小さくても
楽しい 何分かを
わたしも 久しぶりに持って
みたい。
けど、
うーんと。いくらだろう?
500円玉を出して、仕舞って
1000円札を おもむろに 出してと
迷っているうちに、
「baby、名前は?」
ん?baby?
「アサミ。あれ?あ、そうか」
思えば、
ギャラリー『武々1B』の
ハジメさんの口聞きでよ、
ダレンが窓口に なってくれて
後は、ミズキ先輩に
ダレンとやり取りしてもらった。
レセプションセッティングが
怒涛だったから、
アーティストエスコートも
係長がしてたし、
「ちゃんと挨拶してないですね」
終わって、あの再会もね
すぐに係長が
アーティスト リカバリーに来て
ろくに会話もしないままさ
別れたんだったっけ?
財布をもどして
まずは、鞄から名刺を出し、
わたしは 両手で差し出す。
どうやらさ、日本語も 全然大丈夫
みたいだしね。
「アサミ。魔術師ケイです。
これから ヨロシク。」
そう言われた とたん、
ケイに渡した名刺が
『ボン』と音を立てて、
マジックファイヤーが上がり
わたしの目の前にね
一本の赤い薔薇の花が
差し出されていたよ。
凄い!!
「あ、あの、サンキュー。
ケ ケイ、 朝。わたした食べ物
は、 大丈夫でしたか。」
目の前で 薔薇を差し出した
ケイは、もう方の手で
赤い傘を なんでもない様に
肩でくるくる回している。
わたしは、挙動不審かな。
もらった薔薇を、鞄に差して
朝、気になってた事をめぐらす。
こ、これ お金は、?っ
動揺を隠すように
ケイに聞いたんだけど。
「助かりマシタ。Crow達に
モーニングを取られマシタから」
ケイの表情は、
伸びっぱなし前髪で分かりずらい
けど、口元が ヘニョっと
下がっんだよね。
「そ、それは、、悲しいですね」
「エアロバイクで Human
エンジンしてきてのシウチ。
起きあがれない。アイムdying」
そうおどけて、親指で首を
切るポーズをケイは、
するけど、
もう 朝のは コメディだよね。
けれど、
なんかね、今のは様になる。
朝同じ、ボサボサ髪の不審者
だけど。
赤い傘が、可愛い。
て、いつの間に、、
雨が降り始めていたんだろう。
「Raining?」
ケイは、
くるくる回していた傘を、
肩からスッと 外して
わたしに 入るように
持ち直してくれていた。
段ボールの中に立ってるけどね。
「あの、とりあえず 雨を、
しのぎましょう。えと、中に」
雨の中で立ち話も、何だし
そう、コーヒーで、薔薇のお代は
チャラになる?って
モールの中を示して、
移動をしようと思ったんだけど
「、、その、段ボール、
持っていかなくてもいけます?」
赤い傘を相合傘で
ケイが そのまま 段ボールから
出て歩きはじめたかもんだから、
つい聞くと、事も無げに
「ノン。すぐリカバリーする。」
そう返事されたの。
なんだろ?小人でも使うのかな?
わたしが モールに入る
直前に見てもね、段ボールは
変わらず芝生に
佇んでいたけど。
「アサミ。ショッピング?」
差していた赤い傘を
今度は くるくると
畳んで、髪で半分見えない
目元に、眼鏡を掛けたケイが
聞いてくる。
眼鏡、、。なんかのキャラみたい
そうだ!ペットショップを
見ようと思って!
「鳥を、リトルバードを、欲しく
なって、ちょっと見ようかなと」
そこまで言うと、
ケイは ゆっくりと長い人差し指を
一本立てて、わたしの 唇を
縫い止めた。
なんだろ、いちいち、、
?!
