第50話 強者の闘い
今現在、式神達が集結する東の門には青帝大公がどどんっと護りについたので桜子はほっと息をついた。
青い龍は巨大でとても強そうに見えた。
残ったのは赤狼、緑鼬、橙狐、そしてカサカサと妙な動きをする茶蜘蛛だった。
「緑鼬、橙狐、茶蜘蛛、桜子を頼む」
と赤狼が三神に言うと、緑鼬、橙狐がうなずいた。
「あっしはお供しやすでやんす」
と茶蜘蛛が赤狼に呼びかけた。
「いや、桜子を護ってくれ。万が一、鬼に桜子を奪われたら最後だ。桜子はあの鬼の妖気すら回復する見鬼だ。そんな事になったら、日本中が壊滅するだろうしな」
「赤狼君、闘うの? あの鬼と?」
「闘うというか……まあ、鬼が飽きるまで相手してやるだけさ」
と赤狼がそう言って笑った。
「大丈夫? あんなに大きいのに」
今の赤狼は人間形態を取っており、桜子よりはかなり大きいがそれでもせいぜい百九十センチくらいだろう。狼形態の巨大化でも教室いっぱいくらいの大きさだったはずだ。
「大丈夫さ」
赤狼は優しく笑って桜子の頭をなでなですると、制服の上着を脱ぎ「じゃあ」と言ってから歩き出した。
歩き出すその背中に筋肉のような張りが見て取れる。遠ざかっては行くがだんだん大きくなりながら、赤いオーラが赤狼の身体を包み始める。
一瞬の間に、人間から赤い狼に変化し、そしてその身体はみるみるうちに巨大化していった。
「赤狼君……」
桜子は心配そうに両手を合わせて赤狼の無事を祈った。
金の鬼は西の門戸の前まで来ていた。西の門戸にはすでに白虎神が待機している。
真っ白い大きな虎は金の鬼を見て威嚇した。
「ガウガウガウガウガウ!」
金の鬼が手を振り上げて白虎を殴りつけると、傷つけられた片目から血が流れて白虎はグウウと唸った。真っ白い毛皮が土と血に汚れ、白虎は地面に伏した。
鬼は無表情で白虎を見下ろして、その胴体を蹴り飛ばした。
「ギャ!!」
と白虎が悲鳴を上げた。
そこへ駆けつけた巨大な赤い狼が牙を剝いて咆吼した。
勝るとも劣らないほどの地響きが起こり、その音で金の鬼がこちらを向いた。
しばらくの間、お互いに睨み合っていたが、
「やんねえのか? やんねえなら帰ってくれ。暴れられたら迷惑だからよ。見ろよ、この有様、土御門が壊滅状態だ。よお、一の位の闘鬼の大将よ」
と赤狼が言った。
「……赤狼か」
「おう」
「久し……いな」
金の鬼は理性を取り戻そうとしているようだったが、余りある妖気が鬼に理性よりも破壊と殺戮をと望んでいるように邪魔をする。
「ウガガガガアアアアァァァァァ」
金の鬼は苦しそうに頭を抱え、そしてまた太く逞しい腕を振り上げて赤狼に殴りかかった。赤狼の大きな身体はしなやかに動き鬼の攻撃をかわした。くるっと反転した赤狼は金の鬼に飛びかかっていった。鋭い牙を剝いて鬼の首に噛みつく。金の鬼はうるさそうに大きな手で赤狼の顔を振り払った。はじき飛ばされて赤狼はごろんごろんと転げたが、すぐに体勢を立て直しまた金の鬼に向かって飛びかかっていった。
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