「魔術師ケイが、アサミには、
バードをあげましたから、」
No problem だと、指を解く。
その手を開いて見せてくれると
あの真っ白いオカメインコが
乗っていたの。
「この子!スノーホワイトの
オカメインコ!!う愛い、、」
ケイの手のひらから、
わたしの指に ピョンと飛び乗る
オカメインコの 後ろ頭を
撫でてあげるのよ。
そしたら、
指にスリ寄る 小さな
頭の下、羽の間に レモン色の
ハート模様まで あったりして、
ウイヤツ、この上無いなのよ!
「名前は、『ティカ』
Amulet の バードだよ。」
お守りって、ことよね。
スノーホワイトの オカメインコ
相場って いくらだろう?
「えと、余り凄い子は、もらえ
ないです。けど、譲ってもら
えるなら、、お金払います。」
すでに、この子に魅了されて
しまった わたしは、
なけなしのヘソクリを はたいて
譲ってもらう決意をしたの。
心震えたら、即決よ。なのに
「ノー、マネーだ。」
ケイはね
一言呟くと、『ティカ』を掴んで
手のひらで消してしまったのよ!
顎が外れそうに、
『ガーン』のマンガ音がしそうな
くらいに、
それはもう ショックを、
受けた顔をしていたと思う
わたし。
うううっ、。酷い!嫌がらせだ。
あれね!朝の 投げ込んだ、
味噌汁とか、助かったけどっ
マズかったのか?闇にクレーム?
「わたし 鳥、見に行き、ます。」
モールの入り口に入る!
もう 片言でしか
しゃべる気に
ならないのに、『くそケイ』は、
入り口に、
テナントを広げている 書店型
コンセプトショップにある
AIロボットとか、
リモートゲストロボットを
物珍しそうに 追いかけて
入っていくのよ。
もう、放置もできないし、
しぶしぶ追いかけるの。
都内とかにも何店舗かある
店内をウッドデザイン本棚で
ゾーニングした 話題のショップ。
1日潰せそうな、蔵書と
書店では とてもありそうにない
近未来の家電や 、
ハイスペック雑貨がディスプレイ
されている。
それがセンスよく
売られていて、店内を
歩くだけで 楽しいのよね。
ほら、
LEDの光で四方を照らす
鏡なんて、実は 大型スマート
ミラーフォンなのよ。
女優ミラーな姿見なだけでなく、
下に、ローカルから、
ワールドワイドな ニュースが
流れて、デジタルタイムも出る。
あっちに、
磁石で宙に 浮いている球は、
ライトスピーカーで、 地球儀や、
ハウスプラネタリウム
にもなるの。
そんな ディスプレイ品を
あちこち触っては、試す、
『くそケイ』は、むさ苦しい
子供みたいだよね。
「アサミの、ライスボールの
マヨネーズテイストは 凄い。」
太陽熱だけでBBQを焼ける
スマートな 近未来キャンプ品の
細長いトレーを出したりしながら
いきなり
ケイは 話てきた。
「あれは、手作りマヨネーズに、
お醤油、、ソイソースを、、
プラスしてるんですよ。」
ナンプラーとか、魚醤とかが、
ある国なら、美味しく感じる
のかもしれない。かもね。
「ハンドメイド?マヨネーズを」
別に、難しくないし、
最近は 流行ってるからと
ケイには いいながら、
まあ 節約が 理由の大半だとも
正直に 説明。
「作れるものは、作らないと。」
だからさっきから いろいろと、
今どきの女の子あるまじきさ
感じになるのよと、
『ティカ』が消えて残念だと
闇に 非難しとく。
そんな風に、わたしが
冗談めかして言うと、
ケイは わたしをジッと
見ている。
「あ、でも、さっきの薔薇の
マジックは素敵でした、から、 コーヒーでイーブンできます?」
一応社交辞令?
わたしは、
ケイに 確認するように 伝える。
のに、『くそケイ』は
全然すっとんきょうなセリフを
吐くのよ。
「OK、Let's make a ケイヤク」
はい?なのね?
「契約?」
「そー、ケイヤクだ。君と。」
あ、今のイントネーション。
本当は、
全然、日本語しゃべるよのね?
貴方。
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